第261話 まばゆい閃光

黒岩椿が『天眼てんげん』で捉えた新たなドラゴンのステータス。それは、ドラゴン討伐のための簡易連合軍を震撼させた。


「レ……レベル75!?」


「なんやて!?」


「嘘だろ!?」


「化け物を超えた化け物!!!」


大和柳太郎、黄河南天、赤城松矢、そしてオスマンサスが、愕然と身を震わせている。そして、ラクティフローラとシャクヤは、学んできた歴史の上から、絶望の表情で呟いていた。


「そんな……そもそもなぜドラゴンが人里に……しかも金色なんて……神話に出てくる存在なのに……」


「神の……龍……」


そして、ついに、合わせて48体のドラゴンを引き連れ、黄金のドラゴンが村の上空に到着した。


先程までのシルバードラゴンにちなみ、これを『ゴールドドラゴン』と仮称しよう。


天高く昇る太陽に照らされたその絢爛たる姿は、鱗の一つ一つから眩い光を散乱させ、黄金色の光の粒を辺りに散りばめ、神々しく煌めいていた。


信仰心が無くとも、一目見ただけで、それを神と崇め、服従してしまいそうになる荘厳さを持っている。


しかも、シルバードラゴンとは違い、ゴールドドラゴンは比較的、彼らに近い位置で空中に静止している。上空を旋回しながら様子を窺う必要が無いようだ。それは、まるで王者の風格と言わんばかりの落ち着きと不動なる強さを並み居る面々に実感させた。


こうした外見にしても、威厳ある振る舞いにしても、内側から発する猛烈な気配にしても、いずれを取っても、この場に集った全メンバーの足を竦ませるのに十分であった。


しかも、その周囲を羽ばたくドラゴンたちも、いずれも高レベルであり、決して侮れる存在ではない。それを黒岩椿が正確に測定し、報告した。


「他のヤツらは……さっきのヤツほどじゃないけど……レベル48、49、55、54、48、49、53、51、53、47、46、56、52、59……」


「もうええ!ええねん!なんとなく気配でわかるわ!」


「南天さん!椿に当たるのは可哀想だよ!」


「あ、いや、すまん!」


思わず苛立ってしまった黄河南天を赤城松矢がたしなめる。豪胆なタイプの黄河南天ですら動揺しているのだ。


「ぜ……前代未聞でございますわ……ドラゴンが群れで人里に現れるなど……」


「長生きしているワタクシも……聞いたことがありませぬ」


シャクヤとストリクスも震えながら感想を漏らす。そして、ベイローレルはドラゴンを睨みつけながら、真剣な表情でラクティフローラに告げた。


「ラクティ、ピアニーとみんなを連れて逃げるんだ……」


「で、でも……クルマだって壊れちゃったし、そもそもクルマでも逃げ切れる相手じゃないわ……」


だが、王女はそれを否定した。逃げることは不可能。そう判断したのだ。とはいえ、頭脳明晰な彼女であっても、現状に対する打開策は全く見つからない。


ここで、ドラゴンからのブレスを警戒する大和柳太郎が先頭に立った。


しかし、その声は震えている。


「すみません……アレに一斉に火を噴かれたら、ぼくでも反射しきれません……」


49体のドラゴンに包囲されてしまったのだ。いくら彼の『シフト延斬えんざん』があっても、一度にブレスを発射された場合、空間の入れ替えが間に合うはずもない。


彼の懸念を知ってか知らずか、ここでゴールドドラゴンが大口を開けた。


「くっ!来る!!」


ドラゴンの口内に熱反応を感じた赤城松矢が叫んだ。


大和柳太郎は、既に前方の空間に切り込みを作っており、空間を反転させることで、ブレスを反射する構えだ。いったいどんなブレス攻撃が来るのかと、ドラゴンの口を凝視した。


ところが――



キュインッ!!!!!



「「えっ……」」


この場の誰一人、反応できなかった。


速すぎたのだ。


見えた瞬間が攻撃だった。


それは閃光であった。光の速さであった。



チュッドォォォンッ!!!!



