第245話 横暴なる騎士団
『聖浄騎士団』騎士団長スターチスは、帝都を出立する前に宰相ヒペリカムから指示を受けていた。
「よいか。カラコルム卿のいる村に入ったら、誰でも構わん。一人殺せ。歯向かってきたという理由でな。そうすれば、あとは自然と火がつくはずだ」
「御意」
忠実なるスターチスは、それを部下に実行させた。好戦的な灰谷幹斗は、その意図を瞬時に見抜き、歪んだ笑顔でそれに便乗した。
騎士団を警戒して周囲の林に潜んでいた村の”レジスタンス”の青年団は、業を煮やして飛び出した。
草原のお茶会で時間を稼ぐコルチカムたちの作戦は、瞬く間に瓦解してしまった。『聖浄騎士団』と青年団、およびカラコルム卿の使用人たちの戦いが始まったのだ。
とは言っても戦況は一方的である。
鍬や鎌、あるいはピッチフォークなどを武器とした村の青年たちと、なんとか剣を用意することができた使用人たち。しかも、レベルを見れば、一人前ハンターになれる者がわずかにいるだけの彼らだ。レベル30以上の精鋭が揃った『聖浄騎士団』に敵うはずもない。
次々と村民は蹂躙されていった。
だが、その中で一人だけ煮え切らない勇者がいる。
小学生の柳太郎である。
「ちょっ、ちょっと待ってください!もう少し、ちゃんと彼らの話を聞かないと……」
動揺する彼に灰谷幹斗が忠告するように言う。
「柳太郎ちゃん、正義の騎士団が敵だって言ってるんだから、そのとおりなんだヨ!オレちゃんたちも戦いに加わらないと、サボったことになっちゃうゾ!」
「で、ですけど、これは……」
柳太郎は狼狽したままだ。彼は、この世界に召喚されてから1年余りの間、確実に魔王を倒すため、修行に明け暮れていた。『聖浄騎士団』の任務に参加するのは、これが初めてなのだ。
それがまさか、容疑も明確でない人間を容赦なく斬り捨てることになろうとは考えてもいなかった。帝国と『聖浄騎士団』が正義であると信じつつも、目の前の残虐な行為に目を背けたい思いであった。
茫然と戦闘を眺めていると、彼の視界に侍女が入った。
武器も持たず、ただ慌てふためいて逃げるだけの女性だ。そこに騎士の一人が迫った。完全に無防備な侍女に剣を振り下ろそうとしている。
柳太郎は、その侍女が、先程自分にお茶を出してくれた女性であることを思い出した。シャクヤの専属侍女であるキシスだ。
その瞬間、彼は自身のスキル『シフト
「早く逃げて」
素早くキシスのそばに移動した柳太郎は、小声で彼女に告げた。キシスは、何が何だか理解できず、そのまま無我夢中で走って行った。
その後、柳太郎は、非戦闘員だけは逃がしてあげるべき、という考えで、戦場を駆け抜けた。
さて、その一方で、この大惨事を見て、激しく憤る美少女がいた。
シャクヤだ。
彼女は、気配を気取られないよう、標高のあるカラコルム卿の屋敷の庭から、使用人たちの様子を見下ろしていたのだが、騎士団の行為を目の当たりにし、憤慨したのだ。肩に乗っているフクロウに彼女は力強く呼び掛けた。
「今のを見られましたか!ストリクス様!」
「ええ。しかとこの目に。騎士団と勇者が、自ら村民に手をかけました」
「なんと非道な!わたくし!断じて見過ごすことはできませんわ!」
「シャクヤ殿、お待ちを!アナタを危険に晒すわけには参りませぬ。我が主君の命に背いてしまいます」
すぐにでも走り出そうとする彼女をストリクスは制止した。しかし、悲憤慷慨するシャクヤは、眉間にシワを寄せて彼の目を見る。
「レン様であれば、この状況をご覧になって、黙って隠れていらっしゃると思われますか?」
「いえ、そのようなお振る舞いは、決してされぬことと拝察致します」
「では、参りましょう!」
実際に白金蓮が、それほど正義感の溢れる人物であるかはさておき、彼女の決意に促され、ストリクスも決死の覚悟で共に向かった。
「ちょっ!お姫さん!待ってくださいよ!!」
そして、それに驚いた護衛ハンターのトリトマも急いで後を追った。
足の速いシャクヤであるが、彼女に先んじて、空を飛ぶストリクスが魔族の姿に戻り、上空から攻撃を開始した。
自身の羽根を自在に飛ばす固有魔法【
鉄のように硬く鋭くなった羽根の一枚一枚が、ドリルのように高速旋回しながら『聖浄騎士団』に襲い掛かる。
「「ぐっああぁぁぁっ!!!」」
情け容赦なく村人たちを蹂躙していた騎士たちが突如として悲鳴を上げた。頭上からの不意打ちで、鎧を砕かれながら背中に羽根を突き立てられたのだ。
ストリクスのレベルは46。いかに精鋭揃いの『聖浄騎士団』といえども、元魔王軍幹部の実力には、単独では到底及ばない。
しかし、それでも人間を不用意に殺さないという誓いを白金蓮と交わしているため、彼は騎士たちを即死させることはなかった。背中に羽根を撃ち込み、立ち上がれぬほどの苦痛を与えるのみに止めていた。
十数人の騎士を瞬く間に戦闘不能に陥らせたところで、彼の姿を発見した騎士の一人が声高に叫んだ。
「魔族です!!!空を飛ぶ魔族が現れました!!」
それを聞いた灰谷幹斗は、上空を見上げてニヤリと笑う。
「オーーオーー、ついに魔族が出てきちゃったのネ。これでもう言い逃れできないナ!」
言うや否や、彼は固有魔法の【
鋭い矢のようになった塊が、弾丸のようにストリクスに迫り来た。
「!!!」
気配を感じ、ギリギリでそれを躱した彼は、さらに上空に逃れながら驚嘆した。
「なんと!この距離を攻撃してくるのですか!!これが勇者!!」
それを追撃しようと構える灰谷幹斗だったが、空高く舞い上がったストリクスは射程圏外に行ってしまった。
仕方なく諦めると、彼の前方には、剣を持って必死に応戦している使用人コルチカムがいた。
かつてシャクヤの誘拐犯リーダーを務めたコルチカムは、それなりに戦闘経験があり、レベル26であった。騎士を相手にしても何とか持ち堪えるだけの実力はあり、周囲の村人を守りつつ、自身は手傷を負いながら、あがき続けていた。
その死に物狂いの奮戦を見た灰谷幹斗は、おかしそうに笑いながら言った。
「……頑張っちゃってるネェ。それじゃあ、魔族が戻ってくるまでの間、オレちゃんはゴミ掃除といきますカ!」
彼はコルチカムに向かって砂の矢を放った。その俊敏な速度にコルチカムが反応できるはずもない。矢は正確にその頭部を貫く。
ブッシュッ!!!
