峻烈の火

他人の優しさを素直に受けとれるほど、私は純粋じゃない。



季節は晩夏。

高地に位置するアストリアの平原には、乾いた冷たい風が吹き始めていた。草花は青々と茂っているが、風に煽られている様は、寒さに身を寄せ合っているようだ。北に位置する山脈の頂上付近には雪化粧がちらほら見えるようになっている。まだ秋の姿もあまり見られないのに、自然のあちらこちらに冬が紛れ込んでいた。

平原の街道に二台の荷馬車が西へ向かって進んでいた。それぞれに二頭の馬が引いていて、人が歩く程度の速度だった。

クラウスは、空模様と手元の地図とに視線を右往左往させながら手綱を握っていた。季節の変わり目というものは、天候の変化が著しい。のんきにしていては、あっという間に風雨にさらされることになってしまう。あいにく今は風も大気も落ち着いているようで、急いで雨風しのげる場所を探さずとも問題ないだろう。

「ナギ、後ろの母さんたちにもう少ししたら休憩しようって伝えてくれるかい」

クラウスは、荷車に乗っている娘に声をかけた。

「はーい」

娘は荷車いっぱいの荷物の間を掻き分けて、荷馬車の後方へ回る。そして後ろをついてくる荷車の御者に手を振った。

「カーム。もう少ししたら休もうってお父さんが」

御者の青年は、おぅと返事を返して手を上げた。

カームと呼ばれた青年は、自分の荷馬車に乗っている母と、まだ幼いちびっ子弟妹たちに、父の言葉を伝言して言った。

クラウスは、後ろの荷馬車かが急に騒がしくなったので、思わず笑みをこぼした。


休憩場所によさそうな場所はすぐに見つかった。川がすぐそばを流れていたのだ。クラウスたちは街道から外れ川の縁に荷馬車を止めた。手綱から馬たちを開放してやり思う存分水を飲ませてやった。

「川だー」

「川だー」

荷車に乗っていた一番下の双子たちが勢いよく川へ向かっていった。

「グレン、スカーレット。水には飛び込まないでよ?」

二人に続いて、母親が荷馬車から降りてくる。

「ヘレン、疲れてないかい?ずっと揺られていたから、退屈だったろう」

「あなたとカームに比べたら、どうってことないわ。お疲れ様。すぐお茶を入れてあげるからまってて」

ヘレンはポットを持って川の水を汲み言った。

「お父さん、カーム兄さん。お疲れ様です」

もう一人、同じ荷馬車から降りてきたのは、真ん中の妹。

「ありがとうソーラ。疲れてないかい?」

「私は大丈夫です」

「ちび助たちの相手するの大変だっただろう。いつもすまないな」

「いえ、そんなこと・・・」

いまだに敬語が抜けない娘にクラウスは苦笑いをした。

(なかなか慣れてくれないものだな。)

ソーラもグレンたちに続いて、川に向かっていった。


へレンが川の水を沸かして、紅茶のいい香りを発たせている間、クラウスはみんなから少しはなれて、今朝経ってきた王都のほうを眺めていた。長い間拠点にし、商売に勤しんでいた場所を離れるのは、なかなか辛いものだった。国の情勢が悪くなってきてからは、幸せなことばかりではなかったが、それでも新たな出会いや、多くの人に助けられてなんとかやってこれた。名残惜しいが、潮時だったと思うしかなかった。

「父さん」

いつの間にかカームが来ていた。

「まだ、渋っているの?今更やっぱり帰ろうなんていわないでくれよ?」

「はっはっは、まさか。少し懐かしんでただけさ。お前たちも家を出るときは暗い顔してたじゃないか」

「そりゃ、我が家だったから」

子どもたちにも悪いことをしたと思っていた。仕事のためとはいえ、我が家を移りかえるなんてことをしてしまったのだ。新しい家にすぐ馴染んでくれればありがたいが、ちび助たちは、今こそはしゃいでいるもののしばらくはぐずっててもおかしくないだろう。二人の面倒は、妻やソーラにまかせっきりになっていて、彼女たちにも申し訳なくなってくる。

「まぁ何とかなるだろう」

考えていたって仕方が無い。クラウスは伸びをして、固まっている体をほぐした。

ふと、川を見やると何かが流されてくるのが見えた。遠めに見てると泥の塊のように見える。この辺りの水は澄んでいてそれほど汚れていないから、おそらく上流から流されてきたのかもしれない。

しかし、徐々にその塊が見えてくるとそれが人の体のような形をしていることに気づいた。

(死体か?)

若い娘の体が、丸太とともに水草などを絡ませて塊となって流されていたのだった。

「父さん、あれ」

「あぁ。かわいそうに。お前と同じくらいの子だろう」

ここからでは顔は見えないが、体躯から見ても二十歳に届くか届かないかの娘だろう。ここいらでは珍しい銀髪をしていて、もしかしたら異国の者なのかもしれない。

「どうする?」

「見てしまったものはしょうがない。埋葬してやろう」

新天地へ引っ越すという日に死体など見つけてしまっては縁起が悪いが、相手が子どもとなれば話は別だ。ましてや実の息子や娘がいる前で、一人の親としてそんなことをするのは大変ためらわれた。

クラウスは迷わず、川に入っていった。カームも父親に続き川の中へ入っていく。

川は思ったより深かった。一番深いところでクラウスの体の腰の辺りまで届いていた。そして何より水が冷たい。まだ夏の終わりだというのに、まるで寒中水泳をしているようだ。山脈に雪が降り積もるのもうなずける。

娘はやはり異国の者らしかった。髪の色だけでなく着ている服も見慣れない形をしていた。

流れてくるのをカームと二人で待ち構え、丸太ごと受け止める。そこでクラウスは、娘の顔に張り付いている水草が僅かに揺れていることに気づく。

「生きてるぞ!」

父親の突然の言葉にカームも驚く。クラウスが体を支えて、カームが丸太などを捌けていく。両腕で抱きかかえた体はぐったりとしていた。

「おい!、しっかりしろ。わかるか?感じるか?」

クラウスは娘の顔をぺちぺちと叩く。返事こそしないものの、小さなうめき声を上げている。とにかく川から引き上げなければ。娘の体からはまったく体温を感じなかったのだ。きっと長い間、川の水に浸かっていたのだろう。

カームと協力して娘を川から引き上げる。陸に寝かしてやると、娘の顔が激しい嫌悪の色を見せてうめいた。娘のスカートが短かったおかげでその原因がよくわかった。右足のすねが赤紫色に変色していたのだ。ただの鬱血にも見えない。痛みに堪えているのだとすれば、もしかしたら骨が折れているのかもしれない。

「カーム、すぐ母さんを呼んできてくれ。それと、荷物の中に毛布あったろう。ありったけもってくるんだ」

カームは急いで馬車のほうへ走っていく。クラウスは、半分濡れているが自分の上着を娘に巻きつけるように着せてやった。

「今、毛布を持ってきてやるからな。踏ん張れよ」

娘は意識がほとんど無いのだろう。僅かに開かれた口からひゅーひゅーと息を吐いている。

すぐにヘレンがやってきて、カームが毛布を3枚も持って戻ってきた。ヘレンは娘の姿を見ると、まるでわが子のように抱きかかえた。

足に気をつけながら、毛布で娘を包み込む。

「ヘレン。どうすればいい?」

「足を固定してあげないと。何か板のようなものがあればいいのだけれど」

ヘレンは、娘のおでこに自分のおでこをくっつける。

「酷い熱。とにかくここじゃどうにもできないわ。ちゃんとお医者様に見せないと、このままじゃあぶない」

ヘレンの顔が険しくなるのをみて、クラウスは考え込んだ。ここから一番早く医者のいるところに行くならば、来た道を引き返して、王都の城下町へ戻るのが堅実である。しかし、それではクラウスたちの予定が狂ってしまう。

今城下町へ戻ってしまえば、今日中に西のフレーデルの街に着くことができなくなる。クラウス一家だけならば、引き返しても問題ないのだが、商会のキャラバンをさきにフレーデルに向かわせていたのだ。今日中に彼らと合流し、さらに西の大きな街へ発つ予定だったのだ。

クラウスは商会の頭だった。頭として、仲間たちの信頼を損なうわけには行かなかったが、一人の人間として、今ここで、娘を見捨てることもできなかった。

「カーム。馬たちの準備を。すぐにフレーデルに向かって発とう」

「あなた!?」

「商会のみんなを待たせるわけには行かない。この子にはなんとかがんばってもらおう。早足で向かえば、日が沈むまでにはつくはずだ。フレーデルに行けば、鷹の団もいる。団の治療師に見せれば何とかなるだろう」

ヘレンも何を一番に優先すべきかわかっていた。けれど、娘の辛そうな表情を見てしまうと、すぐにでも医者に見せて、その苦しみを和らげてやりたいと思ってしまう。

「わかったわ、クラウス」

妻の辛そうな表情に、クラウスもばつが悪そうに顔を歪めた。

クラウスとヘレンは、ナギにも協力してもらって、娘を荷馬車へ運んだ。先ほど後方を進んでいたほうの荷馬車だ。板の床に毛布をたくさん敷いて、即席のベットにし、そこに寝かせてやった。

