第7話
そして裁判が終わった。
「ヨナキ。君が開幕早々ジェームズ・A・ガーフィールドはジャック・ザ・リッパーよりシモ・ヘイヘよりノストラダムスより呂布奉先より偉大な英雄ですと言い始めたのには驚いたよ。裁判員も弁護士もみんな知らないって顔してた」
「でも裁判長は知っていたわ」
「にしても第二十代大統領の生涯を語り終えた後、君と一緒に裁判員全員が星条旗よ永遠なれを合唱していたのにはもっと驚いたよ」
「弁護士サイドは歌ってくれなかったわ。愛国心にかけるアメリカ人ね。共産主義国に移民すべきだわ」
そんな話をしながら二人がストリートを歩いていると車から男が降りてきた。彼は黙ってヨナキに向けて銃を向けると。
引き金を引く前にブラッドに撃たれた。
「うっ!ぐああ!!」
「警官の僕より月収があるからって発売したばかりのヒュンダイの新モデルにすぐに買い替えるのはやめた方がいい。裁判所に同じのが駐車してあったから君のだとすぐにわかった」
「ブラッド。貴方車は?」
「十年前に買ったホンダ。おじさんがアメリカ国内の工場で働いている。やはり自動車はアメリカ製に限る」
「く、くそう!おまえがっ!お前が裁判で俺の先祖が大統領殺しだなんて言わなければ勝っていたのに!!貴様のせいで俺の弁護士人生はおしまいだっ!!」
「普段貴方達弁護士がやっていることをまねしただけよ。別に弁護士がやることを医者がやってはいけないっていう法律はない。そもそも貴方達は被害者が容疑者に殺されたと墓場から連れてきて証言させろとレイプ被害者にレイプ犯の前まで連れきてこの男にレイプされたと言えと毎日言うのが仕事でしょ。自分がやられたのはどんな気持ち?」
「俺が大統領を殺したわけじゃあないっ!!」
「僕のお爺さんはベトナムに行っている。その前はナチスと戦ってる。南北戦争では惜しくも南側だ。もちろん独立戦争にも参加した。だけど大統領を殺した男は一人もいない。残念ながらね」
「さらに付け加えるなら裁判官のおばあさまが第二十代大統領の子孫に当たる女性だったこと。これが決めてね。おそらく幼少の頃、裁判長は非業の死を遂げた大統領の最後をベッドで眠る前に何度も聞かされたはず。そして今回ようやく先祖の仇討ちを無事執る事ができたってわけ」
「めでたし。めでたし?」
「今頃裁判長はニュージーランドにある墓所に向かってるんじゃないの。アメリカの法律に乗っ取って、貴方の復讐を立派に遂げて見せましたって」
「うう、畜生・・・」
「ほら。立てっ!!お前には弁護士を呼ぶ権利があるぞっ!!ってお前が弁護士か」
「待ってブラッド。その前に彼を眼の前のナイチンゲール・クリニックに運び込んで」
「どうして?」
「1881年と違って、私が勤める病院には消毒用の石鹸。医療用ゴム手袋。銃弾を探す為のX線装置。輸血。各種抗生物質があるのよ。その他大量の医療設備と共にね」
「そうだな。第一級殺人犯にも手術を受ける権利があるとはアメリカはなんて素晴らしい国なんだろうな」
「そうそう。弁護士さん。治療費は請求するから」
「治療費は払う・・・だが一つだけ教えてくれないか?」
「何かしら?」
「そこの警官。なぜ俺がヒュンダイの車に乗っているのが。いや。俺がその女に狙いを定めて銃を構えたのがわかったんだ?」
ブラッドフォード警部はある場所を指さした。そこにはカーブミラーがあった。
「1881年にはワシントンには固定電話がたった二台しかなかったそうだ」
「でも今は車社会。自動車と、歩行者の安全を守るために色んなものがあるのよ。アスファルトの道路。信号機」
「そしてあのカーブミラーだ」
「支払いは、クレジットでいいか?」
「まいどあり」
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