しかし、そう思われた瞬間、コルチカムの眼前に現れた魔方陣から、鋭利な水の刃が発射された。それは見事に砂の矢を破壊し、相殺した。
「んんん!?今のは何かナ?」
灰谷幹斗は目を見張った。鉄をも貫く自身の攻撃を防がれたのは、彼にとっても初めてのことだった。
水の上位魔法を3倍の威力に高めて放つことができる天才魔導師。
その女性が、彼の前に現れた。
「何をなさっておられるのですか!!!」
怒りを露わにしている彼女の顔を見て、灰谷幹斗は一瞬、時が止まったように感じた。そして、呆然としながらも、次第に歓喜の表情に変わっていった。
「えっ……なになになぁーーに?あの超かわいい子はぁ!」
綺麗なブルーの髪をシースルーのヴェールで上品に隠し、白い衣装に身を包んでいるシャクヤ。彼女の姿が、彼には神々しく見えたのだ。その可憐な顔立ちに心奪われてしまったのだ。
一方でシャクヤの登場に愕然としているのは、助けられたコルチカムだ。
「で、殿下!なぜ出て来られたのですか!!」
「コルチカム様!皆様を連れて避難してください!ここはわたくしがお引き受け致します!!」
叫びながら彼女は、上位魔法【
周辺の騎士たちは、これで全員が気を失うこととなった。シャクヤの強さを目の当たりにしたコルチカムは、口をポッカリ開けたまま脱力して尻餅をついている。
ただ一人、立ったままなのは灰谷幹斗である。
彼にも同じ攻撃はされていたが、彼は水の塊を砂で吸収し、簡単に取り除いていた。灰谷幹斗はシャクヤの攻撃を全く意に介さず、ヘラヘラ笑いながら尋ねるだけだった。
「本当ダ……本当にお姫様ダ。そういう顔した魔導師の凄腕ハンター。キミがもしかして、”姫賢者”のシャクヤって子かナ?」
浮ついた表情の彼の質問には答えず、シャクヤは詰問するように問い返す。
「あなた様は、勇者様でございますね!どうしてこのようなことを!」
「そうそう。オレちゃん、勇者様だから、安心してこっちにおいで。お姫様を助けるのが勇者の役割だもんネ?」
「どうしてこのようなことをしているのかと聞いているのです!!!」
ニヤニヤするだけの灰谷幹斗にシャクヤは再度、怒号を飛ばすように質問した。憤激に燃えたその瞳を見ながら、灰谷幹斗は奇怪な笑みを浮かべる。
「うわぁーー。すごい剣幕。もしかして、お姫ちゃんサ、オレちゃんに喧嘩売ろうとしてる?え、え、だとしたら、これってアレかナ。意地の悪い聖女ちゃんがオレちゃんを迫害するパターンかナ。嬉しいナァ。それなら、これから全力でキミを見返してあげなきゃいけないよネ」
自分を罵る相手には何をしてもよいという自分勝手な独自ルールに従い、彼は口元を歪ませて槍を構えた。
気配を全解放した灰谷幹斗からは、レベル55の圧倒的なオーラがほとばしる。そして、周辺の砂が次々と集まり、彼の周りを回転しはじめた。それは彼を守る無敵のバリアだ。
この時、シャクヤの危機を察知したストリクスが上空から戻ってきた。彼は、彼女の前に降り立ち、杖を身構えた。
「シャクヤ殿、お気をつけください。あの勇者は砂を操ります。とてつもない速度と破壊力で」
「え、ええ……どうやらそのようでございますね」
灰谷幹斗の殺気に気圧されたシャクヤは、若干、怯みながら返答する。
ストリクスは杖に付けた10個の宝珠を発動し、全力を出した。自身の固有魔法を登録しておくことで、イザという時に10倍を超える威力を発揮する奥義。かつて白金夫妻と戦った折にも使用した彼の最大級の大技だ。
1000枚以上の羽根がストリクスの前に現れ、砂に囲まれた灰谷幹斗と対峙した。これに『砂塵の勇者』は興味深そうに明るい表情をする。
「あらあら……こっちは砂でそっちは羽根かぁ……ちょっと面白いことになってきたじゃないノ」
「羽根と砂……自由に操作するという点では似通った能力ですな。しかし……大変遺憾ながら、明らかにこちらの方が見劣りしております」
冷静なストリクスは、しっかりとその実力差を分析している。勝ち目があるとは全く考えていない。それでも、シャクヤを守りきるために力を尽くそうと決めていた。
そこに灰谷幹斗の砂が発射された。
鋭い槍のように細長く固まった砂が、雨のように次々と降り注ぐ。1本1本が、羽根1枚では防ぎきれない威力だ。それを1本につき5枚がかりで砕き、ストリクスは迎撃した。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
彼の緻密な計算は、100を超える相手の攻撃を確実に相殺していった。
灰谷幹斗は不気味に笑う。
「すごいすごい!!!オレちゃんの攻撃をここまで防いだヤツ、初めて会ったワ!フクロウの魔族ちゃん!おたく、ホントすごいヨ!!!」
まさに激戦。
砂と羽根のぶつかり合いによる無数の攻防は、第三者の立ち入る隙が微塵もない超絶速度と特大規模の撃ち合いであった。ストリクスの背後にいるシャクヤも目を丸くして見守るばかりである。
だが、それすらも灰谷幹斗の余裕の表情を変えるまでには至らない。
砕かれた砂の塊は、霧のような砂塵となってストリクスの周囲に立ち込めている。それらも全て灰谷幹斗の管理下にあるのだ。
杖を持ち、羽根の操作に全力を注いでいたストリクスの眼前に砂が集まった。
これが【
ズバズバッ!!!
咄嗟にガードしたストリクスであるが、目の前で刃となった砂を躱しきれず、杖を持った翼を傷つけられてしまった。そして、槍のように鋭い一撃が、彼の腹部に迫った。
ドグッ!!!
それも両腕としている翼で防ぐが、両翼を貫かれ、腹部にも槍が突き刺さり、その余勢で後方に激しく吹っ飛んでしまった。
「ホッぐっほぉっ!!!」
本来であれば、灰谷幹斗はこの一撃でストリクスの腹部を貫くつもりだったが、瞬時に反応して腹に力を込めたストリクスは、砂の槍を貫通させはしなかった。
お陰で致命傷は避けられたものの、その反動により、凄まじい勢いで飛ばされた彼は、背後にあった林の遥か奥まで突っ込んでいった。翼と腹部をやられたストリクスは、もはや飛ぶこともできない。そこで立ち上がることもできず、もがくのみとなった。
「ストリクス様!!!」
驚いたシャクヤが彼を追いかけようとするが、すぐ目の前には灰谷幹斗が迫っている。彼女は魔導書を開いて応戦しようと試みた。
だが、それも本気を出した灰谷幹斗の前には意味をなさなかった。
「あっ!ぐっ!」
既に彼女の周囲を舞っていた砂が瞬時に固まり、シャクヤの首と腕を覆ってしまった。まるで砂で出来た首輪と手錠だ。さらにそれを後方に引っ張られ、後ろにあった大木に背中を預けることになった。
シャクヤは、あっという間に大木に固定され、拘束されてしまったのだ。その衝撃で髪を隠していたヴェールが飛んでしまい、魔導書も地面に落としてしまった。
そこに灰谷幹斗が鼻息を荒くして、やって来た。
「おとなしくしててネ。お姫ちゃん。これからオレちゃんがたっぷり調教してやるからサ。ああ……いいナァ。これはいいナァ。自分を迫害した聖女ちゃんを従順な牝奴隷になるまでイジメる……。一度やってみたかったんだよネェ。……ああああ、何しようかナァ。どんなコトしてあげようかナァァァァァ」
涎を垂らしながら顔を近づけてくる灰谷幹斗に、シャクヤは猛烈な嫌悪感を覚えて全身が総毛だった。これまで彼女を女性として狙った者たちは何人もいたが、彼ほど恐ろしく気色悪い男はいなかったと言ってよい。
「ひっ……!」
思わず身震いするほどに恐怖したシャクヤだったが、次の瞬間には、そんな自分が許せないと思った。目の前の極悪人に対して、怯んではならないと自身を奮い立たせた。彼女はキッと相手を睨みつけ、並々ならぬ覚悟で言い放った。
「あ……あなたのような方に何をされようと!わたくしは屈しません!!!」
それを聞いた途端、灰谷幹斗は目を丸くして固まり、次いで満面の笑みを浮かべ、地面を転げ回るほどに大喜びした。
「お、お、おぉぉぉぉぉぉ!やった!やったヨ!そのセリフ!リアルで聞けるとは思わなかったヨォ!あああああ、この世界に来て良かったァァァ!!!」
しかし、それも束の間、すぐに目を血走らせて立ち上がり、興奮して言うのだった。
「駄目ダ!もう我慢できないヨ!捕まえて帰ってからって思ってたけど、今、ここでやっちゃうヨ!裸にひん剥いて、泣き叫んで許しを請うまで、いろんなコトしちゃうからネ!」
そうしてシャクヤの服に手をかけた瞬間だった。
彼の背後から不意打ちを仕掛けた者がいた。
「てんめぇ!!!お姫さんから手を離しやがれ!!!!!」
なんとそれはシャクヤの護衛を買って出たハンター、トリトマであった。レベル32の彼は、戦場に飛び出した彼女を必死に追いかけたが、途中で騎士団の一人と遭遇してしまい、なんとか倒した後、ここまで辿り着いたのだ。
自分の敬愛する王女が見知らぬ男の毒牙にかかろうとしている。そう思ったトリトマは、間髪入れず灰谷幹斗の背後を襲った。
鋭い剣の一閃が『砂塵の勇者』を斬り裂く。
――とは当然いかなかった。
砂の壁であっさりガードされてしまった。
ギョッとする彼に振り向いた灰谷幹斗が不機嫌な顔で叫ぶ。
「今、いいところなんだから、邪魔すんなヨ!!」
ズドンッッ!!!
