第4話
神様からもらった知識と目で見える情報を元に一番近くの街に向かい、検問で仮通行証を貰って街の中に入った。
なぜ仮通行証なのかと言えば、冒険者のギルドカードなど身元がわかる身元の証明できるものがないといけないらしく、この仮通行証の効力がある3日以内にちゃんとしたものを見せないといけないらしい。
なんてガバガバセキュリティ。
引用は神様wikiだ。便利だな神様wiki。
そんなわけで、すぐに通行証になる、且つ俺の職業のことも考えて冒険者カードの登録をしにギルドに行くことにした。
神様wiki曰く、この街のギルドの場所は門を出た大通りをまっすぐ歩いた所の1番奥にある大きな建物。
つまりはまっすぐ歩いたら見えてくる場所。
そこまでの街の様子をほえーほえーといいながら口を開けて田舎者感満載で見ながら歩いていた。
石畳に、レンガ造りの家たちが所狭しと並んでいる。
町にいる人の様子を見てみるとそこそこ活気があるように感じた。
この街の税金とか、どうなってるんだろ?
人の顔が明るい。それにちゃんと食べてるのがよくわかる。
だから、あんまり税が重い感じじゃなさそうだけど。
この世界がどんなだか知らないけどやっぱり地域ごとに税が重い国と軽い国があるのだろう。
国選びは大切だと思ったけど、この感じなら問題なさそうだな。
まあ、実際のところはわからんが。
「おい、見ろよあの子。あんな可愛い子、この街にいたか?」
「いいや、俺も初めて見た。あの動き方、どっか違う場所から来たんだろうな」
男からジロジロ見られているらしい。
せめて見えない所、聞こえない所でそういう話をしていただきたい。
男に褒められても嬉しくないし。
女って気が付くもんなんだな。こういう男の下衆な視線とか会話。
これを含むいくつかの不快な視線を受けながら、俺はようやく道の一番奥──ギルドについた。
中をのぞいてみると酒場に事務所のカウンターが付いたような俺の感覚で言えば珍妙な内装と、真昼間から酒を飲んでガハハと笑っている怖そうな人たちが見えた。
そう、見えただけ。
それらの確実にうるさくて臭いだろう酒場特有のものは全く感じなかった。
魔法の結界的なもので臭いと声を周りに行かないようにしているらしい。
便利なもんだな、魔法。なんでもありなのでは?
扉を一歩でもくぐると、酒臭さが周りに充満して少し気持ち悪くなった。
未成年は飲酒禁止だ。そもそもおいしいと感じないし。
なんせ匂いでも不快な位なんだから。
匂いを我慢してカウンターに並んで、俺の番になった時に対応してくれたのは、やはり男性スタッフだった。
やっぱりここにきても変わらないか。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者登録がしたい」
少し無愛想かもしれないが、無駄に話すと元男であるというボロが出る気がするので仕方がない。
無表情系でいこう。大丈夫なんとかなる。
何せ外見が可愛いから!
かわいけりゃあ許されるのが世間だ。
「その歳で……いえ、わかりました。名前は書けますか?この紙に名前と誕生日を書いてください」
一瞬止められかけたがなんとかなったな。
訳ありとでも思われたのだろうか。
てか、俺は何歳に見られてるんだ?身長いくつに設定したっけ?
登録はできるっぽいしどうでもいっか。
俺は首を縦に振ると端の方にあったペンを手にとって必須項目だけを書いた。
ひっかかるしふにゃふにゃしてるし、書きにくい。すぐ文字が擦れるし。
必須項目以外はボロが出そうだからやめた。
ちなみに名前はシルヴァだ。
わかりやすい。複雑にしても俺がわからなくなりそうだしな。
複雑なのにしたら名前呼ばれてたのにがん無視しそう。
「……では、この情報からギルドカードを作りますので、少々お待ちください」
しばらくすると男が戻ってきて、白いカードを渡してきた。
「どうぞ、こちらがシルヴァさんのギルドカードです。説明は要りますか?」
「要らない。ありがとう。」
俺は白いカードを受け取るとそそくさとその場から離れた。
説明は神様wikiに全部乗っていた。
ギルドカードの色は最初が白である程度行けば色の変更ができて、一定レベルに行けば強制的に茶色、その上の黒になることも。
報酬の五%はギルドに取られることも。
ギルドカードの色はクエストの達成度ではなく、倒したモンスターの強さや一度にどれだけのモンスターを倒したなどから評価されるということも、神様wikiにちゃんと書かれている。
面倒な説明聞かなくていいとか、神様wiki様々だ。チュートリアルスキップってやつだ。
一番もらってありがたいのはこれかもしれない。
未だ日の目を浴びない固有スキルは見習ってもらいたいものだ。
俺はカウンターから離れると紙が乱雑に貼り重ねられた掲示板に行き、今日の生活費のために依頼の一つを探した。
あったあった。地味ではあるが武器を持っていない俺には最適な依頼だろう。
カウンターに戻る。やっぱり受付は先ほどと同じ男の人だった。
「これ、受けたい」
「薬草納品ですね。わかりました」
この世界の常識だといつでも出来る依頼な上、持ってきた薬草の数によって報酬額が決まる完全出来高制。
普通なら苦痛である草むしりも、するだけで給料が上がると考えれば苦痛を感じずにできる。
俺は来た道を引き返し、街を出て少しした場所で草むしりを始めた。
もちろん、街を出るついでに検問に冒険者カードを見せて仮通行証を返すのは忘れずに。
数十分後、両手いっぱいに青臭い匂いを抱え、ギルドに戻った。
薬草と書いているくせに、薬になるのは根の部分なので、結構抜くのが大変だったし白いパーカーが泥まみれになっている。
汚れ、落ちるだろうか。まず石鹸とかってあるの?……神様wikiはあるって言ってるが、品質にどれほどの違いがあるだろうか。
薬草、お前は抜けないと思って少し力を強めたとたんにすぽっと抜けるのをやめろ。汚れの半分以上はそれが原因だぞ。
「これ、薬草」
「も、もうこんなにとってきたんですか?」
受付の男に少し引かれた。そんなに引かれるほどの量だろうか。
「他の人、こんなに持ってこない?」
「ええ、薬草なんて華のない仕事はしたがりませんし、面白さやスリルもありません。報酬額も一本一本はそこまで多くありませんから不人気な依頼なんですよ。絶対に必要なものではあるんですけど……それにしたってこれだけあれば、しばらく薬品は持ちそうです。ありがとうございます」
一本銅貨5枚は少ないのだろうか?この世界ってそんな物価高いの?
それに冒険者は堅実で現実的なやつは少ないらしい。ロマンを求める、って感じかな?
ロマンより目先の金の方が大事な俺からしたらなんとも言えないが。
「依頼やっただけ。感謝はいらないから、お金」
「それでは、これが報酬の銀貨十一枚と銅貨三十五枚になります」
「お金入られる袋、ある?」
「では、小袋にまとめますね」
収納できるものを一切持っていないので、ジャラジャラ小銭だけもらっても困る。
袋に入れてもらえるのは非常にありがたい。
銅貨は大体十円、銀貨が五百円と考える(引用、神様wiki)と大体今の俺の所持金が5350円。
草むしりしただけにしては、時給良すぎだな。
男から小袋をもらってギルドから出る。途端に中のうるさい男の野太い声と酒臭い匂いが消えた。かわりに、妙にすっきりとした気分になった。
お金を稼ぐって、こんな感じなんだな。
それに、やっぱ魔法だと便利だなぁ。この結界あっちの世界の喫煙所に張ればいいのに。
さて、お金も手に入れ、もうそろそろ日も落ちようかという時間なので宿をとらなければならない。
そこでも神様wikiが役に立った。
宿屋の値段とオプション、コスパまで教えてくれるとか、神様内での一般常識ってどんだけ広いのだろうか。
これ、神様は絶対一軒一軒泊まってますよね。
迷うことなく宿屋に行けるから、ありがたいことなのだが。
行く宿屋はギルドを出て少し歩いたところの右側にある緑色の屋根の建物。
名前は『ヤドカリ亭』だ。
神様wiki曰く店主さんとその妻、娘二人の四人で経営している宿らしい。
女が三人もいるからなのか、女性の視点が大きいらしく、細かなところまで目が行き届いているのだとか。
お値段なんと銀貨五枚。
神様やっぱり泊まったりしました?詳しく知りすぎてませんか?
宿屋の店主のおじさんに鍵をもらい、部屋に入って一息をついた。
木でできた小さなベットと机、窓こそないがいい雰囲気の部屋だ。
「ふぅ……」
今日1日でいろんなことがありすぎた。ちょっと整理しよう。
まず気がついたら異世界にいて、神様からめっちゃ謝られて、美少女になって固有スキルをもらった。
どんな固有スキルかは使ってからのお楽しみだ。
街に入ってギルドに行ってギルドカード登録して街の外で草むしりして、戻って受付の男の人に報酬をもらって。
宿屋に入って店主さんに対応されて部屋に来たと。
皆さん、お分かりだろうか。
女に一切近づけていないのを。
ギルドの受付はいくつもあって、俺がずっと対応されてた男の人以外のところは全て女だったのに、絶対に俺が男のところに行く順番になっていたし。
相変わらず道では女に謎挙動で道を退かれるし。
せっかく受付で女に対応される可能性が1番高い宿屋に行ったのに4分の1を容赦なく引き当てるし。
やはり、女に近づけないのは、世界が変わっても性別が変わっても、変わらないようだ。
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