「白いおねーちゃんどうしたの?」

「怪我してるの?」

ちび助ことグレンとスカーレットが母や姉たちの慌しい様子を見て、無邪気に聞いてくる。

「グレン、スカーレット。悪いんだけど、お父さんの馬車のほうに乗ってくれる?」

「ええー!なんで!」

真っ先に抗議をあげたのはグレンだった。

「父ちゃんの馬車は荷物いっぱいで座れるところ無いじゃん。」

「荷箱に座れば大丈夫よ。ね?」

ヘレンは優しくなだめたが、グレンはやだやだと我が侭を言ってを言うことを聞かなかった。

「ソーラも一緒にお願いできる?」

聞き分けのいいスカーレットはともかく、グレンは結局ソーラに手を引かれるまでぐちぐち言っていた。

馬を荷馬車につなぐと、一向はすぐに出立した。鞭を撃って馬の速度を速める。

二台の荷馬車が街道を早足で駆け抜けていった。



全身が火の海に浸かっているようだった。体が燃えるように熱い。それでいて、体が何かに縛られているみたいでまったく動かすことができない感覚が、私の苦しみを一層強めていた。視界はひたすら白かった。目を閉じているのであればおのずと視界は真っ暗なはずだが、まるで雲の中にいるように真っ白だった。耳には、何かの生き物の声が聞こえていた。少なくとも私が知る生物の鳴き声ではないと思う。

突然、真っ白な空間に赤い光の線が見えた。それは軌跡を帯びていて、右へ、左へ、ゆっくりと揺れている。真っ白すぎて、距離感もわからないがもしかしたら近づいてきているのかもしれない。けれど、その体は見えなかった。足音のようなものも聞こえない。

赤い光が私の目の前まで来ると、視界にバチバチと閃光が走り始めた。目の前で花火を連続で見せられているようだ。私は必死に目を閉じようと勤めたが、体は言うことを聞かない。あまりの眩しさに気が狂いそうだった。

やがて、閃光は私の視界の全てを覆いつくし、そこで私は、初めて大きな声をあげることができた



「うあぁっ!・・・」

いつから眠っていたのか。体を縛っている感覚は消え、全身の不快感は無くなっていた。ただ、体の熱だけは熱いままで、倦怠感があった。

「大丈夫かい?」

頭上から声が降ってきた。声の主を探すよりも早く、目の前にブロンド髪の女性の顔が現れた。ぼうっとその顔を眺めていると、おでこに乗っていた生ぬるい布が落ちてきた。

「・・・ここは?」

喉が乾いてうまく声が出せなかった。女性が布をどけてくれて、代わりににひんやりとした手が頬に乗せられた。

「安心して、馬車の中よ。今、フレーデルという街に向かってるの。どこか辛いところはない?」

辛いところといわれて、体の感覚が明確にはっきりとしてきた。

「あ、あしが、・・・」

ハルは足に猛烈な痛みを感じはじめた。じっとしているだけ痛みが全身に響いてくるので、どうにもできない。動かせばそれこそどうにかなってしまいそうだった。

「ごめんなさい、今は薬も何も無くて。街へつけば医者がいるから」

女性の顔も苦しそうだった。まるでハルの痛みをわかっているかのようだ。もう一人、ハルより少し年上の位の女の子が、皮袋持っていた。彼女は皮袋の口をハルの口へと持っていった。どうやら水筒のようだ。中には冷えた水が入っていて、枯れた喉が潤っていくのを感じた。

「あと少しで街につくわ。それまでの辛抱だから」

あと少しが、どれくらいなのかハルには検討がつかなかったが、日が傾き始めているのが見えた。それをみて、次第になぜこんな状況になっているのかが思い出されてきた。

(川に飛び込んで、それから・・・流されたんだ。)

おそらく川に落ちたのは昨夜の事なのだろう。気を失うのは初めてで、時間と記憶がかみ合わないのが可笑しく思えるが、だいたいそういうことだろう。そして、この人たちに助けられた。この世界の、此方側の住人に。

この人たちが何者で、味方なのか敵なのか。今はまだ、何もわからない。とにかく足が痛い。体が熱っぽくて仕方が無い。いっそ眠ったままのほうが楽だったかもしれない。せめてどういう風になっているのか見ようとして、上半身だけを起こした。毛布がかかっていて、よくわからないが、右足の周りに藁のようなものが巻かれている。その上から縄と鍵爪のようなフックで床に固定されている。動かないようにしているということは、折れているのかもしれない。

フレーデル、という街がどんなところかは行って見ればわかるだろう。どこまでがアストレアの領土なのか。とにかくハルが城を抜け出したことはもう知られているのだろう。あのジーグという老人は大丈夫だろうか。追手はくるだろうか。

