夜遅く、タクヤとタコが事務所に戻ってきた。

「ミーちゃん、まだ居たんだ」

「連絡もくれないんだもの、待ってるしかないでしょう」

「それで、何でタコまでいるの」

 夢見がねむそうな目で、タクヤとタコを見る。

「成り行きでさ」

「それに、あいつのこと知らないわけでもないみたいで」

「なんで、あんたが」

 夢見はタコの顔をチラリと睨む。

「まあいいや、そのかわり」

「守秘義務ですよね」

 夢見を遮って、タコがうれしそうに口をはさんだ。

「とにかく、もういいから」夢見がタコに帰るよう促す。

「それが、そうもいかないんだ」

「なんでぇ」

「詳しいことはここで聞くことになってて」

「そうなの」

 夢見はそう言って立ち上がると、ソファーから離れた。

「ミーちゃんも聞いてよ」

「調べものがある」

 夢見はデスクに向かって座り、パソコンの画面を見つめる。

「それでタコちゃん、その悪い奴って」

「彼女が言うには」

 タクヤが身を乗り出す。

「いい男らしいんです」

 夢見が吹き出した音が聞こえた。

「彼女は面食いなの」

「そうじゃないはずなんですが」

「そうだよね」

「タコちゃんの彼女なんだから」

「あなた、彼女いたの」

 夢見が急に大きな声を上げる。

「ミーちゃん、そうなんだよ」

「それで、いまその男はどこにいるの」

「会社ごと消えちゃったらしいです」

「そうか」タクヤがそうつぶやく。

「それじゃ、どうしてその男と秦野が知り合いだってわかるの」

「二人とも同級生ですから」

「僕、今ではこんな感じだけど、大学に入ったころは頃はちゃんと行ってたんですよ」

「仲良かったんだ」

「二人はね」

「タコちゃんは」

「僕は覚えているけど、向こうは覚えてないと思います」

「それは好都合だね」

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