193 記憶の外にある再会

「皆さん、大丈夫ですかっ!」



背後から声が。どうやら間に合ったらしい。



「お疲れ様です。魔法使まほうつかいのコウタです。侵攻は中規模ミドルサイズ推定すいていBランクたいのモンスターを中心とした編隊系へんたいけいです。戦況は遅延ちえん戦闘下で現状維持。非戦闘員を含め、被害はなし。現状戦力は俺を含めて23名。近接割合6です。」



魔法を維持すべく、振り返ることなく状況を説明する。簡単にまとめると「なんとかもちこたえています…」という報告。



「了解しました。私は冒険者のコウキです。こちらの戦力は報告の侵攻を押し返すに十分と推測します。トラップをこえ、そのまま近接戦闘を開始します。魔法使いの方には援護えんごをお願いしたい。」



心強い返答だ。このまま王国の軍が到着すれば、モンスターの侵攻を完全制圧することができる。被害もなし、この規模の侵攻を受けたと考えると、最高クラスの結果ではないだろうか。



「わかりました。講師の皆さん、強化魔法中心で近接支援を。学生さんたちは、このまま防御魔法を継続してください。」


「「「了解っ!」」」



このまま押し返しつつ、遅延戦闘を継続。これで詰み。



「あの、コウタ先生。町の男の子が1人、行方不明だそうです。」


「えっ!?」



おっと、ここにきてトラブル発生か。



「ミイナさん、詳細をお願いします。」



振り向けないので、そのまま話を継続する。…無礼ぶれいですよね、ごめんなさい。



「はい。町の横に川が流れているのですが、そこで遊んでいたそうです。侵攻がわかってすぐに戻ってきていたそうなんですが、防衛準備のドタバタのなかで、行方不明になってしまったようでして。」



ミイナさんの声からは強い不安の色が感じとれる。しかし、さがそうにも状況が状況。手がかりも少ない。一体どうすれば。



「そうですか…。モンスターの方向はガチガチに固められていたはずなので、おそらく海の方へ…いや、でも道中で会わなかったですよね…横道に入ったのかな…。」



ダメだ。考えてはみたものの、方向すらしぼれない。もっと情報が欲しいが、場合によっては一刻いっこくを争う。悠長ゆうちょうに情報収集している場合ではないかもしれない。



「…私、捜してきます!」


「えっ!?ミイナさん!」



慌てて振り返ろうとするが、魔法がらいでしまい思うようにいかない。足音がどんどんと遠ざかっていく。



「コウタさん、僕に任せてください。」



さきほど救援にかけつけてくれた冒険者の方だ。名前はたしか…。



「あの…つかぬことをお伺いしますが…ミイナさんをご存知で…?」


「…えぇ、ミイナちゃんは僕のこと忘れちゃってるみたいですがね。昔マジェスティックの王城でかくれんぼをしたり…おっと、失礼。では、ご一緒して捜してきます。」



こんな形で会うことになるとは。ミイナさんもさぞびっくりすることだろう。もっとも、今は迷子さがしでそれどころではないとは思う。なお、万が一を想定して、自称コウキ王子に汎用魔法はんようまほうを使ったことは、俺が墓場まで持っていく秘密となった。

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