第1話②

 二人とも自分らしさ・個性───人がそれぞれ持つ「色」をちゃんと持ってる。それに引き換え私はなんにも持っていない。名前の通り、透明なのだ。


「透花」


 その名前を呼ばれる度に、心がちくりと痛む。まるで私が空っぽである事を見透かされているような気がするから。その後すぐに、名前を付けてくれた両親への申し訳なさに自己嫌悪が押し寄せる。その繰り返しがずっと続く。


 だからだろうか。「とうか」じゃなくて「とーか」って呼んでくれる二人と居ると、なんだか少しだけ、私は二人にとって「とーか」なんだって思えて…あったかい感じがする。



「透花、今度はなにニヤニヤしてんのよ」


「ふふ、楽しそぉ〜」


「…んんっ!?あっ、違うの!ごめんね」



 感情がそのまま表情に張り付いていた…不覚だ。ふと、ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる茜のおさげが、猫のオモチャみたいに思えた。彩葉は猫そのものといった印象なので、やはりこの二人の相性は抜群なのかもしれない───



「ぶふぅっ…!!」


「ちょ汚!!唾飛びすぎでしょアンタぁ!」


「だって茜の髪…猫じゃらしみたいで」


「誰が猫じゃらしよ!?」



茜の憤慨を見計らったかの様に、昼休み終了の予鈴が鳴り響いた。

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