第八章 事実を伝えた件。

082 料理という名の実験

「うーん…。」



どうやら昨夜、カーテンを閉め忘れていたようだ。日光が部屋全体を照らしている。「わたあめ」もまぶしかったようで、枕と枕の間に顔を突っ込んでいる。一方エリさんはというと、そんなことお構いなしといった様子で寝息を立てている。



―――もう少し休もう…。



二度寝の後、異世界に飛ばされたというのに、二度寝はやめられない。やめられないが、起きなければなるまい。なんとか睡眠欲すいみんよくり合いをつけ、静かにベッドから出る。カーテンを少しだけしめて、エリさんの顔に日が当たらないようにしておく。





「よーし!料理、がんばるぞ!」



顔を洗って、無駄むだに気合いを入れる。ここまで気合いを入れないと始められないあたり、料理のビギナー感がただよっている。何事も慣れだ。まずはやってみよう。


冷蔵庫のなかを失礼して、玉子とベーコン、トマトを取り出す。たなの上にはパンがストックしてあったので、メニューは決定した。



―――それでは…ハンバーガーをつくろうと思います!



ちなみにハンバーガーのハンバーグ抜きなので、ハンバーガーと言えるかいなかは定かでない。



「それにしても…大きいよな…。」



さすが異世界というべきなのか、アニメで見るようなサイズのベーコンだ。切るのが楽しくなるが、まず、包丁ほうちょうの使い方がよくわからない。薬草牛乳をつくるときは、ちぎっていた。しかし、ベーコンをちぎるのは難しそうだ。



いろいろ試してみた結果、切れる方向はわかった。



―――手は…どこにそえれば…?



昔「猫の手」とおそわった気がするのだが、猫の手とは何なのか。犬の手なら「わたあめ」の手を見に行くところなのだが。


結論として、フォークで突き刺して切ることにした。何か違うということはわかる。わかるのだが、今はこれが精いっぱいだ。いろいろと教えてもらわなければ。



―――次は…あ、そうか…。トマトを先に切った方が良かったのか…。



失敗。ベーコンを切ったので、包丁がベタベタだ。仕方ないので、包丁を一旦洗うことにする。刃物を洗うの、なんだか怖い。



―――よしと…これをいて…。まな板も変えなきゃ。



まな板をセットする。ここで問題が発生した。トマトの構造がわからない問題。



「よくハンバーガーで見るあれは…こっちから切る?うーん…ヘタはとらなきゃだよな…。」



とりあえずヘタをひっぱって、もぎ取ってみた。



―――やっぱり切らなきゃダメか…。



覚悟かくごを決めてヘタ付近に包丁を入れる。



「こうなっているのか…ということは…こうか!」



切る方向がわかった。厚さは適当に食べやすい感じにしておく。



「うわっ!このドロドロ…どうすれば…。」



輪切りにしたは良いものの、どろどろが家出してしまった。このままではレンコンみたいな状態になってしまう。



―――まずは失敗の証拠しょうこを消そう…。



証拠は消化しょうかしておいた。

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