081 ダンジョン攻略(8)

転移の光がうすくなる。目の前に、最も会いたかった人の顔があった。目は真っ赤だ。お互いさまだけれど。



「…エリさん!ほわっ!?ふぎゃっ!」



もうちょっと転移てんいの場所を考えてほしい。この中途半端な高さがあると、絶対に転ぶ。



「…ううわぁぁぁん…うん、ぐすん…コウタしゃん…わぁぁぁん…。」



「心配かけてごめんなさい。…もう、絶対、離れませんから。泣かないでください。ね?」



エリさんが痛いくらいに俺をきしめている。エリさんの頭を優しくポンポンする。


視線の先には、コロンさんがいた。「心配かけよって」みたいな表情をされたので、軽く頭を下げた。そのままコロンさんは自室へ向かったので、ダンジョンの報告は明日にしよう。



「コウタさん…むにゃむにゃ…。」



「あら…?」



エリさん、泣き疲れてしまったようだ。俺に抱き着いたまま、眠ってしまった。ずっとこのままでいたいが、さすがに風邪をひいてしまう。



―――そとだしな…ん?



なぜかお家のなかだった。足元の床はくりぬかれており、そこから例の石が顔を出している。状況が全く理解できないが、今はそんなことどうでも良い。



「わたあめ、ただいま。心配かけてごめんね。」



「わたあめ」はエリさんと俺に気をつかったのだろう。少し離れた場所でおすわりをしている。その気持ちにもう少しだけ甘えさせてもらおう。





エリさんのこと、なんとかベッドまで運んであげようと思うのだが、これがどうしてなかなかうまくいかない。



―――寝ている人を動かすのって、こんなに大変なんだ…。



お姫様抱っこに展開てんかいできないかどうかも試してみるが、無理だった。立ち上がれない。いや、エリさんが重たいとか、そういう意味ではない。だんじて違う。安堵感あんどかんで力がけてしまっているのだ。



「やっぱり、起こしてあげよう…。」



化粧けしょう落としとかあると思うし、お小言こごと頂戴ちょうだいしなければならない。戻ってこれたからよかったものの、妙な好奇心こうきしんを抑えきれなかったことが、そもそもの問題だ。



「エリさん…エリさん?」



「…うん…わっ!?ごめんなさい…寝てました?」



ぐっすりと。とってもかわいい寝顔で。



「エリさん…あの…あっ。」



丁度、お腹の虫が鳴った。そういえばダンジョンでは携帯食しか食べていない。



「ふふふ、私もお腹すきました!」



よかった。エリさん、ちょっとだけ復活。



「コウタさん…今日だけ甘えても良いですか…?」



エリさんが目をうるうるさせている。その表情に、俺はとても弱い。



「今日だけ、じゃなくて良いですよ。」



その後の会話は、二人だけの秘密。大切な、大切な時間だった。

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