都会の街
クースケ
第1話 都会に抱かれて
人々とすれ違う
私に向けられる目は当然無く
通り過ぎる。ある人はケータイを見るもの
ある人はお喋りするもの
多様な行動を取る大勢が集まる
都会で私は生きた心地がなく、
私に語りかけて来る声は信号の点滅音だった。この大勢の中で私は孤独をかんじた。
「あぁ、私はなんの為に生まれたんだろう」
変えるために努力をしたつもりだ、
でも、私の退屈な日々は変わらなくて、
私にこれ以上抗える術など到底なく。
ただ、時の流れに翻弄されて行くのみだった。
(そう、 憧れを抱いた あの時から)
東京に行けば全てが変わると思った。
どんなに不器用でも、どんなにどん臭くても、
東京という場所に宿る魔法の力で、
私も洗練された大人の女性になれると、、
いや、なれたらいいなと夢を見ていた。
でも、それは夢でしなかった。
そう私は悟った。
厳しい現実を目の当たりにし
涙を流した時もあった。
全てを捨てようとしたときもあった。
でもそんな私にもこの街に来て、よかったなと思う事がひとつだけある。
私にも彼氏ができたのだ、
二重瞼で、自信に充ちていて
私を、リードしてくれる理想の彼氏。都会てきで、話も面白くて、流行りの服を着こなしている。そう理想の彼氏だった。
彼、涼介が言った。僕は、優里の黒くて長い髪が好きなんだ。彼の指先は、私の長いストレートヘアを弄ぶ。人から、しかも男の人から褒められるのはとてもくすぐったい。
ある時
でも・・・赤い髪のショートヘアもキュートだよね。
彼は、クスッと笑っていった。一瞬、冗談かと思った・・・でも時折そんな言葉が出てくる。指先は、いつもの様に私の毛先を弄びながら。
容姿に自信がない私は、この長い髪で物語に出てくる綺麗な女の人になった気がしてた。
「わあ、大胆。どうしたの?優里」と会社の同期の仲間で、割と話が合う洋子と菜々美がはなしかけてくる。
いつもは黒くて長い髪形なのに、耳が見えるショートヘアになっていたから
「私ら、垢抜けない同好会から脱皮したな」とか、
「さては、彼氏ができたな?!」それらの言葉は、いつまでも変わらない自分達に比べて、ちょっとした嫉妬に思えて優里は勝ち誇った気がした。
ある時、涼介はいった。
優里の肌って、弾力があってすべすべしてて、赤ちゃんの肌みたいだね。まるで、魔法のように彼は言葉を使う。「でも、濃いめのシャドウも口紅もきっと、もっと似合うだろうね」
赤い髪にそめ、濃いめの青いアイシャドウと赤い口紅で彩られた頃。会社を辞め、彼女達とも疎遠になっていった。
彼、涼介は言った。ねぇ、一緒に住まない?!「離れている時間が、勿体ないよ。いつも、俺は優里と一緒に居たいんだ」「嬉しい。私も・・・」
3ヶ月が経った。嬉しいはずの彼との生活。そう、幸せ・・・。だよね。「おい、優里。お金は?」仕事を辞めてから、アルバイトの掛け持ちをしていた。彼は、働く様子もない。そう、つまりヒモだった。そんなことは、テレビの世界だけだと思っていた。
それでも、かれは優しい。
競馬で、勝った日は
食事は、豪華な回転寿司になる。そう愛されてるから、もう一人になりたくない。
ある日、涼介は言った。競馬仲間から、いい仕事先紹介されたんだ。(えっ、働いてくれるの?)
「その…エッチは、ないらしい。」「!!私を、売るの?!」鈍感な私でも言葉の意味するところはわかった。
「何、言ってるんだ。俺は、おまえを愛してるんだ。心は、繋がっているだろ」澄んだ目で、私をみつめる。
「何を、期待してるんだろう。バカみたい、いい加減わかるはずなのに」私、やっぱり変わってない。どん臭い。涙が、溢れだす。「ごめんな。やっぱりいい、断るわ。この仕事、お前にこんなこと頼むなんて・・・ごめんな。」
そう、私から望んだこと。彼が、好きだから・・・。キャバクラ《りんどう》と、書かれた名刺を持って、夕方と言うには早い繁華街に来ていた。
昨日までの、仕事とは180度違う。事務とか、コンビニとか、居酒屋に比べて給料が随分といい。彼との生活が、楽になる?
面接時間より随分早めに来たつもりだが、似たような看板が沢山あって、一つ一つ見ながら進む。これじゃあ。らちがあかない。
夜の街は、まだ眠っている。人通りが、まばらでとても他の人に聞く気にはなれない。
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