第11話 暴走の果て #2 

第11話 続き #2


[17]ー城の森 湖のそば 続き


〈ミレーネ姫と、護衛、侍女、クレアはいったん湖から少し離れて、大きな木の後ろに身を潜め、様子を見守る。木の陰から叫ぶミレーネ姫。〉


ミレーネ「お願い!ミリアム、返事をして!」


〈竜神は、一度、湖に入るが、また、苦しみ悶えて咆哮しながら出て来る。その勢いの凄まじさで突風が巻き起こる。〉


皆「きゃああああ」


〈皆が頭を抱えるそばで、風に向かって立ち尽くしているミレーネ姫。〉


ミレーネ(心の声)「〈首飾りを握りしめながら〉森が泣いている。痛みに耐えかねるように。森の命がどんどん奪われている……。どうして?一体、何が起こっているの?」


〈その時、ごーごーと風がうなる中、かすかにミレーネ姫の耳に届く声。〉


ミリアムの声「怖いよ……〈泣く〉」


〈ヨハンの泣き声も聞こえる。〉

        

ミリアムの声「ヨハンの嘘つき!魔法なんか、かからなかったじゃないか!」


ヨハンの声「だって、ボリスさんが言ったんだもん。このを湖に入れたら、素敵なことが起こるって!」


ミレーネ(心の声)「ボリス……。小瓶の絵の具……」


【姫の回想:夕方 城の中 ミリアム王子やヨハンともめていて捕らえられたボリスの姿。】


ミレーネ(心の声)「謀反の罪を白状して自害したボリス……。まさか!」


〈そこへコットンキャンディーが荒れ狂う風と闇の中、必死で姫の元へやってくる。〉


ミレーネ「ああ!コットンキャンディー、よく来てくれたわ。大変なことになってしまったの。神秘の木に隠した薬を覚えているわね。お願い、あれを持ってきて頂戴。どうしても今、必要なの!」


〈再び、神秘の木へ向かってはばたくコットンキャンディー。〉


ミレーネ「〈闇に向かって〉ミリアム、ヨハン、そのまま頑張るのよ!二人でしっかり励まし合って。絶対に助けてあげるから!」


〈怖気づいていた他の者たちが、ミレーネ姫の声にはっとする。〉


クレア「姫様にはあの子達の声が聞こえるのですか?」


ミレーネ「二人とも無事よ。はやく竜神様の怒りを鎮めなくては……」


クレア「〈突風に飛ばされそうになりながら立ち上がり〉ヨハン!ミリアム王子様!私達はここにいるから!」


護衛と侍女「王子様、ヨハン君、頑張って下さい!」


〈まるで狂った嵐のような状況の中、包みを咥え戻ってくるコットンキャンディー。受け取った包みを開け、暗闇の中、手探りでミレーネ姫が確かめる。


そこにある幾つかの丸薬は、薬師ゴーシャこと魔王グレラントが、失明していた姫の目を治すため、数か月前に調合したもの。つまりグレラントの魔法を解く解毒剤である。実際には丸薬を飲む振りだけをした姫が隠し持ち、神秘の木に預けていた。〉


ミレーネ「有難う、コットンキャンディー!」


コットンキャンディー「ピピ」


ミレーネ(心の声)「今、竜神様や森を苦しめているものが、からボリスに手渡された毒ならば、この薬で解毒出来るかも知れない……」


〈ミレーネ姫が荒れ狂っている湖と竜神に近づこうとする。〉


護衛「姫様、危険過ぎます」


侍女「何をされるおつもりですか?代わりに私が!」


ミレーネ「私にしか出来ないことです。皆はそこで待機を!」


〈ミレーネ姫は右手には首飾り、左手には丸薬の包みを持ち、高く掲げて叫ぶ。〉


ミレーネ「竜神様、お願い、これを飲んで下さい。竜神様のも見えますか?大切に守ってきました!」


〈首飾りについた竜神の忘珠である石が光りだし、熱を帯びてくる。姫に近づいてくる竜神。〉


皆「「「ああ、姫様!」」」


〈竜神が巻き起こす爆風に耐えるミレーネ姫。しかし、姫の手前で方向転換し、竜神は凄い異臭のするものをぐうえええっと湖に吐きだし、また苦しみながらいっそう突風を起こす。その風圧に飛ばされる姫。駆け寄る護衛、侍女、クレア。〉


皆「「「姫様、お怪我は!?」」」


ミレーネ「〈息を切らしながら〉大丈夫よ……」


〈また闇の中でひとしきり暴れている竜神。〉


ミレーネ(心の声)「竜神様、あなた様の忘れ珠がここにあるのです。どうか、この光を見つけて下さい。あ!もしかして、竜神様は目が見えなくなってしまっているの!?」

 

【ミレーネ姫の回想:14歳の自分 誕生日の夜


〔毒を盛られて高熱にうなされていた姫。そして、次の日の朝、失明していた姫。〕】


ミレーネ「目が見えなくなって暴れているのであれば、竜神様が忘れ珠に気付くことは無理だわ……。どうすればいい……?」


〈また、気持ち悪い吐しゃ物を湖に吐きだす竜神。〉


護衛「湖の水が、川に流れこみ、民の飲料水にもなっているのに、この凄まじい異臭……。城下町はどうなるのでしょうか……」


侍女「〈震えながら〉恐ろしい……現実とは思えません……」


【ミレーネ姫の回想:いつもの城下町の風景


〔城下町を流れる川で水遊びをしたり、野菜を洗ったりして楽しそうな民たちの姿。〕】


ミレーネ「神様、お母様!どうかお力を!」



[18]ー緑の国 城 門のあたり


松明たいまつをもった用心組の人々と一緒にアイラが走ってくる。〉


門番「どうしたのですか?」


用心組の一人「町を見回っていたら、この女人が納屋で縛られているのを見つけたのだ。この者の話では、今夜、城に刺客が忍び込んでいる可能性がある。その話を伝えに、とにかく城へ連れてきた」


アイラ「お願いします!どうか姫様にお目通りを!」


門番「それが、今夜、お城は別のことで大変なことになっている」


用心組「別のこととは?」


門番「森で何かが暴れている。近衛隊たちが森へ踏み込もうとしても、強風に妨げられて、前へ進めないと聞いた。月夜だったのが、あっという間に月は雲に隠れ、城はこの通り闇に包まれている。何とも不気味なことだ」


用心組「こんな夜中に森には人はいないのだろう?」


門番「それが姫様と、ミリアム王子様、その侍女や護衛が森にいるらしいとの噂でね。ああ、あと、白の国から来ている子どもも一緒だとか」


アイラ「ヨハンだわ!」


〈護衛と一緒に門番の近くに待機していたジュリアスがその声に気づく。〉


ジュリアス「アイラさん……?」


アイラ「ジュリアス様!」


ジュリアス「刺客に連れ去られたと聞きました。無事だったのですね。本当に良かった!」


〈ジュリアスとアイラの話し声に、今度は、群衆に紛れてアイラを探しにきていた偽コウモリが反応する。闇に紛れてアイラにジリジリと近づく偽コウモリ。〉


偽コウモリ(心の声)「こうなったら、顔を見られているアイラを始末しないと……」



[19]ー城の森 湖のそば


〈涙を流して祈るミレーネ姫。〉


ミレーネ「〈嵐の音にかき消されながら〉竜神様、これを飲んでください。そうすれば、苦しまなくて済みますから。ああ、どうしたら……!」


〈その姿を姫の肩の上で心配そうに見ていたコットンキャンディー。闇の中、湖の上で荒れ狂う巨大な生物と、姫の姿を交互に見て、意を決したように、姫の手に飛び移る。小さなくちばしでしっかり丸薬を掴む。〉