ゴールドドラゴンから放たれた光のブレスが、彼らの頭上を通り過ぎ、遠方にある小山の頂上に当たった。


なんと山が一つ、消し飛んでしまった。


「「えぇっ!!!」」


圧倒的すぎる力の差に一同、叫びつつも絶句した。

シルバードラゴンとは格が違う。

ステータスだけでなく、能力が遥かに上の次元なのだ。


「レ!レーザービームかよ!!!」


「山が!!吹き飛んでしまいましたわ!!!」


「あんな速いの!跳ね返せませんよ!!!」


赤城松矢、シャクヤ、そして大和柳太郎が絶望するように叫んだ。


特に柳太郎の『シフト延斬えんざん』は、相手の攻撃にタイミングを合わせて空間を入れ替え、方向転換させる技なので、光と同じ速さのブレスを反射するのは不可能である。


「い……今のは威嚇か?」


「わたくしがぁ、気配から察しますにぃ、久しぶりすぎて狙いが逸れたぁ、と言うのが正解な気が致しますぅ」


震える声で呟いたオスマンサスにホーリーが冷静に分析して答えた。それを聞いてベイローレルとラクティフローラも悲痛な声を上げる。


「てことは次、本気で来られたら!」


「無理ですわ、あんなもの!!」


状況はあまりにも絶望的だ。

しかも、ここで真っ先にヘタレた声を出した者がいた。


「おれ……もういいや……こんなの無理ゲーだ」


「「おいコラ!椿ぃ!!!」」


なんと先程までの威勢はどこへやら。黒岩椿が早々に諦めて、屋根の上に寝転んでしまった。それを赤城松矢と黄河南天が呆れ果ててツッコむ。


とはいえ、その彼らも、ほとんど諦めの境地であり、最後の悪あがきをする以外に何も思いつかなかった。


「は……はははは……オレ、一応、『灼熱の勇者』だから、熱には強いんだ……光線を相手にどこまでいけるか、わかんないけど、やれるとこまでオレが受け止めてみる……」


「な、なら俺も『武装功ぶそうこう』で止めてみるわ……正直、光を防げるんか、ようわからんけど……」


2人の勇者は、果敢にも先頭に立ち、光のブレスに備える姿勢を見せた。共に乾いた笑みを浮かべているが。


後方では、オスマンサスが、ある人物に一縷の望みを抱き、柳太郎に尋ねていた。


「い……今からでもリュウタの母親が戻って来てくれるとかないのか?あの人、ドラゴンについて何か知ってるふうだったじゃないか」


「オスマンさん!それ、ぼくが聞きたいくらいですよ!」


そんなことを言っている間にも、ゴールドドラゴンが再び大口を開けた。熱源を感知した赤城松矢が怯えながら叫ぶ。


「く、来るぞ!!!」


「ほな、俺が松矢の身体を『武装功』で覆うわ!みんなは俺らの後ろに隠れてくれ!!」


屋根の頂上に立った赤城松矢を背中から黄河南天が支え、その背後の傾斜した屋根に全員が集まる。黒岩椿もちゃっかりそこに移動した。



キュイィィンッ!!!!!



そこに光のブレスが放たれた。

今度の狙いは正確で、まっすぐ赤城松矢に命中する。


赤城松矢は初め、それを胸で受けたが、すぐに手をかざし、両手で光線を受け止める。とてつもない熱量が彼を襲った。


「ぐっおおぉぉぉっ!!!!!」


「松矢!キバるとこやで!!!」


彼の背中を支える黄河南天は、『武装功』を武器に纏わせるように赤城松矢の肉体を包んでいる。これにより、ある程度は光線の威力を抑えられるが、焼け石に水とも言える状況だ。


