第62話 いざ、試合へ!!

 審判が前半終了を告げるホイッスルを鳴らし、両チームの選手がロッカールームへと引き上げた。

 俺達ベンチメンバーもスターティングメンバーと共にロッカールームへと戻る。

 戻る前に一旦立ち止り、電光掲示板に映るスコアーボードを見た。



「前半終わって、0対0か」



 現在前半が終わって0対0。スコアだけ見ると試合は拮抗している。

 だが前半は相手チームに一方的に押し込まれる展開だったので、得点差以上の実力差を痛感していた。



「去年の夏の大会全国優勝した高校と戦っているということを加味しても、出来すぎな程健闘しているな」



 全員が全力で走ったからこその結果だが、この調子が90分も続くとは思えない。

 だからこそこの拮抗した試合につながっているのだけれど、先輩達の疲労具合が心配だ。



「春樹!! そんな所でぼーっとするな!!」


「すいません!! 今戻ります!!」



 ロッカールームに戻ると中には既に先輩達が座っている。

 レギュラー組の先輩達は椅子に座っており、全員が下を向いている。



「もう全員が限界みたいだな」



 ベンチに戻ってきたレギュラーメンバー全員が疲弊している。

 全員が肩で息をしていて、これ以上走れる状態にない。



「無理もないか。スコア以上に延々と相手チームに攻められていたんだ」



 その精神的な疲れは普段の倍以上だろう。

 試合内容的にも一方的に殴られるサンドバッグ状態。

 正直いつ点を取られてもおかしくはなかった。



「お前達!! 前半はよく耐えた!! あの名門校相手にこの結果はさすがだ!!」



 監督は味方を鼓舞するようなことを言っているけど、明らかに先輩達は限界を超えている。

 ベンチに座る先輩達の中には足が震えている人達もいる。前半から全員が飛ばした結果、後半戦にむけての体力が残っていないように見えた。



「後半からはメンバーを変更して、一気に勝負に出る。春樹!! いつも通り頼むぞ!!」


「はい!!」



 よし!! やっと出番が来た!!

 全国優勝高校相手に自分がどのぐらい通用するか試す時が来た。



「ただでさえ今日は姉ちゃんや玲奈達が見に来てくれているんだ。絶対やってやる」



 特に玲奈や楓には色々と付き合ってもらったんだ。

 その成果を見せる為にも、絶対に負けられない。



「いいかお前達!! この試合は1点が重要な試合になる!! 全員気を引き締めて行けよ!!」


「はい!!」


「泣いても笑っても残りは35分だ!! 最後まで全力で走っていけ!!」



 監督の激を受けて、俺達は試合の準備に入った。

 俺もスパイクの紐を結び試合の準備をする。



「春樹」


「何ですか、監督?」


「後半の話だけど、出来るだけ周りのフォローをしてやってくれ」


「わかりました」


「あまりにも攻められているようなら、守備の方に周ってもいい」


「はい!!」


「頼むぞ。元気なお前が頼みなんだ」



 それだけ言うと監督はキーパーやDF陣と色々と話している。

 守備の戦術について打ち合わせをしているように見えた。



「監督がここまで俺に細かく指示したのは、きっと先輩達が限界だからだろうな」



 だから後半から投入される元気いっぱいの俺に周りのフォローをお願いしたんだ。

 監督の期待に応える為にも、全力でピッチを走り回らないといけない。



「春樹、そろそろ試合開始だから行こう」


「はい、先輩!!」



 俺は先輩と共にロッカールームへと出る。

 そして蒸し暑い気候の中、後半のピッチ上に立つのだった。


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