作戦開始

 作戦は遂行中。まず駅から学校までは心配なさそう。セレクト・ファイブも、もし襲われた時にどうするのかの手順をあれこれ考えてくれてた。やはり問題は駅から家まで。学校の近くの駅はまだ賑やかだけど、家に近い方は閑散としてるのよね。


 無人駅だし、駅の周囲だって自転車置き場があるぐらいでなんにも無いところなのよね。乗降客も朝はさすがにそれなりにいるけど、エミが帰る頃はエミ一人ってこともあるぐらいだもの。


 それとだけど、お父ちゃんは無頓着だったけど、エミはどうも胡散臭そうな奴がいる気がするのよね。あんなの見たことないし、こんな駅の周辺に屯するのも妙だよ。あれってエミの帰宅ルートの確認の気がしてならないのよ。


 危ないと言えばクルマを使っても帰り道は危ないと思う。駅周辺も閑散としてるけど、家に向かう途中でホントに誰にも見られないところがあるのよね。そもそも道だって突当りがエミの家で終りだから、通るのはお客さんのクルマぐらいしかないもの。



 事件は二日後に早くも起きた。帰宅する時には学校を出る時に連絡して、電車の時刻に合わせてクルマで迎えに来てくれる手はずなんだけど、


「今日はお父ちゃんがどうしても行けないから、初音さんに行ってもらうから」


 初音叔母ちゃんで大丈夫かと思ったけど、


「心配ないよ」


 駅に着いたら初音叔母ちゃんがいたからクルマに乗り込んだんだけど、その途端に電話でどこかで連絡を取る男の姿が目に入ったのよね。いやな感じがしたけど、


「ところで、この木刀は」

「護身用」


 初音叔母ちゃんも話を聞いてるから用心はしてくれてるみたいだけど、相手は一人や二人じゃないのよね。大伴先輩を襲った時にも四人ぐらいはいたって言うもの。木刀一本でなんとかなるか不安は不安。


「初音叔母ちゃん、広次郎叔父ちゃんのところに行った方が安全だよ」

「そんな遠回りする必要はないじゃない」


 そういうけど、もし途中で待ち伏せされたら女二人だよ。そしたら途中で角材が転がってたんだ。


「初音叔母ちゃん、引き返そう。あれヤバいよ」

「そうね、どけないと通れないものね」

「そうじゃなくて・・・」


 そう思った途端だった。近くの林から変な連中がゾロゾロと出て来て、後ろを塞いでしまったんだ。もうエミは震えそうだったけど、


「エミちゃん、下りたら一目散に家に向かって走るんだよ」

「初音叔母ちゃんは?」


 そしたら初音叔母ちゃんの顔が別人かと思うほど怖い顔になっていて、


「つべこべ言わずに走る」


 ドアを開ける同時にエミはダッシュした。恥しかったけどスカートをまくり上げてダッシュした。これもそうしろと初音叔母ちゃんに言われたから。後ろから、


「追いかけろ」


 こんな怒号が聞こえたけど、とにかく家に着かないと助けを呼べないから必死だった。全速力で家に帰りお母ちゃんに、


「変な奴が出て来て、初音叔母ちゃんが襲われてる」


 それなのにお母ちゃんは平気な顔をして、


「初音さんなら心配ないから」


 どういうこと。家に帰ってしばらくしたら初音叔母ちゃんも帰って来て、


「エミちゃん、だいじょうぶだった?」


 いつもの優しい初音叔母ちゃんに戻っていたし、お母ちゃんも平気。夜はお父ちゃんにも言ったけど、


「もう手をださんやろ」


 心配になってコトリさんにも連絡したんだけど、


「そうか手を出して来たか。でも、それやったら結果オーライや」


 なになに、なにがどうなってるの。


「次はサヨコさんからの呼び出しになるで」


 それから二日間はなにもなかったし、駅の胡散臭い連中も姿を消したけど、


「犯人はサヨコだけであきらめたんじゃ」

「焦るな、焦るな、コトリの読みを信じなさい」

「でも、全部推測じゃ」


 とにかく不安と焦燥感がごちゃ混ぜになってるんだけど、


「あの手の連中が考えることは手に取るようにわかるんよ。ほいでも今は相手が動いてくれんことには、どうしようもあらへん。警察だって必死で探してるやろから、あっちも焦っとるで」


 サヨコ頑張って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る