188 待望の
「すみません…おはようございます。」
しれっとヌルっと加わろうかとも思ったが、さすがに良心がとがめた。ギルドの
「あぁ、おはようございます。先生。準備の方は滞りなく進んでおりますが、肝心のモンスターをあまり見かけないようでして…。」
特にお
「ありがとうございます、はい。…え?モンスター、いないんですか!?」
「そうなんですよ…何かあったんでしょうか。」
「困りましたね…。」
本当に困った。
「昨日の夜は普通に出現していたらしいんですが…。」
たしかにモンスターと戦う音が聞こえていた。さすが経験値稼ぎスポット、
―――でも…。
「とりあえず待ってみましょう。モンスター、朝ごはんの最中かもしれませんし。」
ちょっとボケただけのつもりだったが、おもいのほかウケた。今度エリさんに言ってみよう。それはさておき、待つだけでは生産性に乏しい。別のプランを考えなければ。
まず思いつくプランとしては、場所を移動すること。世界中でモンスターが出現していない…なんていう異常事態は起きていないはずで、少し歩けばモンスターに当たるかもしれない。ただ、現実問題としてそれは難しい。冒険者学科の学生さんは、基本的に「冒険者ではない」のだ。まだ冒険者試験をパスしていないため、特別な許可がない限り、モンスターとの戦闘ができない。
―――まさか…モンスター来て!なんて祈る日が来るとは…。
冒険者というよりも、この世界の住人としてあるまじき思考な気がする。わずか1プランで
「モンスターがいないって…どういう原因が考えられるんですか?」
別のアプローチを
「そうですね…。高レベルの冒険者が多数いると、警戒して出てこなくなる…というのは聞いたことがあります。」
「なるほど。自分たちから負けにいくようなことはしないと。」
「あと…いえ、なんでもありません。」
「な、何ですか?気になります。」
「いえ、
なんと。虫の知らせが現実味を
「一応…警戒しておきますか?」
噂話とはいえ、現実に起きないと否定できる要素もない。朝ごはんではなく、大侵攻の準備をしているのかもしれない。そう思い始めると、
「他国の領内ですので、あまり表立ったことはできませんが…。リンゴ王国ギルドには伝えておきます。」
「よろしくお願いします。」
これで一安心。じゃなかった、今日どうするかを決めなければ。
■
地図とにらめっこを初めて数分、特にこれといったアイデアもなく過ぎ去る時間。講師の先生含め、みんなで地図を見つめる時間が続く。
「…あの、魔法を使ってモンスターをおびき寄せるというのは…ダメですよね。そうですよね。」
困り果てた先に出てきた提案なのだが、当然に却下。
「うーん…。」
あえて誤用するが、議論が「煮詰まってきた」。本来は結論を出す段階で使われる言葉らしいのだが、進展がないという意味の方がしっくりきてしまった俺。さて、どうしたものか。
「先生っ!」
重たい空気を割ったのは、学生さんの声だった。反射的に海の方を見る。そこには。
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