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 送られてきた画像がどうやらコラであることは間違いなさそうだ。しかし、だからと言って、それを送ってきた犯人の手がかりになるか、というと……


 正直、何の手がかりにもなっていない。今のところは。


 とりま、アヤちゃんである可能性は若干薄くなった。あんなコラ画像を作れるスキルが彼女にあるとは僕には思えない。もちろん、だからと行って彼女にそういうスキルが無い、という証拠もないから、完全に犯人じゃ無い、とも言いきれない。


 だけど、そもそも僕が一番怪しいと思っているのは彼女じゃない。令佳先輩の元彼、妹尾さんだ。この人は令佳先輩と会っている。まさか……先輩とよりを戻そうとしているのか?


 しかし、そう考えれば全てつじつまが合う。よりを戻すのなら僕が邪魔になるのは明らかで、コラ画像を僕に送る動機にもなる。そして……先輩の行動……


 ……。


 悔しいけど、先輩はよりを戻すのに同意したんだろう。だから、僕に別れを告げた……


 だけど……だんだん怒りが湧いてきた。


 自分の愛する人間のコラ画像を作るような、卑劣な事をしでかすような人間に、果たして先輩を渡していいのか?


 そうだよ、そんなのは絶対に許せない……けど……


 それでも結局先輩は僕じゃなく、彼を選んだ、ってことなんだよな……


---


「そうかなあ? 妹尾さんって、そんなことする人だとは思えないけど……」


 いつものカフェ。テーブルを挟んで向かい合わせに座る三崎先輩は、おもむろに首をかしげた。


 悩んだあげく、僕は三崎先輩に相談することにした。おそらくこの件で一番情報が得られそうなのは彼女だろう、と判断したからだ。もちろん他言無用ということにして。


「でも……その人がコラ画像を僕に送った犯人だとすると、すごくつじつまは合うんですよね」


 僕がそう言うと、三崎先輩のしかめ面はさらに深くなる。


「けどさ、そもそも、なんで妹尾さんが君のメアドを知ってるの?」


 ……!


 それは考えてなかった……


 そうなると、アヤちゃんは僕のメアドを知ってるから、彼女の方が怪しい、ということになるが……


「誰か、君のメアドを知ってる人間から聞いた、ってことだよね。普通に考えたらそれは令佳……だよね?」


「……ええ」


「でも、令佳がそんなメールを送ることに同意するとも思えないし、妹尾さんってパソコン苦手だって言ってた気がするんだけど……そんなコラ画像作れるようなスキル、あるのかしら? まあ、自己申告だから本当はすごく使えるのかもしれないけどさ」


「……」


「それに、妹尾さんが令佳と本当によりを戻したかどうかも、分からないよね?」


「そうですけど……それは確かめようがないですよ。令佳先輩とは連絡が付かないし……」


「ちょっと待って」


 三崎先輩がスマホを取り出し、しきりに指先で画面をスワイプする。やがて、彼女の顔がほころぶ。


「……あった。妹尾さんのケー番。メアドも分かるわ」


「!」


 マジですか!


「といっても、これを君にいきなり教えるのはまずいから、まず本人に聞いてみるね」


 そう言って、早速彼女は画面をタップすると、右耳にスマホを押し当てる。


「もしもし……あー、お久しぶりです! 三崎です!……すみません、今いいですか?……はい、はい。ええ。実はですね、令佳の件で……ちょっと……」


 しばらく三崎先輩は話をしていたけど、やがて、


「はい、分かりました! はい……はい……すみません、お手数おかけします……はい。ありがとうございました! 失礼します!」


 と言って、電話を切った。


「OKだって。むしろ彼も君と一度会って話がしたい、って」


 えええ!


 急展開だった。


「というわけで、彼のメアド送るね」


 十秒後、僕のスマホに三崎先輩からのメールが届いた。


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