ミレーネ「コットンキャンディー、何をするつもりなの?」


〈ミレーネ姫と目が合い、頷くコットンキャンディー。その目が潤んでいる。そのまま姫の手から強風の中、湖へ飛び立っていく。〉


ミレーネ「待って!」


〈暗闇の中で苦しみ荒れ狂っている竜神。口を大きく開けて、悶えている。その赤い舌は炎のように、闇の中でも浮かび上がって見える。その舌を目指して、そのまま竜神の口の中へ飛び込んでいくコットンキャンディー。〉


ミレーネ「コットンキャンディー!!〈目を閉じる〉」


クレア「今、何が起こったのですか……〈固まる〉」


〈そのまま、コットンキャンディーを一気に飲みこむ竜神。一度、ぐうっと空に延びるように体をそらせ、次に体を回転すると、頭から湖の中へす――っと潜っていく。静寂が森に訪れる。


はっと我に帰ったミレーネ姫は湖のほとりへ走り、残りの丸薬を全て湖に投げ入れる。嵐がおさまり、その場に座り込んでしまった姫の元へ皆が走り寄ってくる。〉


皆「姫様!」


侍女「雲が切れ、月が出ました!」


〈放心状態で辺りを見回すミレーネ姫。涙が止まらなくなっている。〉


ミレーネ「〈独り言のように〉森が痙攣収縮していくのが止まったわ。でも、まだ全く精気を感じられない。とても冷え冷えとしている……。〈涙を拭き、侍女に〉あなたは、お城へ戻り、王様にこの件をお伝えして頂戴。お城や城下町を流れる川の水が汚染されていることを知らせ、民が決して口にしないよう、お触れ書きを出して欲しいとお願いするのよ」


侍女「分かりました。〈走っていく〉」


〈もう一度静まった湖面を見つめるミレーネ姫。再び涙が溢れ出す。〉


ミレーネ「ああ、コットンキャンディー……」

               


[20]ー城の門


〈声を頼りにアイラの至近距離まで来た偽コウモリ。雲から月が出て辺りが途端に明るくなる。〉


門番「おお、やっと月明かりが戻ったぞ!」


用心組の一人「森の辺りで吹きまくっていた強風も止んだようだ!」


〈その時、自分を狙いに、背後に近付いてきていた偽コウモリに気付くアイラ。〉


アイラ「ジュリアス様!〈振り返って指さし〉この男が刺客です!私を騙し、緑の国へ入り込んだ悪党です!」


〈一目散にその場を離れる偽コウモリ。〉


ジュリアス「皆、捕まえるぞ」


〈城下町へ通じる道に逃げる偽コウモリ。ジュリアスと何人かの護衛がその後を追う。〉


アイラ「〈門番と用心組の人に〉私は森へ行きます」

               

〈駆けだすアイラ。〉



[21]ー城の森 近く


〈門から走って来るアイラ。同じように城の本館から森へ向かうポリーに気付く。〉


アイラ「ポリー様!」


ポリー「アイラさん、なぜ、ここに!?良かったわ、無事だったのね!」


〈喜び合う二人。〉


ポリー「お城の客室にノエルさんがいます。そこで待っていて下さい。後から姫を連れていきます」


アイラ「ポリー様は森に向かわれようとしたのですよね?私も一緒に森へ行かせて下さい!」


ポリー「ヨハン君がいるからですね?」


アイラ「ポリー様も事情を御存知なのですか?」


ポリー「はい。これまで本当に辛かったと思います。急ぎましょう。さっきまでは森の中が嵐のようになってしまっていて、誰も森へ近づけなかったけれど、やっと強風も止みました。今なら入って行けそうです」


