第2話
数日後。
ブラッドフォード警部は怪我も病気もしてもいないのにも関わらずその建物を訪れていた。現在勤務時間中のある人物と会う為である。
「やあヨナキ。仕事は順調かい?」
「ブラッド。貴方物凄く暇そうね。そこのストレッチャーに倒れているフットボール部員をソファーに寝かせるのを手伝ってくれるかしら?」
「お安いご用さ」
ブラッドフォード警部は笑顔でガタイのよいフットボール部員をソファーに移す作業を手伝った。
「それで、彼は一体どんな病気なんだい?」
少しだけ興味があったので聞いてみた。見たところ筋肉質で体格もよく、病弱には見えない。とするとやはりこの年齢の若者に特有のドラッグの過剰摂取であろうか。
別に珍しい話ではないだろう。麻薬なんてものはやろうと思えば徒歩で売人達が国境を越えてこのアメリカまで運んで来るものなのだ。
となれば医者ではなく警部ではなく俺の出番ということになる。イイトコロみせなくっちゃな。
ブラッドフォード警部はなんだか張り切って仕事をする気になった。
「たたの熱中症患者です」
「あ、そうなんだ」
ブラッドフォード警部は急にやる気がなくなってくるのが実感できた。
「日本製の質の悪いスポーツドラマを見たようです。なんでも元カミカゼファイターの教師が非科学的な精神論を生徒達に押し付ける内容らしくて。やはりスポーツの練習中や試合中の水分補給は必須でしょう」
「そ、そうたね」
ブラッドフォード警部は激しく同意するのであった。
「ところでどうしてこのフットボール部員の学生を廊下のソファーに寝かせておくんだい?」
「例の新型感染症の影響で病室が逼迫しているのよ。本当は彼をトイレに寝かせて起きたいくらいね。でもそれだと逆に不衛生で病院内に別の細菌を撒き散らす可能性が高まるからソファーで妥協するわ。少なくとも処置室内のベッドは開けておきたいし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます