第3話
管理者からのごめんねメッセージを読み終わってから少しすると、同じく半透明な青いウィンドウが出てきた。
「うわっ」
ウィンドウの中には外見変更用ディスプレイと書かれた文字と、3Dで写し出されているリアルな俺の外見だった。
しばらくいじくり回すこと数分、いくつかわかったことがある。
まずは、ごめんねメッセージで書かれていた通りのウィンドウの名前からして当たり前だが外見を変更できること。
身長で例えよう。
下限は一三〇センチ、上限は二メートル五十センチまで変えられた。
とは言え、一三〇センチの男なんて、早々いないよな。(いたらごめんね)
二つ目は性別を変えられること。
もちろん、男か女かだ。
その他の特殊な性別は各個人でどうぞ、といった感じらしい。
……女性、女性かぁ。
少し気になる。
三つ目は種族を変えられること。
ついに人間ですらなくなれるらしい。
人外になるってなかなか勇気いるだろ。
なれる種族はたくさんあって、犬、猫、鳥など大まかな分類に分けたあとに、さらに細かく設定をすることができるようになっている。
さて、ここからは大切な時間だ。
次の人生(人じゃなくなる可能性もなくはないが)を、どんな外見で過ごすを決定する。
ここでの選び方だが、どれを選べば女性に近づかれやすいかを判断基準にする。
候補は三つだ。
一つ目は男――ただしイケメンに限る。
そりゃあ、不細工な男にわざわざ近づいてくる女なんてろくなやつじゃないだろう。
ブス専かな?美人局かな?
イケメンになって女性に近づく。
非常に解りやすい、シンプルな作戦だ。
二つ目は、自らが女性になること。
しかも庇護欲をそそる感じの可愛い少女に。
可愛い女の子になることで女性に構ってもらえれば近づける、という少々捻った作戦だ。
そして、三つ目はもはや獣になる。
犬とか猫とか?そういうのになって、ペットとして近づこうという考えだ。
正直、少なくとも人間ではいたいと思うので、あんまりオススメはしない作戦だ。
この中で、どれを選ぶか……
俺は悩んだ末、二つ目の女の子になることにした。
何せ何年も男としてやって来ると、なんか男という性別のせいで無理なのではないかと思えてくるのだ。
じゃあ、いっそのこと女になってしまおうではないか。と。
ありがたいことに、全く違う外見になるためのテンプレート(もちろん美男美女)があったので、そこから一番気に入った物を選び、微妙にいじる。
髪型はロングで、髪色は……薄めの肌色なんてどうだろうか。
おお、いいじゃん。
次は目だな。
目は、ジト目的なやつの方が可愛いよなやっぱり。
よっしジト目だ。
もちろんまつげはばっさばさだ。長くて困ることはないだろう。
そして完成!
身長は百五十前半ぐらいで、胸はないが、とてもいい感じの少女が出来上がっていた。
まあテンプレートからほとんど変えていないが、下手にいじって変なものにするよりましだろう。
設定完了ボタンにタッチすると思わず目をつぶるほど眩しい光が現れ、気がついたときには――目線がかなり下になっていた。
俺のもともとの身長の一七〇センチのときに胸辺りに草があったのだから、もちろん俺は草に包まれていた。
結構暗いし、むしむしするし、青臭い……が、まあ仕方ないだろう。
改めて自分の体の確認をする。
髪はロングのアイボリー色で、まつげはばっさばさ。
すげぇ、なにこのまつげ。
マッチ棒くらいならふつうに乗りそう。いや設定したの俺なんだけどさ。
ちなみに、服装もたくさんの種類を選べたのだが、俺は女物のファッションを全く知らないのでテンプレートについていた服装のままだ。
ミニスカ白黒メイド服に、赤いネクタイに、白いだぼだぼパーカー。
そして、当然のように黒いオーバー二―ソックス。一番上のところをぐるっと赤いストライプで囲ってある、かわいいデザイン。
オタクが好きそうな服装だ。
っと、とりあえずこれで外見設定は完了だ。
次はなんだったか、確かまた謝罪?
すると、またしても半透明なウィンドウが目の前にいきなり現れた。
「おっと」
唐突に出てくるのは結構びびるからやめていただきたい。
[はじめまして。8p865と申します。
様々な話を4k332からされていると思うので、私の方からはその他の内容を伝えさせていただいます。
まずは、今回私のミスであなたを殺し、他の世界に移動をさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。]
やはり俺は車に轢かれて死んでいたらしい。
しかもこいつのミスで。何てことをしやがる。
ん?一回死んだってことは転移じゃなくて、転生だろうか。
もしかして赤ちゃんからやり直し?
そうだったら困るな。
いやいや、この世界にきてこの体を設定したのだからそれはないだろうか。
少し不安だ。
案の定、管理者は長くてまじめな面倒くさい文章しか書けないのか、と思ってしまうほど8pなんたらさんの書く文章は長いらしく、まだ続きがあった。
[今回の補填として、私は固有スキルを何でも一つ贈呈させていただきたいと考えております。
これを読み終わった後に固有スキル設定用ディスプレイを送らせていただきますので、そちらで一つ設定してください。
今回は本当に申し訳ありませんでした。]
またディスプレイか。
設定多すぎるゲームは嫌われるぞ。
固有スキルとはなにか、神様からもらった知識――ええい長い、神様wikiとこれから呼ぶことにしよう――によると、この世界にいくつかあるダンジョンを
スキルとは、ゲーム的な要素の強いもののようだ。
例えば、『楽器』みたいなスキルだったら楽器そのものがうまくなるのはもちろん、テクニック、というか技のようなものも使えるようになるらしい。
というか、技を使えるようになるための技量が上がる、と言った感じだ。技自体はここの人達が考えたもののようだ。
いい年したおっさんが剣を持ちながら技名を大きな声で言い放つ様はもはやギャグな気がするが、これが世界の常識。
実際に使ってないから詳しくは知らないが。
まあ、とにかく。
俺はその固有スキルとやらを一つ選べる権利を得たのだとか。
もう見慣れてしまった青いウィンドウにはずらーっと色々なものが書かれている。
恐らく、一つ一つが固有スキルなんだろう。
……固有の癖に、スキル多すぎない?
マジで多い。スクロールしてるのに一番下までいくのに数秒かかる。
せっかく自由に決めれる固有スキルだ。これからの生活も考えて慎重に決めなければ。
ここで考えるべきは自分がなれる職業に有利なスキルだろう。
魔物がいるなら、それを狩る――いわゆる冒険者的な職業もあると、神様wikiも襲えてくれているし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます