第16話 生徒会長のご推薦

 結局シエンタルートをどうするかの結論は出なかった、だって、弟相手に攻略って出来るものなの?私のハーレムルートを目指すのだったら、要らなくないですかね。


 そして、あっという間に、入学式から二週間が過ぎ、生徒会選挙の立候補が始まりました。


 自薦、推薦、どちらも可能で受付期間は一週間、その後の一週間で立候補者達のアピールがあり、最終日は大講堂で最終演説と選挙開票。


 主に二年生が中心なんだけど、今年はアルファード様が立候補するんだよね。

 そして確かそれを、カルーアが陰から支えるイベントがあったはず!


 そうよ、何も無理にハーレムルートにしなくても、正規のアルファードルートでもいいんじゃないのかな? そうしたら、弟のシエンタはそのままでいいよね。


 放課後に、立候補者達の名前が一階の廊下に貼りだされ、人だかりが出来ていたので、私も見に行こうとしたら、アリシア様が興奮気味に近づいてきた。


「シェリー様、生徒会長に推薦されてますわ、推薦人はクラウン様、アルファード様、ルドルフ様、アドウィル様、カルーア様なんですのよ」


 なんですって! そんな馬鹿な! なんで、私が立候補? しかも生徒会長ってなんの嫌がらせなんですか?


 人込みをかき分けていくと、確かに、生徒会長の立候補者の名前にシェリー・ハロウィンと書かれている、な、なんで、……そんな罠があるなんて。


 わなわなとしている私に気付くことなく、アリシア様は上機嫌で答えてくれる。


「シェリー様、私も微力ながら、応援させていただきますわ、ええ、シェリー様とアルファード様は、もう絶対に応援いたしますから!!」


 私の手を取り、ぶんぶんと握手をするアリシア様、なんでそんなに嬉しそうなの、まさか、私の破滅を望んでいるとかないですよね、泣くよ。


 クラウン様とアルファード様がお二人揃ってこっちに来る。


「やあ。シェリー、私の後の生徒会長には君を推薦しておいたからね」

「な、なんで、私が推薦されるのですか、しかも、生徒会長なんて、無理です、酷いです」


 もう、涙目でクラウン様に訴えます。


「現役の生徒会役員は、必ず誰かを推薦しないといけないからね」

 にっこり笑っても、嫌なものは嫌なんです。


「でしたら、アルファード様でよろしかったのではないですか、何故、わたくしなのでしょうか?」


 こらえていましたが、涙が落ちてしまいました、どうして、みな私を追い込もうとするの? アルファード様を差し置いて、私が生徒会長だなんて、誰も納得などしないのに、なんで、そんなに嫌われなければいけないのかな。


「なぜ、そんな悲しそうに泣いているの? 泣かないで、大丈夫だから」

 何も言葉にならず、嫌々をするように首を振るしか出来ない私の顔を挟み込むようにして、指先で涙をぬぐう、クラウン様。


「アルファードは、副会長に立候補しているから、私が推薦するわけにはいかなかったんだよ、会長の私は会長を推薦しないといけないからね」


 アルファード様が、副会長に立候補?

 そっと私の顔から、手を離し、アルファード様と入れ替わるクラウン様。


「シェリー、私が君を支えるから、一緒にアストリア王立学園の生徒会として皆の代表となって、誰もが楽しい学園生活を送れるようにしていきたい」


「なぜ、私が生徒会長なのでしょうか、アルファード様を支えるのが本来の私の役割だと思います、……」


 まだ、グスグスと鼻をすすっているような状態ですが、逃げることも出来ず、泣いている顔を見られたくなくて、俯いてしまいました。


 シェリー、なぜ、私が近づくとそうやって、顔を隠してしまうのだろう、そんなに私は頼り無いのか、……義兄様と違って。


 そう思うと、自分が情けなくて、歯がゆくて、少しでも認めて欲しくて、こんなに大切に想ってることを伝えたくて、俯いたままのシェリーをほんの少しだけ自分に引き寄せて、髪を撫でる。


 柔らかくて、艶やかで、とてもいい匂いがして、抱き締めたくなるけど、ぐっと我慢する、ごめんね、シェリー、君が泣いているのに、こんな近くにいて、触れていられることが堪らなく嬉しいと感じてる。


 後ろでご令嬢方が騒いでいるが、もう少しだけこの髪に触れていたい。


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