21
「!」
えええええ!
全く予想外の反応だった。
ここに残る……って、僕と令佳先輩、二人っきりになるんだけど……いいの?
いや、もちろん僕だって、先輩と一緒にいられるのは嬉しいけど……こんな密室で、しかも二人っきりってのは、さすがにちょっと……抵抗感がある……
だけど、先輩は……僕が良ければここで二人っきりになってもいいってことなのか? それとも、本当は嫌だけど、僕のことを気にして、あえてそう言ってるだけなのか……?
わからない。僕はどうしたらいいんだ……
だが、悩んでいる時間はない。僕は応えた。
「ぼ、僕も……先輩が本当にいいんだったら、ここに残りますけど……」
結局、僕は自分の気持ちに正直に従ってしまった。だけど先輩はニッコリして、
「じゃ、決まりね。終わりの時間までここにいることにしましょう。マユ、気を付けてね」
と言うと、三崎先輩に向かって手を振る。
「うん。じゃ、令佳、ハマちゃん、ごゆっくり」
そう言って帰り支度を済ませ、三崎先輩は僕たちに向かって手を振り、そそくさと部屋を出て行った。帰り際、なぜか彼女が令佳先輩にウインクを投げていたのが、少し気になったが……
というわけで、僕はこの密室に、令佳先輩と二人っきりで取り残された。
いやが上にも緊張が高まる。それを誤魔化すために、僕はリモコンを手にとって、先輩に声を掛けた。
「え、ええと、先輩、何か歌います? 僕、入力しますけど」
だが、先輩は首を横に振る。
「ううん。それよりも、いい機会だからさ、少しお話しない? 私、一度君とゆっくり話がしたかったのよね」
「は、はぁ……」
まあ、僕も先輩と話ができるのは素直に嬉しいが……
いきなり令佳先輩が席を立って歩き出し、さも当たり前のように僕の左隣にちょこんと腰を下ろした。
ちょっと待てぇ! 距離、近すぎだろ! ここ、密室なんだぞ! 先輩、何考えてんだよ……
彼女の髪のシャンプーと石鹸の香りが、ふわりと漂ってくる。家でシャワーを浴びてきたんだろうか。
思わず僕は、ごくり、と唾を飲み込む。
しかも……
この打ち上げが始まった時から、僕はずっと気になってた。
今日の令佳先輩……やたら胸が大きいんだけど……
いや、僕も今までずっと、実はこの人意外に胸が大きいんじゃないか、とは思ってた。隠れ巨乳、ってヤツ?
だけど普段はいわゆるスポーツブラを装着してるせいか、日本人の標準よりはちょっと大きいかな、って程度でそれほど目立たないし、今日だって演技中はそうだったはず……
なのに、シャワーの後でブラも着替えたんだろうか。今、先輩の白いブラウスから透けて見えているのは……白いレースの、なんか装飾の入った高級そうなブラだった。しかもVネックなものだから、谷間がくっきりと見えるんだが……
ヤバすぎる……今日の令佳先輩、僕の煩悩にクリティカルヒットかましまくりだよ……しかもこんな密室で……
なんだかもう、先輩があまりにも魅力的すぎて、玉砕覚悟で告ってしまいたくなってきた。どうせフラれても、令佳先輩は今回の大会で引退しちゃうんだし、今後は部活にもほとんど顔を出さなくなるんだから、気まずい思いをすることはない。
だけど……
やっぱ無理だ。どう考えても結果が見えてるもんな……
「ねえ、ハマちゃん」言いながら、先輩がチラリと僕の方に振り返る。「私、前から聞きたかったんだけど……ハマちゃんが写真を始めたきっかけってさ、何なの?」
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