第2話 これも、出会いの内?

携帯で、確認しながら歩いていると、ホテルが隣接した雑居ビルの奥まった玄関先から、声が聞こえる。

声の方向に距離が縮まってきて、二人の姿が見えてくる。

「お前、俺をだましたな」「騙すも何も、何も言ってない。」男女が、大声で揉めている?!とばっちり受けても嫌だし足早に通り過ぎたほうが、良さそうだ。

「だから、余計に悪い。俺は、ノーマルだから。ゲイを、探しな」

「待って」留めようとした女を、男が振りほどいて立ち去っていく。

優里が、残された彼女に顔を向けた時(正確には、男)目があった。

えっ、綺麗な人。色白で、目鼻ダチがハッキリしてる小さな顔は、確かに女にしか見えない。

「ちょっと あんた何ガン見してるわけ?」

「へっ、私?な、何も」急に言葉をふられて、たどたどしく答える。

「あんた、人の話盗み聞きしてるんじゃないよ」

(私、怒られてる?あんな、大声で話してたら普通聞こえるでしょと、 いうより華奢な外見とギャップありすぎ。それよりも面接、行かなきゃ。こんなところで、時間取られたくない)

「わ、私。面接が、あるので失礼します」

「面接?」彼の目が、私の足の先から頭までチェックする。ピンクのビンヒールのくつに、ピンクのミニのワンピ清楚系。メイクは濃いめで、ブルーのアイシャドゥと、紫の口紅が、際立っている。 髪の毛は、赤色。涼介が、印象がいいだろうと選んでくれたコーディネート。

「首から上が、血色悪いタヌキ」ボソッと、呟いた言葉だがハッキリ聞こえる。(ハア?カチンときて文句の一つでも言ってやりたいが、関わらない方がいいかも)


「私、振られた所バッチリ見られて感じ悪ーい。だから、今日はとことん付き合ってもらう」と、私にむかって口をとんがらかす。

(へっ?それは、言いがかりでしょう)


「たまたま、通りかかっただけです。」と目は合わせないがキッパリ言いきり、なおも早足で通り過ぎようとすると、彼は(面倒なので、素の性別で書くことにする)力なくたっていた姿勢から、足早く私に近づいてきた。近くに来ると長身で7等身のモデル並みの外見は、初めの印象を裏切らなかった。「なっ何か、ようですか?」

イチャモンつけられてもたまらない。

逃げたくても、ヒールが足に合わなくて痛む足では、これ以上歩けない。


突然、彼はしゃがむと「ん」と、

何かを足元に置いた「なっ、なに」

「何って、、」彼は私の顔を暫くじっと

見つめ一言だけ、「スリッパ」そう呟いた。

以外な行動に、身構えていた身体から力が抜ける。

「あ、ありがとう」

時計を、見ると面接の時間が過ぎている。

諦めて、彼についていくことにした。何かされるのかと、警戒したが自分の直感を信じることにした。


連れられてきたお店は、《BAR 宵闇》と、書かれた雑居ビルの2階にあった。

「いらっしゃい、」茶木で、作られた少々重い扉を開け中に入ると、薄暗い店内にまばらなお客と、カウンター越しにマスターが顔を上げ柔らかな笑みを見せてくれる。「坂北さん、珍しいね。彼女づれなんて、スタッフの子?」それから、二人の話は盛り上がっていく。


このオカマ?いや、ニューハーフか?坂北って、名前。なんか、マスターと親しげだし。

私は、少し離れて勝手に他のスタッフが進めてくれた水割りや、おつまみなど注文して腹に収めていく。

なんせ、今日はこの坂北のために

面接出来なかった訳だし・・・(本当は、道に迷って間に合わなかった私が悪いのだけどね)奢りみたいだし。

嬉しい。こんなお店に来たの初めてー。美味しい。コレ、イカの串刺し。

「お代わり!」だってさ、働いても働いてもお金が出ていくのよ。そうよ、でも、何故だか涙がでてくる。なんでって、思ったよ?でも、大好きな彼だし、私すごく愛されてるし・・・。「酒も、お代わり」


坂北さん。彼女そろそろ止めた方がいいんじゃない。マスターが、顔で合図をする。

グラスや皿が、これでもかというくらい並んでいる中で、泣きながら化粧がとれてグチャグチャになった顔の女がわめいている。

坂北は、近づいて行く間もなく女は口を押さえてトイレへ急いでいく。










 

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