〈そこへ森から走り出てきたミリアム付きの侍女。〉


侍女「姫様やミリアム王子様が森にいらっしゃいます!湖に何か危険なものが入ったようです。私は王様に姫様からのお言付けをお伝えして参ります」


ポリー「〈アイラの手を取って〉さあ、早く!」


〈森へ駆け込んでいくポリーとアイラ。庭にいた数名の護衛達も後に続く。他の護衛は侍女とともに、城の本館へ駈けて行くなど、右往左往する様子。〉



[22]ー城下町 道


〈袋小路に追い詰められている刺客。しかしこれまでに数人の護衛が五蛇剣法でやられている。道に倒れている三人ほどの死体。〉


ジュリアス(心の声)「こちらの人数が多いとはいえ、向こうは五蛇剣法の達人だ。どうすれば、しとめられる?ここはとにかく、やるしかない……」


ジュリアス「皆で一斉にかかるぞ。それっ!」


〈戦いたいが、偽コウモリのあまりの強さにたじたじとなり、後ずさりする護衛達。〉


ジュリアス「腰が引けてはならぬ!」


〈一人で偽コウモリと向き合うジュリアス。〉


ジュリアス「覚悟!」


〈斬りつけていくが、あっさりと剣を落とされるジュリアス。〉


偽コウモリ「覚悟するのは、どっちだ!」


〈ジュリアスの頭上に振り上がる剣。そこへマリオの妹セナが率いる自警団が走り込む。間一髪でジュリアスに対する偽コウモリの一撃を防ぐセナ。〉


セナ「やあーー」


〈他の自警団の人々も応戦する中、セナはジュリアスに落ちていた剣を投げ、剣を再び手にしたジュリアスとセナは、二人で偽コウモリを挟み撃ちするような形で構える。息を合わせて、一気に前後から同時に斬る。ついに倒れる偽コウモリ。〉


セナ「〈ジュリアスに〉大丈夫ですか?」


ジュリアス「セナさん、よく駆けつけてくれました。有難う。お蔭で命拾いしました〈頭を下げる〉」


セナ「数時間前、王様が出された‟戦争前・緊急時における備え”のお触れ書きを見ました。万が一に備え、自警団の人達と行動を共にしていたのです。間に合って何よりでした。〈やられた三名の護衛の傷跡を見て〉やっぱり、五蛇剣法……。あの黒魔術の奴らの一味なのですね。ジュリアス殿、私にも何が起こっているのか話して下さい。お兄ちゃんの憎き仇……。私にも知る権利はあると思います」


〈他の自警団や護衛が遺体を片付けている現場から少し離れた所で、セナと向き合うジュリアス。〉


ジュリアス「長い話になります……。この件はセナさんに深く謝らなければならないことでもあるのです。本当に申し訳ないことをしました。謝って済むような簡単な問題ではないのですが、マリオを失ったセナさんに真実を隠し続けることは、もう、これ以上出来ません。ただ、くれぐれも誰にも口外しないと約束して下さい」


セナ「ジュリアス様……」



[23]ー城の森


クレア「ヨハン達はどこに?〈耳を澄ませて〉あれは……何の音ですか?」


〈湖の回りから、悲鳴のようなものが聞こえ、少しずつ何かがきしむような音もする。〉


ミレーネ(心の声)「〈身震いをして〉湖の周りの木々は、他よりも毒の水を吸い上げてしまったはず。それが浄化されるのに、どのぐらい時間がかかるの?湖が丸薬で浄化出来たとしても、一度弱ってしまった木の根元は、もう元へは戻らないのかも知れない……」


〈そこへ走ってくるポリーとアイラ、何人かの護衛達。〉


ポリー「ミレーネ!」


アイラ「姫様!」


ミレーネ「ああ、アイラ。本当にアイラなのね〈抱き合う〉」


護衛の一人「〈あらためて気づき〉アイラって、まさか、アイラ殿ですか?」


ミレーネ「〈毅然きぜんとして〉詳しいことは後で説明します。皆、とにかく、まず、ミリアム王子とヨハン君を探すのよ。この近くにいるはずだから。湖の周りの木が、毒にやられて根元が腐りかけている恐れがあります。くれぐれも気をつけて!」


ポリー「毒?毒なの?湖に入れられたものって?」


ミレーネ「ええ。でも、話は後よ。今は、何より二人を!」


ポリー「分かった!」


皆「ミリアム王子様!ヨハン君!」

               

〈湖のそばの木の上にいる二人。〉


ヨハンの声「どうする?木から下りたいけれど……」


ミリアムの声「だめだよ。また、さっきのが来るかもしれない。ここで皆が助けに来てくれるのを待とうよ」

                 

