「姐さん、今日は一人かい」

「最近はほとんど一人じゃない」

 夢見はエビマヨを箸でつまんで口に入れた。

「本物だよ」

「わかってるよ。そもそも海老に偽物があるの」

「あの兄ちゃんには見抜かれた」

「あいつね」

 夢見はそう言ってニヤリと笑う。

「どんな仕事してるんだい」

「あんたの仕事は金になるって言ってたよ」

「選んでいるから」

「どうやって」

「警察にはいろいろ相談事があるの、市民から」

「でも、なかなか警察は動けない」

「なるほど、隙間産業だね」

「でも、いいのかい警察がそんなことして」

「警察が事情を説明して、本当に調べてほしいなら本人があたしに依頼してくる」

「それも微妙じゃない。姐さんを斡旋してるんだろう」

「ダイレクトにはしてないよ」

「オブラートに包むように」

 夢見はちょっとイラだって満帆のおやじに言う。

「全部受けてるわけじゃないし」

「他にも回したこともある」

「守秘義務ってやつ」

「それはちょっと違うけど」

「守秘義務は、依頼を受けた内容や調査してわかったことは話せないってこと」

 満帆のおやじが夢見を見る。

「でも、俺の依頼はこの辺じゃ誰でも知ってるよ」

「それはね、調査の一環だから」

 夢見が語気を強める。

「それに、娘が来たってうれしそうに自分から吹聴してるのは大将じゃない」

「調査した結果は誰にも言ってないはずだよ」

 ニッコリ笑って、大将が夢見を見る。

「やっぱり姐さん、好きだなあ」

「やめてよ」


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