様々な思案が頭をよぎるが、体の熱と足の痛みに意識を持っていかれる。やがてはそれさえも感じることがなくなり、ハルは再び意識を手放した。


次に目を覚ましたのは、夜だった。誰かが声を荒げるのを聞いて、重たい瞼を開いた。

先ほどとは違い、やわらかいベットに寝かされていて、場所は小部屋だった。相変わらず足は固定されていたが、痛みが和らいでいるように感じる。それでも足の神経がじりじりとしびれるような感覚は残っていた。体が熱っぽいのもそのままで、おでこに乗せられているタオルがやけに冷たく感じられる。体がだるく、体温計で計らずとも熱があるのがよくわかる。だが、ベットと掛け布団に包まれているだけで、荷馬車より断然体が楽だった。

布団の中を覗くと、制服から単衣のワンピースのような服に着替えさせられていた。肌触りからして、綿の衣類だろうが、全身汗ばんでいて不快感がある。

首を傾けると、部屋の扉が少しだけ開いていることに気づいた、扉の向こうは大きな部屋になっているようで、隙間から見覚えのある男女の後姿が見えた。

「ヘレン、気持ちはわかるが・・・。あの子が何者かわからないのに」

「あの子のつらそうな姿を見て黙っていられないわ。せめて、熱が下がるまで面倒を見てあげないと。私たちが、手放したらあの子一人になってしまうのよ?」

あの二人は、夫婦なのだろうか。川から引き上げてくれた男性と、荷馬車で介抱してくれた女性。どちらも髪の色や顔立ちからして日本人とはかけ離れている。ハルからしてみれば、外国人と認識するのが妥当だろう。けれど話している言葉が日本語なので、変な違和感を感じてしまう。

自分のことを話しているのだとハルはすぐに気づいた。彼らからすれば、ハルは拾い子。どこまで面倒を見るかで言い争っているのだろう。

「ソーラの時とは違うんだ。今僕たちには新しい我が家を築き上げる責任がある。子供達のためにも」

「その子供達の中にあの子を含めてはいけないの?」

「無計画過ぎるんだ。今は良くても、今後面倒を見てやれる保証はないだろう?商売を再開できるまでは、他人に構える余裕はないよ」

「でも、でも・・・。ここへ置いていくことなんてできないわ。」

ハルは聞いてはいけないような気がしたが、自分のことだから聞き逃すわけにもいかない。仮に彼らに見捨てられてもいい覚悟だけはしておかなければならない。

「二人とも、落ち着け」

クラウスとは違う男の声がした。ここからでは見えないがどうやらもう一人いるらしい。男の声は野太く、ずんと胸に響いてくるような声だった。

「隣で寝ているのだろう?あまり大きな声を出すと起きてしまうぞ。」

部屋を覗かれるのではと思い、ハルは布団に潜って寝ているふりをした。あいにくそんなことにはならなかったが、鉢合わせてしまっては気まずくなるので、このまま聞くことにした。

「クラウスの言うことは最もだ。お前の商会が商売を再開してくれないと俺たちとしても困る。だが、拾っておいてここで捨てていくのも不義なことだと思わないか?」

「しかし、うちは今新しい子を養ってやれる状態じゃない。カームとナギが大きくなったからある程度は楽だろうが。しっかり面倒を見てやれなければ、お互いにバツが悪いだろう?」

「別にお前の一家で引き取れだなんて言ってないだろう。俺はただ、ここきおいていくのは可哀想だってことを言ってるんだ。あの子にもちゃんと話しをして、どうするかを考えるのが大人だろう?」

「だが、・・・。いや、そうだな。自分のことばかり考えていたよ。すまないヘレン。」

「いいのよ別に。」

「どうする?出発は遅らせるか?」

「悪いがそうさせてくれ、頭領。1日だけあの子に時間をあげようと思う。明日の夜には出発する」

「わかった」

どんな表情で、どんな思いで、あんな話をしているのかハルには見えなかった。少なくとも彼らが、人並みよりお人よしで、無慈悲な人ではないことはわかった。だがハルにとって決定的なことは、彼らが此方側の人間だということだ。きっとこの世界は、文化も個人の価値観も環境ですら、ハルの知らないものなのだろう。信じていいものなのか。日本なら、子どもが棄てられていれば、面倒さえ見てくれなくとも、警察か保育所などに預けられることはあるだろう。しかし、ここは何もかもが違う異世界だ。先のことを考えれば考えるほど、不安しか募って来ない。

(誰も助けてくれない、そう考えなきゃ)

ハルはぎゅっと目をつむり、自分に言い聞かせていた。そして、そのまま深い眠りに落ちていくのだった。


異世界といっても、案外向こう側と変わらないのかもしれない。

ハルはそう印象を受けた。まだ日が昇って、1時間も経ってない頃だろう。時計が無いから正確な時間がわからないのがもどかしく感じる。けれど、学校に行くわけではないし、ましてやハルは今病人なのだから、時間など気にせず寝ていても誰も文句はいわないだろう。

