ずるい設定も多いが制限も多い

 魔王ウラのコンソール。これを操作するためには目を閉じないといけないのが少し不便。視界がきりかわって、画面を直接みているような感じになる。

 このコンソールで今できることはこの部屋と、諸国の要所、かつてウラが呪いを蒔いて回った場所あるいはそのつもりだった場所への瞬間移動、スロットにいれておいた装備に瞬間切り替え可能であること。ただし、この装備はこの塔を奪う戦いで失われたはずだ。そう「覚えて」いる。

 そう思ったのだが、スロットに「見覚え」のあるアイコンがはいっている。

 もしかして、これがダイモンの言ってたプレゼントだろうか。

 目を開き、念じてみる。白銀の兜の甲冑、剣と盾が出現した。じりじり魔力を消費する感覚も「思い出し」た。再び念じればもとの姿だ。

「なつかしい、というべきなんだろうか」

 ウラの経験はどこか他人事のように思える。僕は往時のウラのように闘えるのだろうか。

 部屋にはどこかの冒険者のものだったのか、なまくらの剣とバックパックに一通りの荷物がはいっている。普段はこっちの姿のほうがいいだろう。なにしろ白銀の甲冑姿は派手だし魔力は消耗する。

 この姿である程度闘えないといけないだろう。

 この世界は安全ではない。

 ぞっとした。もし、ここで死んだらどうなるのか。

 蘇生呪文のあるこの塔で、少し自信をつけておこう。

 持ち物は結構な重さになっているが、ステータスのおかげで楽々運べる。塔の中の自由移動は制限されてしまったので、階段をさがして下りて行く。

 今のはこんな感じだ。


 ダイスケ/ウラカミ 人族 十七歳 魔法戦士 九十九レベル

 たいりょく 五百九十一 まりょく 七百七十二

 ちから 九百五 ちえ 千二 すばやさ 四百二十七

 魔法 日常魔法、攻撃魔法、梃子魔法(物理魔法)、神聖魔法、呪詛魔法

 魔法スロット 無制限 コンボ 九(設定済み三)


 梃子魔法は物理的な干渉をやる魔法で、妖精族が得意だったはずだ。木の枝に安定して立ったり、空中に魔力で足場を作ったり、弓の威力を増したり。地味な玄人好みの魔法なので、ゲームのほうでは設定のみで省かれていた。

 魔法スロットははゲームでは二レベルごとに一増えて、無詠唱ですぐ使える魔法を設定することができる。設定は一日一回。この選択と使い方が魔法使いなどは重要でテクニカルといわれる所以だ。

 だが、ゴウキの場合はあのレベルでは全部の魔法を設定できているだろう。

 ウラも無制限というボスならではの特殊設定があって、さっき覚えたばかりの回復のための神聖、呪詛魔法以外は全部はいっている。で、コンボを選択すると自動で魔力を消費し呪文を投げていける。三つすでにはいっているのはボスとしてのウラのコンボだろう。最大九つまで作れるのは知らなかった。調整した結果三つになったのかな。

 編集画面を見ると同時詠唱なんてある。いかにもボスらしいずるができるものだ。

 この設定も魔法スロットと同じらしい。ためしに三つくらい設定してみた。今日、どこかでためせないものかな。

 問題は、白銀の鎧と剣を装備したときには魔法は使えないということだ。そのかわりあの装備は魔法を可視化し、断ち切ったりはじき返したりというとんでもないことができる。

 たぶん、あれでボスとして戦ったら強すぎたのだろうな。壊されてしまった。

 塔の中は掃討されたあとなのか、ときどき戦闘の痕跡があるだけで特に何かに出会うということもなく七階までおりていけた。確か五階に町があったはずだからあと二つ降りれば一息つける。

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