184 葛藤と背中
―――ぐぬぬぬっ…。
かばんのなかをあさりつつ、心の
―――
「…コウタ先生、良い方法があります。」
みかねたギルドマスターから悪魔の提案。わらにもすがる思いなのだが、エリさん以外におんぶしてもらうのはちょっと。
「これならおんぶのうちには入らないでしょう。」
ギルドマスターの手には…なんて言うんだろう、正式名称は知らないが、見たことはあるものが握られている。
―――す、座れるっ!
申し訳ない思いとか
「す、すみません。」
前を歩く学生さんに聞こえないよう、かなり控えたトーンで会話を続ける。
「お気になさらないでください。そもそも防御力1の人が歩けているだけでも奇跡ですから。」
ギルドマスター、いや、事務長さん。適切に心の傷をえぐらないでください。
■
「うわぁーっ!でかっ!」
リンゴ王国を目前にして、学生さんの声が響く。
リンゴ王国との境、関所の周囲は巨大な
―――そう思うと…結構大変な世界だよな。
もとの世界、モンスターの侵攻に怯えるなんてことは、一切なかった。動物を恐れる的なことはあったが、魔法をぶっ放されるようなことはなかった。そこと比較すると、改めて冒険者という存在の重要性を感じる。
ゲームの世界では、一定時間の経過やエリア移動によって、基本的にモンスターは復活する。リスボーンと呼ばれることもあるこの仕組みは、ゲームの楽しさをより重厚なものにしている…と思っている。
ただ、それはゲームの世界のはなしであって、現実としてあると限りなく
―――限界もないし…。
明確にマジックポイント的な概念があるわけではないが、魔法を使える限界量というのは存在する。俺が「エンハンス」を
魔法の石にもこれと同じ、というか使いながらでも回復するというチートが備わっている。つまり、魔法の石から供給される力は無限。この世界がモンスターの恐怖から逃れる方法はないのだ。
「コウタ先生、そろそろつきますよ。」
「はい、ありがとうございました。」
というわけで俺の体力も回復した。へろへろな顔を見せるわけにもいかないので、大変にありがたいおんぶ…じゃなかった、ご提案でした。…エリさんには言わないでください。
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