しかしながら、なんとか後ろに隠れた面々に光のブレスが届くことはなく、ギリギリ耐え忍んでいた。


ガードされている間、ベイローレルは大和柳太郎に叫ぶように聞いた。


「勇者リュウタロー!!空を飛びながら空間移動できるか!」


「は!はい!できます!」


「ならば、こちらも反撃だ!ピアニー!最大出力で頼む!ストリクス!飛ぶ準備を!」


彼が最後の作戦を練ったところで、光のブレスが止まった。なんとか防ぎきった赤城松矢であるが、彼は両手と両腕が焼け爛れるほどの大火傷を負っていた。


「がっああぁぁぁぁっ!!!!オレが火傷するって!どんだけだよぉーー!!!」


「こらあかんわ!『武装功』で拡散させるんで精一杯や!!!」


黄河南天も必死であったが、大した助力にならなかったことに絶望している。4階建ての屋敷は、赤城松矢の周辺以外の屋根が全て吹き飛んでいた。


だが、ここでゴールドドラゴンに対し、攻撃後の隙をついて、一矢報いようとベイローレルたちが行動に出た。


「よし!今だ!!!」


「かしこまりました!!」


「至近距離まで飛ばします!!!」


「参ります!【激流刃・三重陣フラッド・ブレード・トリプル】!!!」


彼の合図により、ストリクスに乗った大和柳太郎が連続で空間移動を行った。そして、同じくストリクスに乗っているシャクヤが三重連携魔法を発動する。


ゴールドドラゴンの100メートル手前まで迫った状態で、シャクヤの最大火力が発射された。これは、ドラゴンが比較的低い位置に静止してくれているからこその急襲だった。


上位魔法の12倍の威力を発揮し、シルバードラゴンですら斬り裂いた最大奥義が、ゴールドドラゴンにゼロ距離で放たれた。




「………………」




ところが、なんとそれはプツリと消えてしまった。


無言で悠然と羽ばたくドラゴンを見ながら、ベイローレルが目を丸くし、愕然と呟いた。


「そ……そんな……あれは『絶魔斬ぜつまざん』だ……」


「「えっ!!」」


皆が一斉に驚愕した。


なんたることであろうか。ゴールドドラゴンは、魔法を解除するスキルを持っているのだ。これでは、たとえこの場に白金牡丹がいたとしても、重力魔法で落とすこともできない。


「レベルは遥か格上……空を飛んで、口からは破壊光線……物理は届かない……魔法も効かない……こんなの無敵すぎますよ……」


急いで空間移動し、戻ってきた大和柳太郎であるが、ストリクスから降りながら意気消沈して嘆いた。さらに赤城松矢も苦々しい顔つきで、申し訳なさそうに告げる。


「ごめん……たぶんオレ……次で死ぬ……」


その一言は、皆を完全に絶望させた。


もはや反撃の糸口も見つからず、次の一撃を防ぐ手立ても無くなり、確実に全滅する未来しか残されていないのだ。



ゴールドドラゴンが悠々と三度目の大口を開けた。


それを見て、皆、頭が真っ白になった。

もはや助かる術が何一つ見出せない。


これまで如何なる困難があろうとも知恵と勇気と連携で切り抜けてきた。しかし、圧倒的な力の前には、それらも全て一瞬で灰となってしまうのだ。


誰もが己の無力を痛感し、死を覚悟した。


オスマンサスは無言でホーリーを抱きしめた。


ベイローレルは何も言わずラクティフローラとシャクヤの前に立った。王女は無意識に彼の背中の衣服を掴んだ。シャクヤは王女のもう片方の手を握った。


他の面々は一様にゴールドドラゴンを恐怖して見つめた。



そこに容赦なく、光のブレスが発射された――




キュイィィンッ!!!!!