部屋の窓から外を覗くと、朝日がまぶしくて、思わず目を細めた。窓の向こうは、広大な自然とはるか遠くに雪がつもった山脈が見えた。向こう側よりも空気がとても澄んでいて、地平線と空が鮮明に見える。排気ガスなんてものはないからそれも当然だろう。

初めてまともに見るこの世界の風景にハルは思わず見とれていた。向こう側で見るのは難しい大自然。少なくとも日本の東京にこんな風景が見られる家はないだろう。

扉が開く音がした。振り返ると、そこにはヘレンが立っていた。視線が合うと、ヘレンはふっと笑って、両腕に持っていた水が入った木桶をベットの横へおき、身を乗り出して、おでこを近づけてきた。

「うーん、大分熱が下がったみたいだね。顔色も昨日よりすごくいいわ。気分はどう?」

「あ、はい。えっと、楽になりました」

「それはよかった」

ヘレンは、水に浸されていたタオルを掬い上げぎゅっと絞るとそれでハルの顔を丁寧に拭き始めた。

「体も拭いたげるから、上脱いでくれるかい?」

ハルはいわれたとおりに腰紐と背中で縛ってある紐を解き、前を隠しながらワンピースの袖を脱いだ。ヘレンに背中を向け、今一度絞りなおしたタオルが、汗ばんだ背中に撫でられる。水が冷たくて、思わず声を上げてしまい、ヘレンに小さく笑われた。

「気持ちいい?井戸の水だからすごく冷たいでしょう?」

まだ僅かに熱っぽい体には、余計冷たく感じられた。

「前は自分で拭いておくれ」

ヘレンからタオルを受け取って、他のところ拭いていく。窓から僅かな風が拭いてきた。

「さむっ、」

「すぐに着替えを持ってきてあげるから」

着替え、といわれてハルは制服のことを思い出した。スカートのポケットに入っている生徒手帳のことも。

「あの!」

「ん?」

「私の服、どこにありますか?」

「あぁ、びしょびしょだったからねぇ昨日のうちに洗って、今乾かしているよ」

洗ってということは、ポケットに入っていた手帳もそのままだろうか。向こう側では一緒に洗濯してしまおうが、母に気をつけてよとお叱りを受けるくらいで気にもしなかったが、今では大事な向こう側の遺物だ。

水に浸かってボロボロになってしまっていたらどうしようと考えていると、その様子を察したのかヘレンがあっと思い出したように言って、

「これ、取っておいたよ。」

と前掛けのポケットからハルの生徒手帳を取り出した。それを見てハルは、安堵して息をはいた。

「大事なものなのかと思ってね。異国の物だからなんて書いてあるかわからないけれど、通関証みたいな物だと思ったよ。」

理由は何であれ、母親のまめさに今回ばかりは感謝しなければならないだろう。

「ありがとうございます」

「・・・よかった。」

「え。何が、ですか?」

ヘレンの目がやわらかく笑う。

「昨日は、すごくつらそうにしていたから。熱も酷かったし、足の鬱血も。できることなら代わってあげたかったわ。」

「・・・」

彼女の優しさは、単なるお人よしなんかではなかった。ヘレンは本当に心からハルのことを心配してくれていたのだ。何かが痛むのを感じてハルは、つい顔を背けてしまった。悟られないように、何もいわずにただ黙っていた。それでも、ヘレンは気にするそぶりも見せず拭き終わったタオルを受け取って、再び絞り始めた。

「着替え持ってくるから、待っててね」

ヘレンは木桶を持って部屋から出て行った。ハルは、ワンピースを袖は通さず、背中の紐だけ縛って取り合えずかぶっておく事にした。

実の母親からも、こんなにも純粋な愛情は受け取ったことが無かったかもしれない。普段から毎日こんな風に優しくされていては、それはそれで面倒だと思うかもしれないが。受けた愛情に理由をつけていてはきりがないのはわかっている。けれども、その愛が大きければ大きいほど、受け止め方がわからなくなる。今はすごく、くすぐったい。

ヘレンはすぐに戻ってきた。やはりこの世界の衣服は独特だった。言うなれば西洋風な雰囲気で、日本のファッションからはかけ離れていた。渡されたのは肌着の他に、半袖のTシャツのようなものに、ロングスカート、それとマントだった。

「あの、これどうやって着るんですか?」

向こう側ではマントなんてものを見たことが無かったハルは、それをどう着ればいいかわからなかった。

「これはコーシェといってね、こうやって背中から羽織って体を覆う上着なの」

そう言ってヘレンは、先に自分が着て見せた。言うなれば、袖の無いコートのようなものだろう。マントには変わりないだろうが、袖の代わりにスリットが入っていて、腕が出せるようになっていた。

