第7話 生徒会長、参戦
「待ってくださいベルナデッタさん!」
「いいえ待ちませんわ! いますぐ白状なさい。この学院で起きていることの全てを! 黒幕は誰なのです?!」
目的の五階にたどり着いたところで、シホは彼女に追い付かれた。尖塔の構造上、後から迫る人間がどんなに速くとも、追撃することは難しいはずだが、ベルナデッタはそれを上階へ上がる階段を無視して床板を破壊して飛び上がるという荒業で可能にした。
彼女の両手には、荒業を成した力の象徴が白銀に輝いている。
「
白銀が赤い熱を放つ。シホは慌てて進路を変えてそれを避ける。イオリア、ユカも各々に身を避けている。
「それとも」
ベルナデッタは『炎の拳』以外の『力ある言葉』を使う様子がない。シホのように複数の状況を生み出す魔法の使い分けはできないのかもしれない。ただ、例えそうだとしても、彼女の魔法は十分な破壊力を宿している。まるで彼女の精神的な高揚に比例するように魔法そのものの破壊力も上がっている。生み出した炎で焼く、というよりも、生み出した火球を対象にぶつけて破壊する、という魔法の性質もそうだが、
彼女は、強い。
適当にあしらうことはできない。
「あなた自身が全ての黒幕だと、この場で告白してもよろしくってよ?」
「わたしは……」
敵意を剥き出しにするベルナデッタをどう諌めるかを考え、口を開いた時、シホの視界の端で影が動いた。
「凍土を渡る風」
『力ある言葉』が紡がれ、無風のはずの尖塔内に冷たい風が吹き付けた。その風に乗って高速に移動したのはイオリアだ。彼の持つ魔剣グラスの力が風を生み、彼に常人を超える速さの身のこなしを与えた。一瞬にしてベルナデッタとの距離を詰めたイオリアは、深く濃い紺青色の刃を持つ短刀を振るった。
ベルナデッタの赤いドレスが翻り、脚が空を切る。イオリアはギリギリで蹴り脚の下を潜り抜けて避けた。
「イオリア!」
「ここはぼくが引き受けます。お先に! 姉さんをお願いします!」
シホは躊躇なく頷いた。イオリアの判断はここでは正しい。三人が足止めされる必要はないし、イオリアの実力は、信じていい。
「お待ちなさい、ミホ・ナカハワ! ご説明なさい!」
「ごめんなさい、いまは助けたい人がいるんです! でも、必ずご説明します!」
シホは深々と頭を下げた。額が膝に付く程深々と。
呆気に取られる気配がベルナデッタにあった。
言葉が返る前に、シホは振り向いて走り出した。背後でベルナデッタとイオリアが争い始める音は聞こえなかった。
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