23
「ええっ! マジっすか?」
驚いた。そんなこと、全く身に覚えがないんだが。
まあでも、確かにアヤちゃんからは、なんとなく好意のようなものを感じなくもないような気もしなくもない (否定の連続の連続)。だけど、僕が気づいてないだけで、実は他の一年女子からも……モテてるのか?
「なあんてね」
令佳先輩が、ペロっと舌を出す。
「ウッソー。全くもう、ハマちゃんたら、鼻の下延ばしちゃって」
そう言いながら、先輩はいたずらっぽくクスクス笑う。
「……」
やられた。
最近、令佳先輩はこんなふうに僕をからかうことが多くなった。だけど別に嫌な気分じゃない。むしろ、先輩がなれなれしくしてくれるのは、僕にとっては素直に嬉しいことだった。だから僕も、いつものようにため息をついて肩をすくめて見せる。
それに、こんなふうに令佳先輩の女神スマイルを見ていると、他の部員の誰もこの人の魅力にはかなわないな、と思ってしまう。少なくとも僕にとっては。
「でもさあ、よく考えれば、ハマちゃんはいつも私達をモデルにして写真撮ってるようなものよねえ。しかも、普通ならまず見ることの出来ない、体の線がピッチリ出た、コスチューム姿の私達とかを、さ」
ジト目になった先輩が言う。
「……」
確かに、それはその通りだ。だけど僕は、男の本能に忠実な、キワドい写真は努めて撮らないようにしている……つもりなんだが。
「やっぱさ、ハマちゃんも……コスチューム姿の私達見て……ムラムラしたり……するの?」
そう言った先輩は、さすがに恥ずかしそうな顔になった。
……マジっすか。それ、聞いちゃいます?
だけどそれ、先輩もずっと僕に聞きたかったことなのかもしれない。そして、他に誰もいないこの場は、それを聞くのに絶好のシチュエーションだ。
少し悩んだけど、結局僕は、正直に自分の気持ちを打ち明けることにした。
「そりゃ僕だって男ですから、そういう気持ちになることも……ないとは言いませんよ。だけど……僕、みんなが晴れの舞台でコスチュームを着るために、普段の練習でどれだけ汗と涙を流しているか、ずっと見てきてるじゃないですか。だから……僕はそういう視線では、みんなのコスチューム姿はとても見られないです。見たらバチが当たりますよ」
「……」
しばらく先輩はポカンとしたまま僕の顔を見つめていたが、やがて、気を取り直したように言った。
「へぇ。意外に真面目なのね」
「意外に、は余計っすよ。僕は真面目っす」
「ふうん。そっか」
先輩は何度もうなずいた。ドキドキしたせいか喉の渇きを覚えた僕は、自分のグラスの中で解けきった氷の成れの果て、かすかに乳酸飲料の味が残っている水をあおる。
その時だった。
先輩が、事も無げにトンデモないことを言い放ったのだ。
「それじゃ、その真面目なハマちゃんに、今度私のヌードを撮ってもらおうかな」
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