第49話 ある村での出来事 ー5ー





 ゾビグラネの笑い声が聞こえた気がした。

 ざまぁない、と笑う声だ。


 すべてはゾビグラネが仕組んだことだったのだ。

 なにが君も是非その泉に触れてみるといい、だ。


 ヤツの罠に私はかかったのだ。


 今ならヤツは保証がほしかったのだと分かる。


 未来が自分の思った通りなのか、という保証だ。


 ヤツは恐らく人類を滅ぼさなければ、むしろ自分たちこそが滅ぼされると思ったのだろう。

 ならば召喚獣に怯え、穴倉に住む未来の方がヤツにとってはより良い未来だったのかもしれない。


 それを証明するように私たちの住む未来には魔法を使えない人間が存在しなかった。


 ヤツなりの理屈で言うと、種の生存競争で勝ち残っただけ、という所だろう。



 その戦いのために次元魔法ホールをつくりあげ、

 その戦いのために私をこの村に誘導し、

 その戦いのためにカルニバルと、その召喚陣に目をつけたのだろう。



 憎らしかった。

 やつの全てが憎らしかった。



 まぁいい。どちらにせよ、もう世界は終わったのだから。

 もう考えるだけ無駄。

 もう考えるだけ……





 光がまぶしくて私は瞼をあけた。

 瞼をあけた私は、その一秒後には既に混乱していた。

 だって、おかしいでしょう? 瞼をあけたのだから。



 死人は瞼なんてあけない。

 それに混乱に拍車をかけたのが耳から入り込む賑やかな音だった。



 呑気な鳥たちの歌声が聞こえ、虫たちの声が聞こえ、そして楽し気に話す村人たちの声が聞こえた。


 意味がわからなかった。

 何故村人の声が聞こえるのだろう?



 フェンリルは? フェンリルはどうしたの?



 視界には白い部屋が映っていた。

 いつもの部屋だ。修行者宿泊用の部屋。

 体の上には掛布団がかかっており、そこに穏やかな朱色の光が射し込んでいた。

 私は上半身だけをベッドから起こし、左右を見回した。


 奇妙な状況に思わず唾が喉を通り抜ける。



「これは……、なんなの?」



 この状況の全てが分からなかった。

 フェンリルがこの世に呼び寄せられた以上、皆が生きているわけがない。

 だから、どうして村人が生きているのか、私自身が生きているのか理解が追い付かなかった。頭の中はさらにぐちゃぐちゃになる。




 たしか……、と思い記憶をたどる。


 記憶は酷くおぼろげであった。

 覚えていることといえば……、



 そうあの光だ。


 あの赤い光。

 あの赤い光がねじまき水路から発せられたところまでは覚えている。


 それから……ええっと……それから……


 覚えていない。

 そこから後の記憶が抜け落ちていた。


 なんでだろう……



 酷く取り乱し、大声をあげ叫んだ気もするが、覚えていなかった。


 私はそこで自分がはじめて黒いローブを着ていることに気づいた。

 黒いフードのついた長服だ。


 なぜ自分がそんな服を着たまま寝ていたのか思い出せなかったが、とりあえずベッドの中から這い出すと、ふらつく足をひきずり、黒の館の外へでた。



 西日の鋭さに思わず瞼を閉じ、手で影をつくる。

 夕方か? と思った。

 瞼を徐々にあけてゆくと、冬ごもりの準備をする人々がせわしなく行き交う姿が見え、各所から笑い声が聞こえてきた。


 村は平穏そのものだった。

 不気味なほど、今までと同じ日常が続いていた。


 悪い夢でもみたのだろうか?

 私の手でフェンリルがこの地上に現れる、というぞっとするほど悪い夢だ。

 いや、でもそんな都合のよい話など……、と思ったが、そうとしか思えなかった。


 だって赤い光は召喚獣を呼び寄せる光。


 そう魔導書には記述されていたし、ゴードンからもそう聞いた。

 私は自分に問いかける。


 そうでしょう? そうよね?


