194 記憶のなかのかくれんぼ
―――迷子を
「すみません…勝手に飛び出したりして…。」
早足をとめ、くるっと振り返るミイナちゃん。たしかに現場責任者の意見を聞かずに飛び出したことは…まぁ、
「いえ、良いんですよ。モンスター
「…ありがとうございます。えっと…?」
「あ…僕はコウキと言います。リンゴ王国の冒険者です。」
「ミイナです。はじめまして。」
上品に
―――はじめましてじゃ…ないんだけど…。
本当に忘れられてしまったらしい。かくれんぼはもちろん、退屈のあまりパーティーを抜け出して大冒険に繰り出したことも…僕にとっては大切な思い出だったのだが…運命はときに残酷らしい。
―――はぁ…。
ついてはいけないため息。外にもれないよう、必死で押しとどめる。
■
この辺りは何度も冒険しているので、地理は細部まで把握している。子どもが入っていきそうな横道となると…ここを右手に入った林道が怪しい。
「ミイナさん、ここに昔使われていた林道がありまして…うん、草が
「はい。」
「それで…どんな格好をしているとか…そのあたりはわかりますか?」
草木いりくむ場所であるため、暗い色の服装だと見落としかねない。進むスピードを考えるべく、一応聞いておく。
「えっと…
「ご心配なく。あちらには優秀な指揮官がおいでのようでしたし…コウタさんにお任せすれば大丈夫で…ん?コウタさん…どこかで聞いたことあるような…?」
「コウタ先生は、
「え!?あのコウタ氏が当地に!?」
そうだ、現代魔法学の
「…はい。魔法学部の研修旅行でして、町に防御魔法をはっていたのは学生の皆さんです。」
「そ、そうだったんですか。…って、え!?あの魔法、学生さんのものなんですかっ!?いや、どう考えても上級魔法使いのレベルですよ。やっぱりすごいな魔法学部…。…あ…これは失礼、取り乱しました。実は僕、魔法使いに強い
「魔法の力…ですよね。私の友だちも、それで悩まれていた時期があります。」
コロン氏の有名な
「もう少しはやく…いえ、僕たちが魔法を過去の
「コウキさん…。」
「すみません、暗い話をしてしまいましたね。そろそろ林道を抜けるはずです。先にはたしか泉があったと記憶していますが…。」
木々の密度がさがり、だんだんと明るくなってきた。
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