ミレーネ「〈その声をかすかに聞き分け〉二人は木の上にいますわ!」


〈声がした木の方へ走ろうとする姫と一行。また悲鳴のように何かが軋む音が聞こえる。皆が足を止める。〉


ポリー「何、この音?」

              

〈ミレーネ姫の目にだけ、木の精霊が、木からふわっと立ちのぼり、涙を流し、消える姿がぼんやり見える。今度は、湖から、水の精霊がふわっと出て来て、消える姿。次から次へと、ある意味、幻想的に繰り広げられる光景を感じ取る姫。〉


ミレーネ(心の声)「夜の森の中でも、私には分かる。木の精霊も水の精霊も次々と去っていく。〈首飾りを握って〉何て、哀しい光景なの……」


〈その時、一本の木がぐらっと揺れ、湖の端にまたがるような形で倒れる。皆、焦って、いったんその場から逃げる。〉


護衛「姫様、大丈夫ですか?」


ミレーネ「ミリアム達がいた木ではないですわね?」


〈急いで倒れた木を確認する護衛。〉


護衛「ここには、いらっしゃらないようです。まだ、別の木の上でご無事かと」


〈少し安堵する一行。〉


ミレーネ「ミリアム!大きな声で返事をして。どこにいるの!」


ミリアム王子「ここだよ」


〈ヨハンと二人で枝をゆする。〉


クレア「あの木です!」


〈その木の周りで、木の精霊と水の精霊が現れて、また手を取り合い、ふわっと消えていく姿がミレーネ姫に見えてしまう。〉


ミレーネ「だめよ。そんなに枝をゆすっては!危ないのよ。ああ!」


〈ついに二人の木が傾き、湖に倒れていく。〉


ミレーネ「ミリアム!」


クレアとアイラ「ヨハン!」


ポリー「神様!」


〈湖に先に倒れた木の上に、次の木が倒れ引っ掛かった状態になる。湖面近くで何とか枝にしがみついている二人。〉


ミレーネ「そうよ、そのまま我慢するのよ!誰か、二人を」


護衛二人「「助けに参ります!」」


〈護衛二人が湖に飛び込むと、突然、湖面が下から急にせり上がり、竜神が現れ、護衛二人を尾で跳ね飛ばし湖から投げ出してしまう。再び、湖底から現れた竜神は怒っている様子。また、そのまま中に潜っていく。〉


ポリー「これが竜神様……」


ミレーネ「〈独り言のように〉また、私達がひどいことをするために湖に侵入したと思いこんでしまわれたのね。竜神様が人間に不信感を抱いてしまっている……」


ポリー「ミリアム、ヨハン!木の幹に上がった方がいい!上がれば、幹をつたって、こちらへ来れるはず。ミリアム、私と遊んでいたことを思い出して!」


〈必死でよじのぼろうとするミリアム。〉


クレア「ヨハンも真似するのよ。さあ、頑張って」


アイラ「あの子は寒い白の国で外遊びなど、ほとんどしたことがないのです。ああ、ヨハン、どうしたら……」


〈ヨハンは登れず、ただ、枝にしがみついたままでいる。〉


アイラ「姫様、私に助けに行かせて下さい。あの子が力尽きてしまいます」


ミレーネ「でも、誰かが湖に入れば、また、竜神様がお怒りになるわ。今、ミリアムが何とか幹の上に上がろうとしています。まずは、このまま静かにして、ミリアムを助けなければ!」


アイラ「……はい」


〈心配そうに見つめるアイラ。その手を握るクレア。〉


クレア「あの子は頑張り屋です。きっとここでも頑張ってくれるはず。そして、本当の母親のもとへ帰るのです」


アイラ「クレア様……」


クレア「あんないい子を、神様がお見捨てになるはずがありません。あなたには本当に申し訳ないことをしてしまいました……」


〈クレアの手を、ぎゅっと握り返すアイラ。〉



#3へ続く

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