 女の子が二人笑っている声が聞こえた。

 そちらに顔を向けると、畑の真ん中で飛び跳ねるキャルと、それを見守るライラが見えた。


 本当に、あのねじまき水路が赤く光った出来事がすべて夢なのではないかと思えてきた。



 私は日射病にかかった病人のように、ふらふらした足取りでねじまき水路へ向かう。


 木陰をつくる木々を通り抜け、畑で鍬をふるうレンブラーさんを尻目に、ようやく私はねじまき水路の中心に辿り着いた。


 ねじまき水路の水流はやはりいつもどおり軽快な音をたて、穏やかに流れていた。

目線を下へ向けると、そこには石板があった。


 例のアッカルク語が書かれた石板だ。

 息が荒くなり始める。

 心臓の鼓動が止まらなくなり、思わず足元が震えた。


 そこにあったのは石板だった。円形の石板だ。

 半円と半円があわさり、円の形をした石板がそこには置かれていた。


 それは私が水路から拾い上げたものだった。

 じゃなければこんな円の形なんてしているはずがない。


 やっぱり夢じゃなかった、ということ?




 頭がギリギリと釘をさされたように痛み、私は思わず頭を抱え、その場にしゃがみこんだ。


 瞼の裏に次々と映像が蘇ってくる。

 その時感じた想いも同時に。

 圧倒的な絶望感。

 赤一色に包まれる村。

 奇声をあげ逃げ惑う自分に、そんな私を驚いた眼で見つめるユーリ。


 そう、あの出来事は夢じゃなかった。

 本当にあったのだ。

 でも……ならばフェンリルがここに出現していないのはどうして?




 ==どうしてだと思う? リリア。



 それは聞き覚えのある声だった。

 それはほとんど私と同じ声色をもつ女性の声。

 そんな人物の心当たりなど私は一つしかなかった。私は顔をあげた。


「アシュリー? アシュリーなの?」



==ふふふ。そんなことなんてどうでもいいわ。



 その声は、私の頭の奥に直接響いてくるような声だった。



==あなたはもっと重要なことを考えるべきでしょう? リリア。そうよね?



 アシュリーと思われる声は私の質問に答えずに続けた。



==もう一度聞くわリリア。どうして未だにフェンリルがこの地上に現れてないと思う?



 ねじまき水路の水流の音がいやに大きく聞こえた。

 たぶんそれはちょうど一日目の冬ごもりの準備を皆がやめ、家路につきはじめたからだろう。日は更に傾き、西の山の尾根にかかっていた。



「そんなこと私にだって分からない」



 私の言葉に、アシュリーと思われる声は鼻を鳴らす。



==本当にそうかしら? 本当にそう思う? 思い出してごらんなさい。



 頭が痛い。割れるように痛かった。

 まるでその記憶を拒否するかのように体が反応していた。


 その声は深くため息をつくと、妖艶な声で、下を見てごらんなさい、と囁いた。


 私は頭を抱えたまま、その声に導かれるように下を眺める。

 そこには円形の石板があった。



 ==読んでごらんなさい。ほら、そこに文字が書かれているでしょう?


 馬鹿な、と思った。ひょっとしてアッカルク文字のことを言っているのだろうか? 読めるわけがない。今私の手元にはアッカルク語辞書が無いのに。


 それに、この文字ならもう読んだ。

 フェンリルを呼び寄せる方法が書かれていたのだ、ここには。



 ==今あなたはこう考えているでしょうね。辞書が手元にないのに読めるわけがない、と。それに一度読んだ、と。


「ええ、そうよ」



 声はまた人を小ばかにしたように鼻を鳴らす。

 その声に私は苛立った。


「なによ」


 ==いいから文字を見てごらんなさい。下の方に続きがあるでしょう?


 ――続き?


 私はもう一度円形の石板を眺めた。

 そして、その左半分を眺めた。

 そこには私が読んだ大きな文字と、その下に小さく別の文字が書かれていた。



 ==そこには、なんて書かれているの?


