第11話 夢現 ヴィヴィアンSide
ゆらゆらと凪いだ海の上を揺蕩う小舟の様な……と申しましょうか。
夢かはたまた現実なのか、今の私にはそれさえも余りわかっていないのだと思います。
そんなあやふやな中でもはっきりとわかるもの。
それは温かくも心地の良い温もり。
恐ろしい夢の後に必ず泣きじゃくる私の背を優しく撫で、そうして熱くも甘過ぎる……時に嵐の様な荒々しさをも感じてしまうけれどもです。
何故かあの人の腕の、逞しい胸の温もりは酷く心地良く、余りに心地良過ぎてまた泣いてしまうのです。
「愛している。何があろうとも決して貴女を見つけるから!!」
「ええ、ええ絶対にまた私を探し出して下さいませ」
ふふ、見つけるとか探すだなんて……今こうして肌と肌を寄せ合っていると言うのに変ですね。
私は思わず小さく笑ってしまいます。
あの人と、リーヴィーと共に暮らすこの幸せを――――?
幸せ?
またです。
幸せと言う言葉がキーワードとなり、私の胸の中が更に妖しくざわつくのです。
『そなたの幸せはここに
『そうよ貴女は私。私は既にあの御方の手を取り進む道を示されたわ』
道を示された?
何故?
何故黒い霞に包まれた御方ではなくリーヴィーではないのですか!!
貴女はこんなにも私とそっくりなのに……。
『ふふ、ふざけるのも大概になさい……。貴女は私。私は貴女、いいえ私はあるべき姿の貴女よ。もう間もなく
目の前の私が?
いいえ違う。
私とそっくりな女性は纏っているだろう黒い霞と共にその
『ぐふっ、安心した様な
シューシューと黒い靄が蒸発していく様な音と共にその女性の苦しみはより一層激しくなればなる程、不思議と私の心はとても軽くなります。
「――――失せろっ!!」
リーヴィー?
確かに力強くも男性らしい聞き覚えのあり過ぎる彼の声です。
でもどうして私の夢に?
変ですね。
やはりこれも夢――――なのでしょうか。
「そうだよヴィー、だから安心して目覚めるといいよ」
その言葉通り本当に目覚めればリーヴィーが微笑んで私を見ていますでも……。
「寝顔を見るのは反則……です」
そうお間抜けな寝顔なんて美し過ぎる彼には絶対に見せたくなんてありませんもの。
「ふふ、僕には貴女がとても可愛らしくもまた美しいのだけれどね」
どうして何時も何時も心の声が聞こえてしまうのでしょう。
「愛する貴女の事だからね。愛する貴女の事ならば僕は何でも知っているよ」
「それは貴方限定……ですわ」
「それはとても光栄だ」
そう言って朗らかに笑う貴方を見つめているだけで、先程まで不安だった心がじわりと温かさを取り戻すのです。
そんな私はと言えばどうやら彼の腕の中で眠っていたようです。
逃げも隠れも出来ないこの擽ったくもじぃんと甘く痺れる様な感情は一体何なのでしょうか。
本当に今、私は泣き出したくなるくらい――――。
お願い、今この瞬間の時を永遠に止めて……欲しいです。
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