素人でも英雄になれますか?

希望の花

プロローグ

「なーなー文ちゃん。ここの問題どう解いたよ?」

「お?優。いいか、そこの問題はな、飛ばすんだ」

「さっすが文ちゃん!俺と同じぃ!」

「僕らは互いにわからないところなんかねえ程の付き合いだからね」

高校一年の夏。直前に二学期中間考査を控えた俺たちはいつも通り文ちゃん──佐野文武の家で勉強していた。

「お前らバカかよ。そこはこう解くんだって」

これもいつも通り。自称天才の山本清がバカな俺らに解説をする。中学校時代からの友達は何一つ変わらない。

集まるのは常に文ちゃんの家。俺と文ちゃんがわからないのも、佐野が解説するのも。途中で投げ出して全員でゲームを始めるのも。何一つ変わらない日常だったのに。


その日、日常は崩れた。


「ん?文ちゃん、誰かテレビつけたっけ?」

俺らから2m離れた先で、テレビが勝手についた。誰もリモコンに触れていないにも関わらず。

「あれ?おかしいな。僕止めてくるよ」

文ちゃんが重そうな肥満体を立たせ、テレビの電源を落としに行った。テレビはずっと砂嵐を起こしていた。何か、不気味だ。そう思った時、文ちゃんの体が消えた。いや、吸い込まれた。

「文ちゃん!?」

何となくテレビを見ていた俺は目の前で起こった有り得ない現実に思わず立ち上がった。

「あれ?佐野のやつどこ行ったんだ?」

俺の視線の先を見て山本テレビを見た。砂嵐は収まらない。テレビの電源も落ちてない。


「おい優。まさか佐野のやつがテレビに入ったとか言うんじゃねえだろうな......」

俺は、何も答えずに、テレビへと近寄った。

「まて、優。小学生の時にさ、こんな怪談が流行ったよな。テレビの画面がザーってなり出したら、すぐに電源を切れ。じゃなきゃ、二分後に、テレビから白黒の手が伸びて、テレビの世界に引き込ずりこまれる。っていう。あれに、似てないか?」

山本らしくなかった。山本はいつも現実的に考え、お化け、幽霊、そういったものは一切信じなかったからだ。

「あったね。でも、それが今関係あるの?」

「もうすぐ、二分だ」

そう山本が言った瞬間、白黒のテレビから腕が出てきた。

「逃げろ!優」

そんな声を聞いても、俺の体は、恐怖で動かなかった。為す術なく体を握られ、液晶画面へと連れ込まれる。山本も、抵抗せず、連れていかれていた。


しばらくして、周囲のザーという音が消えた。閉じていた目をゆっくりと開ける。


そこには、豪華絢爛な椅子に、一目で高級とわかる壺、歴戦の風格を漂わせる鎧の兵士達があった。


「え?」

俺はこの事態にただただ混乱するしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素人でも英雄になれますか? 希望の花 @teru2015

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