――まばゆい閃光に全員が包まれた。


しかし、おかしい。

何も起こらなかったのだ。



「「……………………え?」」



光に目が眩んでいた一同が、前を向いた。



「私、参上!!!」



そこには、破壊光線を素手で受け止め、完璧に防ぎきった一人の女性が、不思議なポーズを決めて立っていた。


「「…………え?」」


光の速さで登場した彼女に、帝国メンバーは唖然とし、王国メンバーは目を輝かせている。


美しい黒髪をなびかせ、白いマントを翻し、太ももを露わにする元気いっぱいの彼女の二つ名は”閃光御前”。その本名は、白金百合華。


そう。ウチの嫁さんだ。


彼女の『スカイ・ジャンプ』で空を駆け抜け、村の周辺まで辿り着いた僕、白金蓮と我が妻子であったが、ドラゴンの群れの気配を感じ取った嫁さんが、途中で僕を牡丹に任せ、単独で先行したのだ。


皆のピンチに、まさに閃光のごとく現れたウチの嫁さんは、ドラゴンの放つ閃光をいとも容易く受け止めた。


そして、ゴールドドラゴンを見据えながら毅然と立った。


「ちょっと想像と違う状況になってるけど、なんか最初からクライマックスみたいね!」


「「………………え?」」


そのセリフにあまりにも緊張感が無いため、やはり帝国メンバーは呆然とする。


彼らの疑念には目もくれず、嫁さんはドラゴンたちに言い放った。


「ちょっと!あなたたち!何しにここに来たの!?ここは、あなたたちの来る所じゃないでしょ!?特にそこの金ピカくん!!」


とはいえ、お互いにコミュニケーションが取れるのかも、よくわかっていない。とりあえず言うべきことは言う、という姿勢で、彼女は言葉を交わす努力はしてみたのだ。


ところが、というか、やはり、というべきか、何の反応も無かった。


しかも、あろうことか、ゴールドドラゴンは大口を開け、四度目の光のブレスを放出しようとしている。


「……そう。聞く耳持ってくれないのね。なら、仕方ないわ!」


厳しめの顔でそう言った嫁さんに光のブレスが発射される。



キュッ……

 ウイィィンッ!!!!!



ところが、光線を嫁さんが手で受けたと同時に、それは奇妙な軌道を描いて、反射してしまった。まっすぐゴールドドラゴンに向かって。


「「ええぇぇぇぇぇっ!!!!!」」


これには並み居る面々が共に度肝を抜かれた。

嫁さんは、背後の彼らの驚きにはお構いなく、ゴールドドラゴンに語り掛ける。


「口の中に魔法があって、そこから発射してるのね。ま、私は魔法そのものだろうと、魔法の結果、生み出されたものだろうと、全部、『半沢直樹ばいがえし』できるんだけどね」


そうなのだ。実は嫁さんのスキル『半沢直樹ばいがえし』は、魔法を跳ね返せるスキルであるが、”魔法のみ”を跳ね返すわけではない。魔法以外であっても、あらゆる現象を自身のマナで包み込み、マナを上乗せして跳ね返せてしまうのだ。


つまり、何でもアリなのである。


今までその機会が無かっただけなのだ。


反射された光線は、ドラゴンの顔の横をかすめただけであったが、そこから血が出た。これにゴールドドラゴンは愕然とし、硬直している。


「どう?次やったら、今度は当てるわよ。帰る気になった?」


彼女はドラゴンを退却させるため、手加減して反射していたのだ。そうして威嚇したのだが、プライドを傷つけられたゴールドドラゴンは、周囲のドラゴンに王者の風格を見せるため、光のブレスを再度発射しようと口を開けた。


「しょうがないなぁ!もう!」


攻撃の気配を感じ取った嫁さんは、そう叫ぶと同時に姿を消した。



ドッゴォォーーン!!!!!!



