第2話 実験

 徳香は改めてステータスをいじった男性のカードを確認した。


 平沢護ひらさわまもる


 中途入社してきた中年の男性だ、愛嬌があり面白いのでなんとなくカードにコレクションしていた。


 資金力が200となっている他にはカードには変化はないようだ。


 どうせならと、さらに資金力を増やしてみようかと思って操作したがそれは受け付けられないということなのか、カードにロックがかかったようにもう編集ができなくなっている。


 編集する機会は1度きりということかと徳香は一人納得していた。


 平沢は徳香が幸運の女神だとは露ほども思っていないだろう、もしそれを知ったらどうするのか?連絡先交換などはしていなかったため退社した平沢とは事実上連絡を取る手段はない。


 ただ、徳香は平沢が手にした数億円に拘泥こうでいしなくても良かった、手元にある19枚のカードから同じように億万長者を作ればいいわけだ。


 徳香は自宅のアパートでスマホをいじりながら含み笑いが止まらなかった。


 理想の恋人、理想の結婚相手を自分でカスタマイズできるのだ。


 そこで、どのカードで実験するかスマホのメモ帳を見つめるとすぐに思いついた。


 下野敬しものたかし


 35歳の男性でくせが強い。


 人と接するのが苦手なのかと思えるが、話していると天然ボケもする面白いキャラクターだ。


 現在のステータスを見る。


 名前:下野敬


 資金力:35


 ルックス:31


 優しさ:55


 私に対する愛情:71


 私からの愛情:15


 相性:38


 このカードのどこをいじれば良いのか。


 そこで、徳香の手は止まった。


 平沢の時はカードのステータス変更が現実に反映されるなど考えていなかったからできた。


 今は違う、これをいじることによって現実世界に影響が出る。


 そんなことが許されるのだろうか。



 でも、どのステータスでも上方修正することなら、相手に不利益になることではないかなどと考えてカードのステータスをいじってみる。


 平沢の時と同じように資金力を200にできるか変更を加える。


 保存ができない。


 何回かメモ帳の保存ボタンを押す。


 それでも資金力を変更した下野のカードは更新されず一度変更を破棄する。



 そこでまた徳香は考える、人によって上限があってそれを超える変更はできないってこと?


 下野の資金力を50にする変更をしてみた。


 すると、それは受け入れられたようで上書き保存された。


 おお!と逢坂は一人で歓声を上げた。

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