第14話 クラウン様は手加減無し

 早速、カルーアとシエンタに相談したら、二人とも一緒に登校してくれる事になったんだ。


 シエンタとは、入学してからバタバタしてしまい、あまり話せていなかったけど、入学式のアルファード様の突然の宣言から、ルドルフの立候補、四人に囲まれての登校はやはり、目立っていたらしく、心配してくれてたみたいで、今は、シエンタの部屋でお茶をいただきながら、いろいろと情報交換をしているの。


「本当に、もう、驚く事ばかりでついていけないのよ」

「姉さんは、相変わらず凄い人気なんだね」


 クスクス笑っている弟を見ていると、つい憎まれ口を聞いてしまう。


「人気者なのは、シエンタのほうでしょう、上級生のお姉様達から、もう手紙をいただいてるってカシスから聞いてるわよ」


「確かに手紙は貰ったけどね、単なるお茶のお誘いだし、姉さんみたいに結婚を考えてるような相手じゃないから」


「だって、私の場合は親同士でとっとと決めてしまったのですもの」


「でも、アルファード様のことは好きなんでしょう? 

いつも未来の王妃にふさわしくって努力してるしね」


 姉さん程、王妃にふさわしい人なんていないよ、気品があって、美しく、聡明で、思い遣りがあって。


 でも、こんなふうに子供っぽいところもあるなんて、誰も知らないだろうなと、少しふてくされたような顔を見ると、頬が緩んでしまう。


「もう、またバカにしてるんでしょう、どうせ王妃になんてふさわしく無いのは分かってますから」


「バカになんかしてないし、ご令嬢方のお手本、シェリー・ハロウィン、アストリアのハニーローズ、でしょう?」


「……そんなの、本当の私じゃないもの……アルファード様にふさわしいのは私じゃないわ」


 なんで、そんな寂しそうな顔をするんだよ、姉さんは誰よりも努力してきたじゃないか、ダンスも礼儀作法も法律だって勉強して、それなのに、あの男は自分の恵まれた身分だけで姉さんの婚約者だし、今だって、わざわざ登校する時に姉さんと一緒だなんて、まるで自分の物だと見せつけるみたいで、気分が悪いんだからな。


 ルドルフもアドウィルも、姉さんにベタベタしてるし、本当は俺が一番守ってあげれるのに、姉さんの好きなものも嫌いなものも全部知ってる、こんな寂しそうな笑顔しか見れないなら、婚約なんか解消すればいいのに、結婚なんかしなくたって、いや、いっそしなければ、俺が一生守ってあげれるから。


「大丈夫だよ、姉さん、俺も明日から一緒に行くから、困ったことがあったら言ってね」


「ふふ、ありがとう、シエンタ、やっぱり相談して良かったわ、いつだって頼れる頼もしい弟だものね」


「そうだね、だから任せておいてよ」


 やっと笑った、やっぱり姉さんは笑顔が一番いいよ、たとえ王族だって姉さんを泣かすような真似をしたら、許さないから。


 カルーアも加わり、大人数での登校も何となく慣れてきた頃、いつものようにロイヤルの寮の前に皆が揃ったので、登校しようとすると、二人の女子がこちらをチラチラと見ているのに気が付いた。


 まあ、見られるのはいつものことなんだけど、いつもはもっと遠巻きにされていて、なかなか近くにいないんだよね。


「おはようございます、アリシア様、フェリミエーヌ様、よろしかったら一緒に参りませんか?」


 にっこりとシェリーが声をかけると、驚いたように目を見開いている。


「お、おはようございます、シェリー様、私達も一緒でよろしいのですか?」


「もちろんですわ、同じクラスですし、私は皆様ともっと仲良くなりたいんですけれど、声をかけることが今まで出来ませんでしたから、仲良くして下さると嬉しいですわ」


 男達に囲まれてなかったら、私だってお友達ぐらい出来たはずなんだから。


「きっと、クラスでもこいつらに囲まれてるのでしょう、可哀そうなシェリー、アルファード達も、もう少し気遣いがあればいいんだけどね、ごめんね、気が利かない弟で、縛りつけるのが愛情じゃないんだけどね」


 さすが、クラウン様、あっという間にご令嬢方の目がハートになってるし。

そして、さり気なく私をエスコートしながら、ご令嬢お二人もご自分の側に置かれて、たった二歳しか違わないのに、このスマートさを見習えばいいのにね。


「どうしたの、シェリー、そんなに見つめられるとドキドキしちゃうよ、アルファードとの婚約を解消する気になったとか?」


「クラウン義兄様、私は婚約を解消したりしませんよ!」


「婚約を維持するか、解消するかはシェリーに任せるんじゃなかったっけ? アルファード、言っただろう、自分から最大のアドバンテージを手放したのだから、後悔しても知らないよって、もし私がシェリーの婚約者だったら、近づく男なんか許さないけどね」


 そう言いながら、私の手を取り、口づけをするクラウン様、ご令嬢お二人がキャーキャーされて、顔を赤くして……、なんで、アルファード様までクラウン様に見つめられて顔を赤くしてますの?


「あの、クラウン様、少し距離が近づきすぎるような気がするのですが……」


「だって、私だけクラスが違うのだから、少しぐらいアピールしておかないとね、せっかくアルファードがチャンスをくれたのだから、」


 なんで、さっきからクラウン様はアルファード様をチラチラ見ていらっしゃるのかしら? なんか、アルファード様も顔を赤くしてそっぽ向いてしまってるし、……これって、やっぱり、私をダシにしての二人のBLルートなの??   ええええっ、   いいかも!!


 ハーレムルートに見せかけての隠れBLルート、いやあああ、クラウン様 似合いすぎ!


 さっきから、ずっとシェリーは、クラウン義兄様の顔を見てる……、クラウン義兄様だけを。


 いつも控えめだった義兄様が、あんなに積極的になるなんて……、あんな風に俺に挑発的な態度を取るなんて思ってもいなかったから、つい、ムッとなって顔を背けてしまったけど、例え自慢の義兄様でもシェリーだけは譲れないから、絶対に!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る