 そんなもの……分かるわけがない、と思いながら文字を眺めていると、別に文字が読めるわけではないのに酷く具体的な文言が頭の中に浮かんできた。



「奇は三日三晩具に入り、静かに時を待つ」



 ==そう、そして更に続きがあるでしょう?


「魔がもし望まざれば、具を滅することにより、奇は絶たれる」


 私は自分自身が分からなかった。

 どうして、こんな文言が頭の中に思い浮かんだのか、何故このような言葉が自分の口からでてきたのか。



 ==さて、もう思い出してきたかしら? あの赤い光を見たあなたは半狂乱になりながら、その後、この文言を読んだことを。



 心臓が早鐘を打つようになっていた。

 バラバラになった記憶が脳みその暗い泥の中から引きあげられてゆく。

 そうだ。私は、ここでその文言を見た。

 この文言を見て、そして――そうだ。あの半円の石板を黒の館に持ち帰り、調べたんだ……



 ふふ、妖艶な声は笑った。



==思い出してもらえて嬉しいわ。ほら、もっと思い出すのよリリア。そして、その石板を調べて、そこには何が書いてあるとわかったの?



 ズキズキする痛みの向こうに、おぼろげな形をした記憶があった。

 それはひどく柔らかく形のない雲のようなものだが、その記憶が私の感じた感情を思い出す。



「フェンリルは……潜伏していた……」



 ==そう、あなたは赤い光がねじまき水路から光り輝きながらもフェンリルがそこから出現しなかったことに安心していたの。はじめのうちはね。

 でも違った。

 それは古代召喚陣特有の召喚方法であると、石板を解読し、分かったの。

 それはただの潜伏期間だと。

 フェンリルは具の中に入り込むのよ。三日三晩。

 まるで土の中で眠り続ける昆虫のように……、成虫になるその時を待つの。



 ピンと張った糸を弾いたような音が頭の中で鳴った。



 痛かった。頭が痛かった。

 どうしようもなく痛かった。

 その妖艶な声は止まらない。



==そして、あなたは解読した。フェンリルを止める方法をね。そうでしょう? ほら、言ってごらんなさい。



 口の中が渇いている気がした。

 とてつもなく渇いているような気が。

 だが私の喉の奥からやってくる言葉は唇を軽々と突き破ってきた。



「具を滅ぼすことで……フェンリルを消し去ることができる」



 また妖艶な声が微笑んだ。

 まるで、正解、と言っているように。

 ……助けてほしかった。頭が痛くてどうにかなってしまいそうだった。



 ==そう、つまり具。具こそが鍵だった。具を滅ぼせばすべてが解決する。でも、具とは何か……あなたはそれが分からなかった。



 既に日はかげり、あたりは暗くなり始めていた。

 蝋燭の明かりが家々の窓から漏れ、鴉と呼ばれる鳥の群れがその薄暗い中を南に向かって飛んでいった。カァともクゥアともそれは鳴いていた。声はそんな薄暮の中の空気の隙間に紛れ込むように響いていた。



 ==そして、あの赤い光が発せられてから二日目の夜。やっと見つけた。


 ……


 ==あなたは具という言葉が指し示す言葉が何であるのかやっとわかったの。そうよね?



 …………



 ==でも、だからこそあなたの心は乱れた。



 …………



 ==あなたはね、心の奥底でずっとこう思っていたの。この旅の最初からずっと……。自分は強大な敵に立ち向かってゆくのだ、と。

 そして、そのためには命すら投げ出し、それを成し遂げなければならないのだ、とね。

 いつもあなたの想定している敵は、巨大で邪悪なものだった。

 あなたが常に命がけで立ち向かわなければならないものだった。



 ………………



 ==あなたに自覚はないでしょうけど、そう思うことであなたは攻撃性を維持できていたの。絶対にフェンリルを滅ぼし、この世界を平和にしてやるのだ、という攻撃性をね。敵が巨大で邪悪であればあるほど良かった。そうであればあるほどあなたは敵を憎むことができた。



 ………………



 ==あなたは高潔な人間で、自分が死ぬことにためらいなんてなかった。



 ………………



 ==でも自分のミスのせいで、弱いものを殺すことなんて耐えられなかった。ましてや善良で、自分に優しくしてくれて、穏やかで、幸せに日々を営んでいる人々を殺すことなんて……あってはならなかった。……そうよねリリア。だからこそあなたは具を滅ぼすことに、こんなにためらっているのよね?




 ………………



 ==具とは人間。もっといえば、あの時、赤い光を浴びてしまった人々。

 つまりこのねじまき村の住人。

 フェンリルは、あなたを含んだその誰か一人の中に入り込み、静かに時を待っている。この世界に姿を現すその時を。



 ………………



 ==そして、今日はその最後の三日目の晩。今宵、フェンリルは人間の体を脱ぎ捨て、この地上に飛び出すの……、そして、恐らく、その時世界は終わる。



 …………



 ==私が言いたいことぐらい分かるでしょう? リリア。いえ、クアドラ。



 ……………



 ==フェンリルが誰の体に憑りついたか分からない以上、具を確実に滅ぼすためにはあの光を浴びた者すべてを殺すしかないの。



 ……………



 ==つまり、この村の住民を一人残らず殺すしかないの。そうでしょう? 他に方法があるかしら?



 ……それは私も、ということでしょう?



 ==ええ、その通りよクアドラ。あなたを含めた全員の命をここで絶つの。それしかないわ。



 ……私が死ぬことに問題はないわ。



 ==ええそうでしょうね。だって、あなた、死にたいって思ってるんでしょう? もう死んで楽になってしまいたいって。



 ……………



==駄目よクアドラ。アシュリーとの約束を忘れたの? 地上を人間たちの手に取り戻すんでしょう? ならば、ここの住民をきっちり殺さなければ駄目。




「でも!」と私は叫んだ。「私の! 私のミスのせいで私が死ぬのは構わないわ! でも、この村の住民は!」



 ええ、と妖艶な声は言った。何の罪もない人々よ。あなたのミスによってその代償を払わされる人々。本当に可哀相な人々。



 荒れ狂う風のように心の中が千々に乱れていた。



「ユーリは? キャルは? ライラは? あんな子供たちまで殺さなければならないの?」



 そんなこと、当然でしょ? と声は冷たく言い放った。



「だってみんな……私に……」



 ==ええそうね。とってもなついていた。まるで母猫を頼る子猫のようにね。



 ………………



 ==ねぇクアドラ。今、ここが本当の意味での分岐点だと分かるかしら。世界の分岐点。



 ……………



 ==フェンリルのいる世界とフェンリルのいない世界。



 …………


 ==あなたはどうしたいの? 本当のあなたは何を望むの?



 …………


 ==あなたはこの美しい大地を守りたいと思っているんでしょう? そうよねクアドラ。何があっても、どんなことがあったとしても、守りたい……そう思っているのでしょう?



 ……………



 ==ならば、あなたのやるべきことは一つだけ。そうでしょう?



 ……………………




 涙が頬を伝い、顎から地面にこぼれおちた。

 涙はとめどなく流れてきた。

 私には自分が分かっていた。

 自分の選択が。アシュリーが私に冷酷になれ、と言った意味がようやく分かった気がした。

 私は世界を救うためには私であることすらやめなければならなかったのだ。

 ただ一つの目的のためだけに戦うのだ、と。

 私はその場にうずくまった。

 過呼吸のように、息を吸い込む。

 何度吸い込んでも息をした気がしなかった。



 ==アシュリーと約束したでしょう? この地上を人間の手に取り戻す、と。そのためにはどんな犠牲もいとわない、とあなたは誓った。あなたの人格を構成しているすべてを犠牲にするの。あなたの高潔さも、優しさも、誇りもすべてを犠牲にするの。この目的のために。何もかもを。



 私はまるで生まれたての小鹿のように立ち上がった。



「私は……」



 ==さぁやるのよクアドラ! あなただけが世界を救えるの。あなただけが! もう時間がないの。今宵フェンリルが復活する。 さぁやるのよクアドラ! さぁ!!




 何かの鈍器があたまを殴りつけたような衝撃があった。

 私はその衝撃により、バランスを崩し、しゃがみ込む。

 銀色の艶のある髪が闇夜に舞い、月光が反射した。



「私は……」



 小さな炎が胸に宿る。

 そしてその炎はどんどんと大きくなる。

 今夜ですべてが決まるのだ。

 何もかもが決まるのだ。

 世界の運命が決まるのだ。


 ゾビグラネに騙されたとしても。

 私自身の犯したミスだとしても。

 すべのてこの世の悪を背負おうとも。


 私だ。私しかいないんだ。

 私こそが、私だけが、世界を平和にできるのだ。

 どんな泥にまみれようとも、どんな悪にまみれようとも、どんな血にまみれようとも、どれほど冷血になどうとも、もう私しかいないのだ。



 許して……みんな……



 涙は止まることはなく、やがて鼻水さえも垂れてきた。


 すると、そこに、ちょうど倉庫の整理を終えた村長が近づいてきた。

 村長は少し厚着をした格好で夜風に備えていた。



「おやおや、こんな時間にどうしたのですか修行者様。おや? 泣いておられるのですか?」



 村長の声はただの耳なりのように聞こえた。

 まるで水の中から何かの音を聞いているかのように、ただ、それらしき音が聞こえるだけなのだ。



 決断すべきだった。

 もう猶予なんてなかった。

 朝が来るまでに。すべてを終わらせるのだ。

 私の命を含めたすべての命を。


 

 

 だから私は、光の首輪を村長の首に巻き付けた。



「修行者様? これはなんですか? これは一体」と顔を青くした村長が叫んだ。

すでに口から出る言葉は決まっていた。




「収縮」




 首輪が縮まり、叫び声をあげた村長の首はねじまき水路の中に転がった。

 体から噴水のように血が飛び出る。

 村長の叫び声につられ、ベンさんが家から飛び出してきた。


 ベンさんは村長を見るなり「なんてこった! じいさん!!」と声をあげ、次に「逃げろ!」と叫んだ。

 村中に逃げろ、と。

 私はその言葉に反応するように手から炎をひねり出し、木々につけた。

 そして、次に火柱の魔法をとなえ、村中を炎で取り囲むと、すばやく地面に召喚陣を描き、召喚獣デルモスを呼び出した。


 牛と熊の姿を併せ持つ強力な召喚獣だ。



「破壊せよデルモス!! すべてを破壊するの! 皆を殺すの! 一人残らずよ! 一人残らず殺すの!!」



 妖艶な声が頭の中で微笑んだ。



 ==さぁはじめましょう。私たちは二人で一人なのだから、あなたの罪もあなたの命もなにもかも、私たちは二人で分け合うの。そうでしょう? リリア。だって、私たちは二人で一人の存在なのだから。



 私は、燃え盛る炎を血に穢れた大地の中で誰に言うでもなく、こう言った。



「ええ、そうねアシュリー。私たちはクアドラ。この地上に平和をもたらすためだけに存在する。それがクアドラ」




 炎が舞い、召喚獣の獰猛な唸り声が響き、そして人々の怨嗟の声が木霊した。



 炎の中に一人の女性が浮かぶ。

 

 その女性はひどく色白で、青い瞳をし、銀色の髪が熱風になびいていた。


 クアドラ。彼女の名はクアドラ。


 その日、たぶん本当に意味でクアドラは生まれたのだ。



 たった一つの目的にのみ突き進み、そのためであれば何もかもを捨て去ることの出来る魔導士クアドラが……



 私は自分を奮い立たせるように声をかけた。




「さぁいくわよ。クアドラ!」

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