第3話 恋だと知った時には既に遅かった


 最近凪が時々学校に来なくなった。今日もそうだ。

 凪によればあれからマネージャーの先輩達は何もしてこないらしいが、時々来ないのはなんでだ?

 只の風邪か? だとしても多い気がする。

別に会いたいとかどうこうとかじゃねぇけど、只友達として気になるっつーか……。


「圭吾ー! 俺すんげぇ噂先輩? いや同級生? なんて言ったら良いかわかんねぇけど知ってんだけどー!」


 同じサッカー部員の一人、翔太ショウタがやって来た。


「俺、今それ所じゃねぇし。先輩とか同級生とかどうのこうのどうでもいいー…凪いが……い……は……」


 え? 俺、何て口にした??

 俺は椅子から勢いよく立ち上がり唇に手を触れる。

 俺が、誰以外? え、唇から発したのか?


「圭吾、どうしたんだよ! 俺の唇ベタベタ触んなよッッ。嫌ぁ〜ん」


 翔太が変な声を出す。

 嫌、翔太コイツの唇からはこんなデタラメでふざけたキモイ言葉しか出てこねぇ。

 もう一度、翔太コイツの下唇を指先でなぞる。


「やダァ〜ん。欲求不満ですかぁ〜? 圭吾君に食べられちゃうッ!」


「……かもしんねぇ」


 「えっ?」翔太コイツが驚くのは当たり前だ。俺だってそうだ。

 まさか翔太みたいな変態野郎にこの気持ちが何なのか気付かされるなんて思いもよらなかった。


 翔太の唇を指先でなぞった時、アイツもこんなに柔らかい唇してんのかな……とか。

 いつからこんなに、アイツの事ばっかなんだ?

 本当はここ最近、いや、もっと前、出会ったときから一目惚れだったのかも知れねぇ。


 ー…俺、アイツみてぇだ。


 次、会った時平然といれるだろうかとか、の俺はそんな事を思っていた。

 次、平然と会う日は来なかった。

 俺が恋だと知った時には既に遅かったんだ。


 

 凪は次の日から一切この学校には来なくなった。



☆☆☆☆☆☆


 凪が学校に来なくなってから、春休みが終わろうとしていたころ顧問に呼びだされた。


「圭吾! お前プロサッカー選手目指しているんだろ?! 最近のお前を見てると到底ムリだぞ! わかっているのか?」


 部活には参加するがレギュラーから外されたり、あんなに好きだったのに何かが足りなくて練習に集中出来ずにいた。

 そして、今顧問に注意をされている。


「……すみません」


 俺もどう言うことかわかんねぇよ。


 そんな言葉の籠もってない俺をみて、先生は溜息をつく。


「北園が関係してるのか?」


「なんでアイツが……出て来るんですか!」


「丁度北園が、休みだしてからだ。お前が部活に専念出来ていないのは」


 ……そんなに、周りに心配させるほどわかりやすいのか。

 俺って凪が居ないと駄目なのか……?


 顧問が職員室の自分の机から一枚のプリントをとった。


「お前、凪の家知ってるよな?」


「はい。数回だけ、友達と一緒に、学校プリントを届けに行ったことは……」


 そして顧問は一枚のプリントと共に、俺にハッキリと言った。

 

「北園は、海外へ行くらしいぞ」

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