「遊牧民や馬に乗る人なんかが着る服なんだけどね、あったかくて使い勝手がいいから、普段着としてもさしつかえないのよ」

ハルは教えられたとおりに羽織ってみる。肩を包むように巻きつけ前を備え付けの紐で結ぶ。半袖のだけれど腕がコーシェの内側にあるため、中がとても暖かい。コートと違って締め付けがなく、ゆったりとしているので、着心地もとてもよかった。

「どう?やっぱり異国の服は着慣れない?」

「異国・・・ですか?」

「あら、違う?白髪なんてはじめて見たから、てっきり異国の出だと思ったんだけど。」

ヘレナが当然のようにそう言うからハルは言葉に詰まってしまった。

(異国っていうか、そもそもこの世界の住人じゃないんだけどなぁ)

今この場で自分の事情を話しても、信じてもらえないだろうし、しかしそうなるとどう答えたものか。それにしても、白髪が珍しいというのは意外だった。あのジーグという老人、白髪はこの世界にも存在すると言っていたような気がするのだが、違うのだろうか。それとも、少数民族みたいなのがいて、ほとんど表に出てこないような隠れ人種だったりするのだろうか。

「ヘレン。入るぞ」

扉の向こうから男の声がした。ヘレンが返事して扉を開くと、そこには頭が扉の上部に頭が着きそうなほど背の高い大男が待っていた。

「どうぞ、リベルト。」

「失礼するぞ」

男は松葉杖をもっていた。だが、それよりもハルが気になったのは男が背中に背負っているとてつもなく大きな剣だった。石突は男の頭頂部から、剣先はそれこそ床に着きそうなくらい長く、剣幅も並の人間の肩幅の半分はあろうという得物だ。仮に男の身長が190センチだとしたら少なくとも180センチはあろうものだ。武器というものがあること事態、ハルにとっては異常だというのに、その規格外の大きさに驚きを通り越して呆れ果ててしまった。

「杖を持ってきた。一本しか用意できなかったがおおめに見てくれ。娘っ子。」

「あ、ありがとうございます」

リベルトと呼ばれた男は、杖をベットに立てかけ、自分は壁に寄りかかって、ハルと向き合った。自分が座っているせいでリベルトが余計大きく感じ、威圧感がとてつもなかった。

「それで。どうなんだ?」

リベルトはヘレンに向かって言った。いきなり振られたヘレンは、ばつが悪そうに顔を背けた。二人の様子を見ていたハルは二人の顔を行ったりきたりさせていた。

「なんだ。まだ話してないのか。いつまでも黙っていても仕方ないだろう」

「だって、・・・」

次の句をつげないヘレンはハルのほうを見た。今にも泣き出しそうな視線だった。

「お前たち夫婦は、優しさばかりで思い切りが無さ過ぎるんだ。だから揉める」

「意地悪ね、リベルト。私たちからしたら、あなたは厳しすぎるわ」

「それなりの経験をしてきたからな」

リベルトがハルに手を差し出してきた。

「リベルト・アルバーンだ。鷹の団の頭領で、今はファルニール商会と一緒にキャラバンをやっている」

ハルは、その大きな手に自分の手を重ねた。ごつごつとしていて、握られているだけなのに手の圧迫感が他人のそれとは比べ物にならない。腕もハルの棒のような細腕の3倍はあると思われるくらいたくましかった。

「ハル、です。アカバネ、ハル。」

「珍しい名だな。まぁいい。お前さんには悪いが、昨日俺とヘレン、こいつの旦那のクラウスとお前をどうするか話し合っていた」

急な話だとハルは思った。つい今しがた新しい衣服の発見に心が躍りだそうとしていたのに、リベルトの登場で一気に憂鬱な気分に戻されてしまった。まるで嵐のようだ。それにまったく遠慮が感じられない。自分をどうするかという、まるで物のような扱いだ。雑にもほどがある。

しかし、彼らからしたらその程度のことなのだろう。ハルと出会ってしまったことは彼らにとって面倒ごとが増えただけで、出会いさえしなければ、このヘレンという女性も心を痛めることも無かったのだ。

「ごめんなさい。本当に。あなたを助けてあげられる余裕が今の私たちにはなくて。」

ヘレンはついに両手で顔を覆って隠した。先程からずっと堪えていたのだろう。

「誰にだって事情はある。お前にも、俺たちにもな。その上でハル。お前さんの意思を聞いておきたい。」

「意思・・・ですか?」

「そうだ。俺たちは、素性もしれないやつを養ってやれるほど裕福じゃない。今だってお前さんのために時間を割いて、この街に留まっている。本来なら昨夜ここを出ているはずだった。」

頭の芯がしびれるような感覚がする。大切な話なのに、耳をふさぎたくなるような話だ。ハルは自分が目の前の人たちに多大な迷惑を掛けていることを改めて認識した。ここまでよくしてくれたことがハルにとっては奇跡のようなものなのだ。この街に置き去りにされていてもおかしくなかった。

「今のお前さんはまともに身動き取れない。怪我をしているからな。俺たちも鬼じゃない。それがよくなるまでは面倒を見てやる。だが、怪我が治った後の話は別だ。ただでお前さんに飯をやるわけにはいかない」

リベルトの話し方は、確信から避けているような言い方だった。気の弱いヘレンに気を使っているのかもしれないが、もしかしたらハルを試しているのかもしれない。意思を聞きたいといっていたからハルの口からどうすべきかを聞きたいのだろう。

つまりは、働かざるもの食うべからず。働いてその対価を受け取れということなのだろう。世の中の仕組みは向こう側でも此方側でも同じということだ。

「お前にその気があるなら、選択肢を与えてやらないこともない。」

「・・・なにをすれば、どうすれば、あなたたちが納得する形に収まりますか?」

ハルはリベルトをまっすぐ見捉えた。

「・・・一つはクラウスの商会で商売に勤しむことだ。だが、彼奴らはいま新人を雇えるほど暇じゃなくてな。ただでさえ商売は腕が必要だ。素人じゃやっていけない。もちろん努力しだいだが・・・。もう一つは、おれの傭兵団に来ることだ。」

「傭兵?」

「簡単に言えば人を守る仕事だ。今は商団の護衛をしている。」

人を守るというと警察や自衛隊のようなイメージがハルの中に浮かんだ。向こう側では彼らの存在はとても頼もしいし、社会的にも必要不可欠な職種だろう。

「傭兵は素人でもできないことはない。もちろんそれなりに鍛えてやることは可能だ。だが、軽い気持ちでやるような仕事じゃない。命を懸けた仕事だ。依頼主を守るためならば、その身を盾にして戦わなければならない。」

「命を懸けて・・・」

できるだろうか。自分の身を守ることすらできるかわからないのに、もしそういった状況に置かれて、自分の命を擲って戦うことができるだろうか。考えて見れば、自衛隊だって今は日本が平和であるだけで、戦争が始まれば彼らは真っ先にその身を挺するのだ。ハルたち一般市民よりも先に命を落としていくのだ。

想像するのは簡単だった。緑の迷彩服を着た自分が銃弾の嵐にさらされ、真っ赤な血を撒き散らしながら紙っぺらのように吹き飛ばされていく。

この世界では、銃なんてものはないからもっと違う形の死になるのだろうが、なんにせよ、ハルは傭兵になることを選べばそんな未来もあるかもしれないのだ。

「金はたくさんもらえるな。とくに商人は。だがまぁ、売れなければ働いてないのと同じだ。その点傭兵は仕事さえもらえれば、安定して稼げる。どちらを選んでも一長一短。後はお前がどうしたいかだ。」

自分次第と言われて、ハルは酷く困惑していた。どちらが正しいのか、その助言すらもらえない。ここには学校の先生も、人生の先輩の両親もいない。自分の進路を自分で決めなければならない。

そういうことはまだまだ先のことだと思っていた。大学受験に就活。いつかはだれもが通る道だが、こんなにも早く選択の日が来るとは思ってもいなかった。それにハルはまだ、自分の道を決められるほど大人になれてはいなかった。

「今すぐ決めなくてもいいのよ?まだ、体も本調子じゃないんだもの。もう少し落ち着いてからでも・・・」

「決めるなら早いほうがいい。先延ばしにしたって何の意味も無いからな。」

「リベルト!」

「本当のことだろう。そもそも、本来俺たちはこの子を助けてやる義理は無いんだ。この子が決められなけれ、俺たちは時間を無駄にしたのと同じなんだぞ。」

正論ばかり述べるリベルトにヘレンは言葉を失くしていた。リベルトの言動は雑で無慈悲に思えるが、間違ったことは言ってないのだ。

(まだ、マシな方だったのかな)

ハルは本当に運が良かったのだ。たまたま助けてもらった人が心ある人で、難しい条件だけれど仕事をくれて養って貰えるのだから。相手が相手なら、もっと酷いことになっていたかもしれない。そもそも川に流されたまま拾ってすらもらえなかったかもしれない。そう考えれば、むしろ今の状況には感謝しなければならないだろう。

