第129話 燃え尽き症候群
いつもの時間に起床する。
秋になり、だんだんと日が出ている時間が短くなってきた。外はまだ薄暗い。
着替えて、日課のランニングに出かける。
徐々に明るくなる空を眺めながら、不意に実感した。
そうか。
終わったのだ。
私は、やり遂げたのだ。
清々しい気分だった。心地よい朝の空気が、いつもより爽やかで、新鮮で、きらきらとしているように思えた。
ランニングを終えた後、シャワーを浴びて制服に着替える。
ダンスパーティー後、休日を挟んで初めての学園だ。
ずっと休んでいたので、授業も久しぶりである。
いつものように整髪料を手に取って……やめた。
もう女子ウケを気にする必要はないのだ。無理に攻略対象たちとの差別化を意識する必要もない。
それどころか、私の平穏のためには本来の「悪役令嬢」のように、攻略対象の誰かがリリアと結ばれるようアシストする側に回ったほうが良いくらいだ。
そう思った瞬間、また肩からふっと力が抜けた。
安心したような、重荷から開放されたような感覚。
それと、何とも表現しがたい虚脱感。これが燃え尽き症候群というやつだろうか。
適当に梳かしておしまいにする。毎日セットするの、実は結構手間だったのだ。
鏡を見る。
……いや、さすがにすっぴんは味気なさすぎる。無味だ。無味乾燥だ。
自分のテンションを維持するためにも、化粧はしておくのが良いだろう。
私は化粧道具を手に取って、すっかり手馴れた顔面の構築を開始した。
たとえルートが決まっても、ゲームが終わっても。
日常はこんなふうに続いていくのだろうなと、何となく思った。
出来る限りその日常が、平和で平穏で、やさしいものであることを願ってやまない。
朝食の席に行くと、クリストファーが怪訝そうな顔で私を見た。
「あれ? 姉上、寝坊したんですか?」
そう来るか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます