第16話 鬼ごっこ

「起立」


「礼」


昼休みになる。


俺は弁当を持ち、屋上に向かうことにした。


「アーフィルオロもここに居たんだ」


「ええ」


アーフィルオロから少し距離を置いて、座り、弁当を広げる。

俺も食べ始める。


残り半分ぐらいになると、


「颯颯は昨日のこと、覚えています?」


急に聞かれる。

んんんん、どう返すのが正解なんだ?

昨日のなに?パンツ見たことか泣かせたこと?


「え?、なに?」


俺はわからないから聞く。


「え?じゃないです、レディが見られて困ることです」


よく見るとアーフィルオロはもう食べ終わっている。

俺は箸を弁当の上に置き、


「あ、アーフィルオロが空中に浮かんでいるときにパンツが見えてしまったことか」


「え?」


アーフィルオロは俺が予想外のことを言ったのか素っ頓狂な声をだす。


「え?」


俺は違うのか?そんな確認の「え?」だ。


ただでさえ二人しか居ないから静かなのに、春なのに寒気を感じるほどの冷たい空間に変わった。


「決闘しろ!!」


急にアーフィルオロは瞳の中がグルグルしてそんなことを言ってくる。

混乱してるな。


「話せば分かるだから決闘はやめよう」


俺は言いつつ、弁当を片付け、屋上のドアノブを回して勢いよく逃げる。


「待てぇぇぇぇぇぇええええ!!」


俺は急いでクラスに戻り、弁当をかばんの中に入れるとすぐにクラスから出る。

逃げるのに教室は不利だ。


クラスから出ると屋上からアーフィルオロが追ってくる。

ああ、弁当を片付けていたのね。

今は逃げることに集中しよう。

決闘するのは不味いからな。


俺は廊下を走る。

規則は知らん!

アーフィルオロはものすごいスピードで追ってくる。

それでも捕まらないように走る。


鬼ごっこの開始だ。

俺は気づいていなかった、他に鬼が居ることに。








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