感情

 パチパチと焚き火から音がする。その明かりは木に寄りかかって眠るエゼルの顔をほんのりと照らしている。長い睫毛がよく目立つ。

 今日はここで野宿となり、火の用意をして、夕食も済ませた。あとは寝るだけなのだが、今日の出来事が思い出されて、なかなか寝つけなかった。

 うまくやろうと意識するほど、いつも失敗してしまう。だから今日だってたくさん失態を犯してしまった。頼んでいるのも案内するのもこっちだというのに。

 エゼルが気遣ってくれてここまで来ることができたといっても過言ではないだろう。いたたまれないし、申し訳ない。

 けれどその気遣いを思い出すと、自然と顔が綻ぶのだ。胸に心地よい温かさが広がる。

 だがこの感情は封じ込めなければいけない。そんな資格はないうえに、それが命取りになることだってあるのだから。

 焚火の枝がパチッと爆ぜて、火の粉が舞う。暗闇で光るそれは、エゼルの顔を一瞬、覆い隠した。

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