第4話 日曜日


 カーテンの隙間から日差しが徳香の部屋を照らす。


 「うーん」


 徳香は寝ぼけながら時計を見る。


 11時だ。


 そろそろ起きるか、などと考えながらベッドで布団の温もりから抜けられないでずるずるしていた。


 

 LINEが鳴る。


 なにかと見ると近くに住んでいる母親からだった。


 「おはよう」


 「おはよう、徳香起きていた?」


 「起きていたよう」


 「あなた声が寝ているわよ」


 「私、低血圧だから」


 「どうせまだ何も食べていないんでしょう?」


 「うん」


 「ご飯持って行ってあげるから」


 「いいよ、そんな」


 「いいから、たくさん作りすぎちゃって、お父さんと私だけじゃ食べきれなくて」


 「うん」



 そんなやりとりがあって30分くらいすると母親がやってきた。


 母親はタッパーに鶏肉と里芋の煮つけを大量に作っていた。


 徳香がまだ眠たい頭でぼーっとしていると、母親は簡単に掃除をしてくれて、昼食の準備をして、じゃあねと言って帰って行った。


 母親が帰るくらいにようやく目が覚めた徳香は昼食を食べ始める。


 おいしいなと思う。


 食事を終え、片づけをしてから着替える。


 徳香は小説を読むのが好きだ、普通の小説も読むしネット小説も読む。


 今日は池袋あたりまで出てカフェに行きそこで小説を読もうと本棚を見る。


 これでいいか、と2冊本を取る。カクヨムというサイトの小説でも気になっている小説があり、それも時間があれば読もうと思った。



 徳香のアパートから池袋まではバスで10分、歩いて30分くらいだった。


 今日はなんとなく歩くことにした。


 東京ではここ2週間ほど雨が降っていない。


 外は乾燥していた。


 徳香はグレーのセーターに黒のロングコート、デニムのジーンズと茶色のヒールを履いてアパートを出た。


 「寒いっ」


 思わずポケットに手を入れて歩き始める。


 午後2時、気温は10度あるかないかといったところだろう。


 空を見たり、目に入ってくる風景を楽しみながら池袋への道を歩く。



 30分ほど歩いてお目当てのカフェにたどり着いた。


 サンシャイン通りにあるそのお店は場所がいいこともあっていつも混んでいる。


 今日も混んでいたが、座れるスペースがあったのでそこに座りメニューを見る。


 ホットレモンティーにした。


 注文が来るまでの間に持ってきた本をバッグから取り出す。


 

 逢坂徳香おうさかのりかは活字中毒と言えるほど小説が好きだった。


 小学校の頃は毎日1冊本を読むほどだったし、読書感想文を書くことも好きだった。


 レモンティーが来てからも、持ってきた小説の世界に没頭して読み進める。


 2時間程たっぷり読んでから冷めてしまったレモンティーを飲み干しお店を出る。


 まだ夕方だ、サンシャイン通りからすぐの所にジュンク堂書店という大きな本屋があり、徳香はそこに向かった。


 サンシャイン通りの入り口にある横断歩道ではたくさんの人が信号待ちをしている。


 その信号を渡り、ジュンク堂方面へ。


 10分も歩かずに到着する。


 本が好きな徳香からすると遊園地のようにも思える楽園。


 全く読む機会がないような専門書フロアも含めて上の階から眺めていく。


 適当に本を取り出しては少し読み、という作業を繰り返しながらフロアを移動し下の階へ降りていく。


『Six Distance』という本を購入してお店を後にした。


 アパートに戻ってから、お母さんが持ってきてくれたご飯を温め直して食べて、また動画チェックをして月曜日に備えて寝ることにした。

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