第7話 異種空中戦闘
「大丈夫!?」
「ごめん、平気……!」
やわらか……
彼女の肩を掴んでいた零矢は、ふとそんなことを思う。
けれど、真面目な顔の彼女に失礼だと思いすぐにその邪念を追い払う。
「相手、強い?」
「うん……。不甲斐ないけど、ちょっと苦戦中」
そう悔しそうに言いながらも、彼女は笑みを絶やさない。
「でも大丈夫。コイツは私が倒す。……って言っても、君を守ってあげる余裕まではないかもな」
遠回しの〝離れてて〟という言葉に、零矢は不承不承、頷くしかなかった。
「でも、おれにももしなにかできることがあれば……」
「じゃ、応援してて!」
「……わかった」
彼女の邪気のない笑顔を見ながら、不甲斐ないのは自分の方だと零矢は思った。
新たに剣を召喚し戦闘に戻る彼女を見送りながら、自分も同じように握りこぶしに力を込めてみる。そうすることで、彼女と共に戦うための――彼女を助けるための、なにか不思議な力が宿るのではないかと期待したが、残念なことになにも起こらない。
ノフイェはすでに〈夜蝕体〉との戦闘に戻っている。
光弾がいくつも飛び、彼女が振るう剣が月夜の光を反射して、時々、煌く。
その様相はまるで鋭い背びれを持った素早い動きのグッピーと小刻みに動き回る蜂の異種戦のようだ。
飛び道具を持つ相手に近接戦闘用の武器はかなりキツそうだったが、それでもノフイェはドレスの裾を尾びれのように風に靡かせながら複雑に動き回り、ついに〈夜蝕体〉に深めの一太刀を加える。
その攻撃を受けた――彼女の何倍も大きい蜂のようなバケモノは、驚いたように一気に距離を取り、そしてそのまま背を向け遠くの空へと飛んでいく。
……あれ。
逃げた?
今までゴリゴリに戦闘をしていたので、そのあっという間の退散に零矢もノフイェもキョトンとしてしまう。
そしてそのまま〈夜蝕体〉は姿を消してしまい、ノフイェはしばらく警戒しながら空の果てを睨みつけていたが、もう戻ってきそうにないことを確認し、剣を光の泡に分解した。
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