瞬時に出来上がった砂の太い槍が、トリトマの胸部に空洞を作ってしまった。後ろの景色が見える程の大穴を。
そこから凄まじい鮮血がほとばしるが、それも灰谷幹斗は砂でガードするため、彼とシャクヤには全く掛からない。
もしも、この場面をトリトマの背後から目撃した人物がいれば、その者は、彼の背中に出来た大穴を通して、向こう側で愕然としているシャクヤの顔を見たことだろう。
「えっ………………!」
シャクヤは、まるで時が止まったように感じた。
それは一瞬の出来事だった。
いとも容易く行われた。
あまりにもあっけない結末であった。
受け入れがたい現実に身を震わせ、彼女は絶叫した。
「トリトマ様ぁーーーー!!!!」
まるで断末魔のように叫ぶシャクヤに応えようと、意識が遠のきながらもトリトマは最期の声を振り絞った。
「がっ……はっ!お姫……さ……ん…………」
そうして、彼の肉体は力なく地面に転がった。
シャクヤは目の前が真っ暗になった。
最初は彼女を襲おうとした誘拐犯が、やがて彼女の人柄に本気で惚れ込み、護衛を申し出て、共に農作業まで手伝ってくれた。ここまでハッキリ好意を口にしてくれる男は今までいなかった。
今の仕事が終われば、偽りの王女であったことを謝罪し、白金蓮に引き合わせるつもりであった。かつてトリトマはこう言った。
「お姫さん!おれはガチであなたを好きになりました!お姫さんのためなら、この命だって差し出せる!」
その彼が、ついには言葉どおりに全身全霊で自分を守ろうとし、眼前で命を落としたのだ。
草むらに落ちても表情が変化しないトリトマの顔を見ながら、シャクヤの内側に、胸が絞めつけられるような絶望とハラワタが煮えくり返る憤怒が同時に沸き起こった。
「あ……あぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっっっっ!!!!」
彼女の悲痛な雄叫びが上がる。
すると、それと同時に地面に転がる魔導書が光った。
「え?」
この瞬間、灰谷幹斗は異常な気配を感じて、シャクヤを振り返った。
次の刹那、彼の鼻先に魔方陣が出現した。
「うぇっ!?」
水の上位魔法【
これには、さすがの『砂塵の勇者』も驚愕した。
「ぐぉあっ!!!」
ズッパァァン!!!
即座に反射的な回避と腕によるガードを行ったため、灰谷幹斗は顔面を斬られることはなかった。しかし、両腕の肉が見事に斬られ、この世界に来てから初めて、鮮血を噴き出す大怪我を負った。
「ぐっあぁっ!!う、腕がぁ!!!腕がぁぁぁっ……!!!!」
ついに魔導書に触れずとも魔法を発動できるようになったシャクヤは、自分を拘束している首と腕の砂をも上位魔法で斬り裂き、悠々と魔導書を拾った。
そして、両腕を斬られてショックを受け、膝をついている灰谷幹斗を見下ろすように立った。怒髪天を衝くような顔で。
「あなたなんか!!あなたなんか勇者じゃない!!!このわたくしが!成敗して差し上げますわ!!!」
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