第9話  切なる願い  リーヴァイSide

「――――はっ」

「んンっ⁉」


 ずるりと俺は愛おしい過ぎる最愛の半身でもあるヴィーの胎内なかより俺自身をゆっくりと引き抜いけていく。

 

「ふ、可愛い。愛しているよヴィー」


 無理をさせたと言う自覚は大いにある。

 そしてやらかしたと言う自覚も――――。


「だが全ては貴女が愛おし過ぎるのが悪いのだよ。俺の俺だけの女神……」


 最後は失神同然と言うかの様に深い眠りの中へと誘われたと言うのに、俺の可愛い女神は俺自身を引き抜く事さえ無意識にびくびくとその柔らかな身体を痙攣させて感じてくれている。


 愛している。

 好きだ。

 誰よりも愛しい。

 また何者にも代え難い。

 この世の何よりもっ、そしてこの俺自身の命よりもっ、それら全てを掻き集めたとしても尚貴女への愛しさは日々一層募るばかりなのだ。


 何度こうして貴女の中へ己の慾を愛情と共に吐き出した事だろう。

 そして後どれ程愛せば貴女はこの俺の切ない想いに気づいてくれるのだろうか。

 

 いや、こうして気の遠くなる程の時の輪廻の輪の中で今再び巡り逢い、そしてようやく愛し合う事が出来る奇跡を満足するべきなのだろうか。

 

 貴女をこの腕の中へ抱く事の出来る幸せだけを満足――――俺だけの想いよりも何よりもその方が幸せな事も確かにあるのだろうがしかしっ、いや……これはやはり贅沢過ぎる願いなのだろう。

 またこの現実を何としても護り切らねばいけない。

 そう、確かに奴は俺同様に動き始めている。


 

 あの後直ぐに転移し屋敷へと着いた瞬間、俺は奴の痕跡が僅かだが残っている事に気づいたのだ。

 あろう事か既に奴はヴィーへの干渉を始めている。

 ゆっくりとそして確実に奴は動いている。

 またご丁寧に俺へわかるよう痕跡を残したあいつの性格の悪さは昔と何ら変わりがないらしい。

 そう、その莫大な力さえも……。


 あとどのくらいこうしてヴィーを護り切れるだろうか。

 ヴィーの覚醒をどの程度遅らせられるのだろうか。

 

 ヴィー、本音を言えば俺は貴女に直ぐにでも目覚めて欲しい!!


 そうして昔の様に俺をその美しい紫水晶の瞳の奥へ映して欲しい。

 だがっ、それは!!


 それを願い現実としてしまえば恐らく貴女はもう貴女自身ではいられまい。

 だから俺は多くを望みはしない。


 愛する貴女より愛の言葉を紡がれる事は願わない。

 でもその代わり貴女が何も言えない代わりに俺が貴女へ囁き続けよう。

 何時如何なる時でも俺の愛は貴女一人だけ。


 だからこれだけは忘れないで。

 これより起こりうるだろう様々な事、そしてどの様な事が起ころうとも最後には俺が貴女の盾となり剣となろう。

 


 愛している。

 こうして貴女の身体を愛おしみ……バードにすれば貪っていると言われようともだっ!!


 しかしどれだけ跳ね返せるのかはわからない。

 それでも奴の力を少しでも削げられる様に、貴女に最期の選択が自身の意思で行えられるよう俺は全身全霊を賭して貴女の胎内へ俺のありったけの力を注ぎ込む!!


 それこそが俺の貴女への愛の証しなのだから。

 ヴィー、貴女を永遠に愛しているよ。


 そうして今宵も……もう夜明け間近だけれども俺は寝台の中で愛する貴女を抱き締め、貴女の温もりを感じる中で眠りに就いたのだ。

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