第4話:受験
今年は隆祐の大学受験、大祐の中学受験と受験ラッシュになる。しかし、2人とも不安しかなかったため、この先どうなってしまうのか分からなかった。ただ、大祐の中学受験がうまくいくこと、隆祐の大学受験がうまくいくことが両親の願いだった。
隆祐は指定校推薦に選ばれなかったショックから少しずつ立ち直っていた。そして、一般入試で指定校推薦の子達と再会を約束したことで受験に対する姿勢が変わった。以前は指定校推薦に向けた勉強だけだったため、時間を持て余していた。しかし、今は一般入試になったことで今まで遊んでいたゲームやスマホには目もくれず必死に勉強だけをしていた。
一方の大祐も中学受験ということもあり、毎日友達と遊ぶよりも塾のテキストや過去問などとお友達になって毎日を過ごしていた。ただ、成績が思うようにいかずもどかしい気持ちを抱えながら勉強に励んでいた。
そんな2人の様子を見ていた兄はちょっと「大丈夫かな」と何も出来ないことを悔やんで心配していた。なぜなら、隆祐はいつも本番でケアレスミスをして取れる点数を下げてしまうのだ。そのため、中学校受験も高校受験もスコアがギリギリで合格しているだけに大学をギリギリで合格ではギリギリという運命になってしまう。そのうえ、彼はいつも発表やグループワークでもすぐに緊張してしまうため、周りから「無理するなよ」と心配されることもしばしばだった。そんな彼が3度目の受験を迎えるとなってもどうしても彼の緊張度合いが和らぐことはなかった。
大祐は隆祐とは真逆で緊張はしないが、言葉を選ぶことが難しい場面が多かったため、摸擬面接などでいつも言葉選びを指摘されることが多かったのだ。確かに、彼は初めての受験であったため、他の児童と比べると受験することに対する知識が乏しく模試を受けても、面接を受けてもうまくいかないことが多い。
そのうえ、彼の場合どうやっても合格可能ラインを超えることが出来ず、安心して受験をさせることは難しいのではないかと思うくらい先生にとっては悩みの種だった。そして、他の子たちと得点差が開いていくという現実をどう彼に理解させるか先生も頭を抱えるほど深刻な状態だった。
そして、翌月にあった個人面談の際に両親に先生からこう告げられた。「大祐君は本当に受験を望んでいるのでしょうか?今の彼のレベルでは附属中学校に進学するにはかなり難しいと思われます。」と。
やはり両親も彼だけは進学する事は難しいのではないかと思い始めていた。
担任の先生との面談が終わった後で大祐と話合いを持った。そこで、彼が言った言葉が「僕はお兄ちゃんたちみたいに頭が良くないし・・・。」という自信を失っていた心の言葉だった。
彼に対して両親はかける言葉が見つからなかった。兄たちの背中を追っていたとはいえ、自分の学力のなさに失望させてしまい、両親も適切なケアを出来ていなかった。
両親は彼との話合いのあとで大祐の気持ちを考えることにした。
まだ小学生の大祐に県内難関校に進学させたいという両親の思いは届いたが、彼の中では先生に言われた言葉が心にいつまでも響いていた。
それは、「大祐君はいつも頑張っているのだから、少し肩の力を抜いてやってみてはどう?お兄さんたちのこともあるからといって大祐君も同じ道を追いかけたい気持ちは分かるけど、それは大祐君の気持ちではなく、両親がそうなって欲しいと思って言ったことを大祐君は体現したいと思っているのだと思う。受験というのは良い学校に行くため、就職に影響することが全てではないし、受験をしてもただのステータスホルダーになってしまう。最後は自分が決める事が大事だよ」という言葉だった。
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