小瓶
かさっと巻物を開く音が、地下室に響く。
「災いの魂 世に生まれし時 金の矢をつがえし銀の青年 魂を浄化することあらん」
小さい声で古文書を口に出して読んでみる。挿絵に一房の黒髪を持つハーフエルフが、金の矢を構える様子が描かれていた。
この人をなんとしても見つけなければならない。しかし古文書には様々な伝承が記されているのみで、手がかりは一つとして書かれていなかった。
しかし前に主であるソロンに連れられて行った美しい花畑で、エルフを見かけたことがある。ハーフエルフか定かではないが、まずそのエルフからを探ってみるほかに手はない。
本棚を離れ、魔法小瓶の棚を順繰りに見ていく。そこには様々な色の気体が入った透明の小瓶が綺麗に並んでいた。
この小瓶は、蓋を開けたり割るなどして中に入った気体を外に出して使用する。気体の領域内に入ったものに魔法の効果が表れる。
「あった……」
探していたのは瞬間移動の小瓶だ。紫色の気体が中に詰まっている。この小瓶で間違いないだろう。
残念ながら一つしかないので、帰りに使うことはできない。だがもとよりソロンの支配下から出られさえすればあとはどうにでもなるのだ。
ふとその隣に目を向けると、獣を惹き付ける小瓶が視界に入った。もう一本くらいなら持って行ける。ポケットに入れておいた。
これで準備は整った。あとはソロンが感づく前に地下室を去るだけ。
深呼吸すると、瞬間移動の小瓶を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます