第3話 美少女とイケメンのツンデレの需要は高い

☆☆☆

「却下だ」


 俺たちが一ノ瀬先輩に提案した生徒の悩み相談の話はこの通り、相手にされることもなく却下になった。


 正直、優治から話は聞いていたから一筋縄でいかない事は理解していたが、まさかここまできっぱりと切り捨てられるとは思ってもいなかった。

「えっと、一応理由とか聞いてもいいですか?」


「理由もなにも急にこんな事提案されて、はいそうですかとはならんだろう。そもそも、見ず知らずの生徒に一体なにを相談するんだ?」


「それは、えっと友人関係とか、恋愛相談とか?」


 俺のこの言葉に一ノ瀬先輩は「はあ」とため息を吐き、俺を諭すように話を進める。

「それでその悩み相談、お前は何を言うんだ?友人とのうまい付き合い方か?それとも、好きな人と付き合うための方法か?お前にそれが出来るのか?部としてやるとなると生半可な答えは出来ないぞ。その際に生じた責任は部全体が負う事になる。」


「いや、責任って相談に乗るのは友達同士でだって普通に起こる事でしょう。先輩は少し重く捉え過ぎでは?」


 この答えに一ノ瀬先輩は先程よりも更に大きなため息を吐いた。

「いいか、個人で相談する分には、特に相手から自分に相談する際は、相手だって自分の意見があくまで主観である事前提で聞いてくる事も多い。だが、部でとなったら話が違うだろう。部員一人一人の意見にある程度の信憑性がある事前提で聞いてきている。そんな中で自分たちが言った事を真に受けてそれを実行した結果大事になったら、僕はあくまで自分の意見を言っただけでは済まなくなるぞ」


 流石にここまで話されれば鈍い俺でもわかる。一ノ瀬先輩も自分の事が嫌いで言ってるわけでなくしっかりとした理由があって言っているのだ。

「…すいません。俺、そこまで頭が回っていませんでした。」


 そう言って頭を下げて生徒会室を出ようとしたところ、一ノ瀬先輩が待ったをかけた。

「部としての悩み相談は許可できないが個人としての悩み相談なら私にそれを止める事は出来ない。それと先ほどはああいったが、自分の手に負えない話は他の人間に頼れ。私じゃなくてもいい、家族や友人、教師でもいい、一人で抱え込んで解決しようとするなよ。あと、お前たちが使っている部室の鍵は、お前たちになら私の下に来れば貸してやる。」


 どうやら、全面的な反対と言う事ではないらしい。やっぱり一ノ瀬先輩は良い先輩だ。


 俺は一ノ瀬先輩に感謝の言葉を述べ、そのまま生徒会室をでた。すると外で待っていた優治が「どうだ?」と話しかけてきたのでサムズアップする。

「おお、通ったのか。良かったな。」


「まあ、正確には部活動としては出来なかったけどね。ただ、個人でする分には問題ないってさ。」


「成程、個人でか?つってもどこでやるんだ。廊下でやるわけにはいかないし。」


「そこは部室を使ってもいいってさ」


「まじか、やったじゃねーか!」


 一ノ瀬先輩とのやりとりもあり、既に時間は午後五時を回っていたため、今日の所は帰る事になった。いつも通り他愛もない話をしながら下駄箱に向かっていると、一人の女生徒とすれ違った。


 腰ほどまであるロングヘアー、目元は少し赤く泣きはらしていた…ような気がする美少女だった。あれ、さっき一ノ瀬先輩に悩み相談の許可をもらいその帰りに泣いた跡がある美少女とすれ違うなんてもしかして、運命?


「いや、普通に違うと思うぞ」

お前は相変わらず…。だから人の心を読むなと言ってるだろ。そんな事を考えていると優治が更に言葉を続ける。


「それに、急にお前みたいな不審者が話しかけてみろ、普通に引かれるか、人を呼ばれるぞ?」


…一応俺もこの学校の生徒なんだけど


「そう言う問題じゃなくて、見知らぬ男子生徒が急に話しかけたら普通警戒するだろ?」

再度心を読まれた気がするが…なるほど、確かにそれは一理ある。


「…で、どうするんだ?そうなると、打つ手がなくなるだろ。」


「まあ、そこは俺に任せて置け。考えがある」


 優治は更に「後日待て」とだけ言い、それ以上この話については話さなかった。いや、だから言うだけ言えよ。


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