ハルは心に決めた。

「私を、傭兵団に入れてください。」

「・・・いいんだな?商人になるという手もあるが?」

「はい、私は身一つですし、商売の知識も経験ありませんから。」

「そうか。よし、いいだろう。今からお前は鷹の団の一員だ。」

リベルトの顔がにかっと笑った。つかみどころの難しい人だ、とハルは心の中で思ったが、ハル自身も不思議と笑みがこぼれていた。

「どうだ?簡単だろうヘレン?お前とクラウスは心配しすぎだ。」

「あなたほど強くないの。心配なんていくらでもするわ。」

ヘレンはまだどこか納得しきれていないようだったが、表情が少しスッキリしたようだった。

「さて、ハル。さっきも言ったが、傭兵稼業は厳しいぞ。しっかり鍛えてやるから覚悟しておけ?」

「はい、よろしくお願いします。」


慣れない松葉杖をなんとか使いこなし、一人で歩けるようになるまでそう時間はかからなかった。ただ、体力を使うのでしばらくは筋肉痛に耐えなければならないだろう。

ハルが寝ていたのは宿屋の一室だったようだ。このフレーデルという街には彼らの寝床はないらしい。ハルが歩けるようになるのと同時に宿を出て、リベルトとヘレンに連れられて、街の郊外までやってきた。

そこには、無数の馬と馬車がたむろしていて、それと同じくらいテントが張ってあった。そして当然それらの主の人がたくさんいた。

彼らがファルニール商会のキャラバンだった。

「頭にベレーを被ってるのがクラウスんところのやつらで、それ以外はうちの連中だ。」

リベルトのいうとおり、赤いベレー帽被っている人たちは、テント馬車の周辺に散らかっている荷物を数えたりしていて、帽子を被っていない人たちは、腰や背中に何かしらの武器を下げて、商会の人たちとはまた違った雰囲気を漂わせていた。

日傾き始めた頃、一同は落ち着いたように仕事の手を止め、それを機にハルは紹介を受けた。大勢が円を作るようにして集まり、ハルはリベルトの隣で無数の視線を何とかいなしていた。何がそんなに興味があるのか、白髪がそんなに珍しいのだろうか。やたらとじろじろ見られていた気がする。

その日はそのまま馬車に乗せられて、一行とともに暗い街道を進むことになった。明かりは荷馬車の屋根についているランタンだけだったから、荷台の中はほとんど真っ暗だった。この世界の住民には普通なのだろうが、電気に慣れてしまっているハルは夜目を培う必要があるだろう。

キャラバンというものは、頭の中で思い浮かべることは出来たが、実際にこうしてみてみると大名行列みたいだ。馬車が縦列に並んで進み、その列のを囲むように騎兵隊が散開しているのだ。まるで映画化の撮影みたいに思えた。

それに夜だというのに、キャラバンの人たちは賑やかだった。主にクラウス家の一番下の子たちが騒々しいだけだが、その明るさのおかげで、ハルはすんなりと商会と団の人たちに溶け込むことができた。


騒ぎ疲れたグレンとスカーレットを寝かしつけたヘレンがハルの隣へきた。

「熱はもう大丈夫みたいだね。」

「はい、どうにか」

「子どもたちは二、三日寝込んでしまうのがお決まりなのにねえ。ハルくらいになるともう体も丈夫になってくるのよね。」

ハルは苦笑いをして、そっと自分の右足に巻いてある包帯に触れる。今は薬を塗っているため、痛みはほとんど感じられない。板で固定されているから、膝から下が棒になった感覚だ。

「いろいろ、考えてました。もっと酷い目にあってもおかしくなかったんだろうって。」

ヘレンがおもむろにハルの手を掴む。その手は暖かくて、向こう側の母を思い出させる。母親の手というのはどうしてこんなにも柔らかいのだろう。それとも、世の女性たちはみんなこんな風になれるのだろうか。生憎ハルは、母親を懐かしんで涙を見せるような女子ではなかったから、僅かに口元を綻ばせてただけですんだ。泣いてはいけないことは無い。だが、今は胸の中にしまっておくべきだ。これから幾度となく向こう側を思い出して憂えるのだから。

「ハルは強い子ね。私があなたなら、きっと泣きついてたわ。」

今だけは、自分が男前な正確なのでよかったと思える。男前というか、単に絶望したくないという反抗心があるだけなのだが。これから先、その意思もいつまで保てるか。ハルにはそれだけが不安で仕方が無かった。

とはいえ、先のことはわからないのだから、考えたってしょうがない。

ヘレンが、小さな燭台を取り出して、明かりを灯してくれた。冷えた夜の空気を僅かに暖める小さな火をハルは見つめていた。火でさえも向こう側ではあまり見ることはない。電気に比べれば弱すぎる光。それでもかすかに揺らめくその姿が不思議な気持ちにさせてくれる。

(生き残ることは出来た。あとは生き方を学ばないと・・・)

ハルの薄紅色の目に小さな炎が灯っていた。

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