10歳、婚約者が決まっちゃいました!

セレスを筆頭にみんなが待っている広間へ戻ると、親たちの興味に満ちた視線が一斉に集まる。

オーンたち男性陣も私たちの方を見ているけど、親たちの方が盛り上がってるなぁ(笑)


「おっ、決まったか!」

「楽しみねー! 誰々が婚約者になったの?」


カウロさんとアネモイさん夫婦が興奮気味に聞いてきた。


「皆様、お待たせしました。婚約者が決まりましたので、私からご報告しますね」


そう言って、セレスはコホンと一つ咳払いをする。


「私の婚約者は、オーンになりました。オーンよろしくお願いしますね」

「こちらこそ、よろしくね。セレス」


セレスがドレスの両端をヒラっと持ち上げ、オーンにお辞儀をした。


「わぁ!」と親たちが盛り上がる。

セレスのご両親がサールさんと王妃様に挨拶をしている。

セレス嬉しそうだけど、オーンの方は驚きもなければ、喜びもない。

かといって、嫌がってるそぶりもない。いつも通りだな。


うーん……オーンはいつも笑っているけど、それって本心なのかな? って思う時がある。

なんか気持ちが読めないんだよねぇ。

セレスには幸せになってほしいんだけどな。


「マ、マイヤは? 決まったのかい!?」


マイヤのお父さんであるパンナさんは、マイヤの婚約者が気になって仕方がないって感じ。

マイヤの事がとっても大切なんだな。


「私はエウロくんになったの。エウロくん、私でごめんね」

「えっ、いや。マイヤを嫌がる男はいないと思うよ。嬉しいよ」


マイヤは恥ずかしそうにエウロに報告をしている。

エウロの方はマイヤが相手だって知って、少し嬉しそう。


気持ちはよーく分かる。私が男でも相手がマイヤだったら、嬉しいと思う。

それくらいマイヤは可愛らしい。

それに私は“マイヤがヒロインなんじゃ!?” とも思ってる。まぁ、あくまでも予測だけどね。

それにしてもエウロとマイヤ、いい雰囲気。このまま恋愛に発展するんじゃない!?

今後、この2人には注目しておこう。


「可愛いいマイヤちゃんで嬉しいわー。お義母様って呼んでもいいわよー」

「本当だな。料理も上手だしな。お義父様って呼ぶか!?」

「エウロ、マイヤをよろしくね。あくまでも清いお付き合いで頼むよ。本当に頼むよ」


エウロの両親が軽いノリに対し、パンナさんは既に嫁にやる気分なんだろうか?

(仮)婚約者とは思えないくらい空気が重い。エウロの家族との温度差が激しいなぁ。


「ルナは誰になったの?」

「ミネルよ」


ルナのお母さんであるリュアさんが確認し、ルナは必要最小限の返事をする。

家族内でも会話が少ないのね。


「ルナちゃん。ミネルは大変だと思うけど、よろしくね」


メーテさんがルナとリュアさんの元へ行き、挨拶をしている。

そういえば、当の本人であるミネルは?


「よろしく」


ルナとリュアさんの方を向いて一言挨拶をしただけだった。

えっ、挨拶それだけ? 短すぎない?

なんかミネルがほんの少しだけ、いつもと違って見えるのは気のせいだろうか。


「ミネルなんかあった?」


私はミネルの近くに行き、こっそり聞いてみた。


「いや、別に。予想と違っていたから、少し驚いただけだ」

「へぇ、予想してたんだ」

「お前は僕を選ぶと思ったぞ」


…………ん?


「なんで?」


私が思った事をそのまま口にすると、ミネルの目が大きく見開いた。

心なしか耳が赤くなってる?


「いや、別に」


ミネルはそれだけ言ってルナとメーテさん達がいる方へと行ってしまった。

なんだったんだろう?


「アリア」


ミネルのセリフにはびっくりしたな。 予想だにしてなかった。

どうしてそう思ったんだろう?


「アリア」


んー、ミネルが分からん。


「アリア!」

「うわぁ、お父様。どうしたの?」

「どうしたのって……何回も呼んだんだよ。アリアの相手はカウイくんになったのかい?」


お父様が苦笑しながら私に聞いてくる。

そっか。みんなが報告していたから、私も伝えた気分でいたけど……まだ正式には言ってなかった。


「そう、そうです! 私の婚約者はカウイになったの。カウイよろしくね」

「ぼ、僕はアリアちゃんで安心したけど……アリアちゃん、僕でごめんね」


えー! なんでカウイが謝るの?

最初会った頃、カウイは平凡キャラかな? って思ってたけど、こんなに優しいんだもん。

きっと将来はモテる男の人に成長すると思う。


だけど私の場合は、将来も平凡なのが分かってるから……むしろ私の方が申し訳ない気持ち。

カウイのご両親も相手が私でガッカリしてないかな?


ご両親であるテウスさんとホーラさんに目を向けると……め、めちゃくちゃ喜んでる!?


「カウイの相手がアリアさんで嬉しいわぁ」

「私もアリアさんで一安心です」

「ふふ、そうね。アリアさんだったらいいなって思ってたのよ。本当に結婚までいってほしいわ」


こんなに喜ばれると思っていなかったから、ちょっとビックリ!

ただ結婚って……さすがにお父様とお母様もホーラさんから結婚の話が出てきて焦ってる。


「えっ、結婚? カウイくんはいい子だけど、さすがにまだ早いよ」

「えぇ、そうですよ」

「ふふ」


……ホーラさんの冗談っぽいな。

さすがに結婚はびっくりしたよー。ホーラさんは人をからかうのが好きみたい。


その後も親たちは「家族になるかもよー」と言って、大盛り上がりで過ごしていた。

当分、この話題で盛り上がれそうなくらいに嬉しそう。

みんな本当に仲がいいんだなぁ。

大人になってもこんなに仲がいいなんて素敵な関係だな。


私たち8人も親たちみたいな関係になりたいって思ったけど、なれるかな?

今のところ、難しそうだ……。


決定後は、これからの事についていくつか約束をした。

仮とはいえ婚約者になったので、もちろん公言していい。ただし、解消する際はちゃんとお互いの親に報告する事。

誰一人、反論する事なく、婚約話を進める事になった。


お茶会もお開きとなり、帰り際、ミネルの家族に挨拶をするとメーテさんがそっとつぶやいた。


「ルナちゃんは素敵な女の子だけど、私はアリアちゃんじゃなかったのが、ちょっと残念」


そう言って、お茶目にウインクしてみせる。

気を遣って言ってくれたのかな? メーテさんの優しさが嬉しいな。

私もメーテさんがお義母さんだったら嬉しいけど、ミネルがなぁ。

ミネルだって私は嫌だと思うし(笑)

そのわりには、さっき変な事言ってたな、ミネル。

でも「別に」って言ってたし。まぁ、いっか。


“婚約者を決めるイベント”は、まさかの女性陣が相手を決めるという結末。

これは予想がつかなかったなぁ。


今後、どんな風にみんな(わたし以外)の恋愛が発展していくのか楽しみだな。

学校生活とかイベント多そうだし、楽しい事が盛り沢山ね!


そういえば、帰路につく時、お父様が神妙な面持ちで「あの場は盛り上がったけど……エレになんて言おう」って言ってたな。

普通に『婚約者できたよ』でいいと思うんだけどなぁ……?

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