次の瞬間、この場の面々が目にしたのは、上空200メートルの位置にいるゴールドドラゴンまで高々と跳躍し、顎に一発、蹴りを入れた彼女の姿だった。


「「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」」


想像を絶する速度と跳躍力、そして、一撃のもとにゴールドドラゴンを気絶させた彼女の雄姿を見て、一同は目が飛び出そうな勢いで絶叫した。


思い返してみれば、僕が初めて嫁さんのチカラを知ったのもドラゴンを一撃で倒した場面であった。あの時、眼球が飛び出るかと思ったものだ。


気を失ったゴールドドラゴンは仰向けの状態で、林の中に轟音を響かせて落下した。先刻までの威厳に満ちた姿が嘘のようなビフォーアフターであった。


「ブレス倍返しじゃ、死んじゃうだろうから、吐く前にやらせてもらったわ!」


攻撃を終えた嫁さんは、空を華麗に舞い降り、屋根の上に軽やかに着地しながら、残るドラゴンの群れに告げた。


「はいはい!てことで、他のみんなは金ピカくんを連れて帰ってくれるかな?」


嫁さんは情けをかけて言ってあげているのだが、おそらく主君であろうゴールドドラゴンがやられたことで、48体のドラゴンは彼女に激昂してしまった。


ドラゴンの群れは、荒ぶる叫び声を上げながら、カラコルム卿の屋敷の上空を旋回し、威嚇するように飛んでいる。


これに包囲された者たちの恐怖は尋常ではない。帝国メンバーは、狂暴化したドラゴンが飛び回る光景を見て、この世の地獄だと思った。


「じゃあ、これでどう?」


それでも平然としているウチの嫁さんは、ドラゴンたちを黙らせるため、剣を抜いた。そして、必殺の究極スキルを放った。


――次元斬じげんざん――


音もしない静かなる一閃によって、上空を旋回するドラゴンたちが、背景の空や雲ごと真っ二つに切断されてしまった。


これを見るのが二度目である大和柳太郎でさえ、ここまでの威力だとは思ってもいなかったようで、口をポッカリ開けたまま硬直している。


そして、空間が元に位置に戻ったところで、切断面に巻き込まれていたドラゴンたちが、それぞれ軽く血を噴き出した。


本来であれば、今の一撃で全滅させられたものを、嫁さんはかなり手加減し、全てのドラゴンが軽傷で済むように攻撃したのだ。


「今のは挨拶!次は本気で斬るわよ!!」


と脅しをかけるのだが、どうやらドラゴンたちは『次元斬じげんざん』の原理がわからなかったらしい。何か不思議な力で軽く斬られたくらいにしか思っていない様子だった。


そのため、怒った彼らは彼女に向けてブレスを発射しようと一斉に口を開けた。


「ちょっと!今の理解できなかったの!?わざわざ実演した意味ないじゃない!」


呆れながらも、嫁さんは仕方がないと言いたげな顔で、剣をしまい、両手を構えた。


まるでシャドーボクシングのように両の拳を次々と突き出すと、そこからマナの塊が発射される。


その動作すらも肉眼で捉えるのは難しい程の速度であったが、射出されたマナも相当なものであった。音速を遥かに凌駕し、マッハいくつなんだという速度で、空気抵抗も受けずにドラゴン1体1体に直進して行くのだ。


要するに360度、全方位への超高速『マナパンチ』連打。


それらが全て精密に1キロ近く離れたドラゴンの顎を捉えるように激突する。


破壊光線にも負けない鋭い閃光が、力を抑えた優しい攻撃力で、48体のドラゴンをほぼ同時に貫いた。


ところで皆様、通常スキルが全体攻撃で、遠隔攻撃で、一撃必殺のお嫁さんは好きですか?



ドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!



まるで彼女から放たれた拡散ビームで撃ち落とされたかのごとく、高度300メートル以上で半径約1キロの円を描くように包囲していたドラゴンが一斉に沈黙した。


「結局、最後はオラオラになっちゃうのね」


悲しそうな顔で、気を失ったドラゴンの群れが落下するのを見ながら、ウチの嫁さんは、ため息をついた。


パンパン!


そして、ひと仕事終えて両手をはたいた彼女は、後ろに振り返り、全員に優雅に微笑むのだった。


「……てことで、みんな、怪我は無い?」


「「………………」」


並み居る面々は、顔面崩壊しそうなほど目を丸くし、絶句してガックリと膝をつくのみだった。

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