第5話 次の日の土曜日
「あ、おはようさんです。ああ奥さんも、トモコちゃんも来てくれはったね。
ほんだらわての車で行きますさかいにな、乗ってくれますか」
4人の乗った白いバンが、乾いたエンジン音を響かせながら走っていた。
しばらくして、
「もうすぐ着きますさかいにな」
「もうすぐっておじいさん……ここらって高級住宅街やないですの」
「いやいや、そないたいそうな
見えてきましたで、あれですわ」
と、おじいさんが指差したその家は、2階建ての一軒家だった。
少し古ぼけた感じはするが、一部屋のマンションに3人で生活している彼らにとって、ざっと見積もって30坪はあるその家は、あまりに立派に見えた。
車を降り、門扉を開けたおじいさんのあとに、3人が続いた。
「ん……この表札……
「え、あ、あははっ。いやちゃいますって。これで
前庭には大きな松の木が、そして玄関の周りには、小さな盆栽が並んでいる。どの鉢も、きれいに手入れが行き届いていた。
「立派なお宅ですね……神さん、お一人で住んではるんですか」
「ええ、女房も先に逝ってしまいよったし、子供も一人おったんですけど、事故にあって死んでしまいましてね……さ、どうぞ」
玄関を開けて中に入ると、正面に廊下、右手には2階に通じる階段があった。すぐ左手にある開き戸を開けると、6畳ほどの和室になっていた。
カーテン越しにあたたかい光が差し込んでいるその部屋には、正面に古びた箪笥と本棚が置いてあった。
「ここやったら日当たりもええし、トモコちゃんが少々ほたえても大丈夫ですから。ここでよかったらトモコちゃん、預からしてもらいますよ」
「こんなええ家! 私も主人とよく話すんですよ、こんな立派な一戸建ての家に住みたいなぁって。うらやましいですわ、こんな家。
……ところで神さん、もし神さんに何かあったらこの家、どないしますの? えっ、引き取り手がない! もったいないですわ、そんなん」
「こらお前、なんちゅう失礼なこと」
「はっはっは、まぁよろしよろし。ほんだらどないします? トモコちゃん、預かりましょか?いえいえほんま、お金はいりませんて。そんなんやらしいし」
「そうですかぁ……ほんだら、お願いしようかしらね、あんた」
「そうしはりますか、分かりました。ほんだらトモコちゃん、あさってからな、ここでおっちゃんと遊ぼな」
「うん!」
「そんで、これだけはお願いしたいんでっけどな、トモコちゃんのお昼のお弁当とおやつは持たせてもらえますか? こないちっこい子の食べる物、よぉ分からんよってね。
それと飲んだり塗らなあかん薬とかあったら……特にない、そうでっか、ならよろし。ほんだらそう
「そうですか……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。朝会社行くついでに連れてきますから。帰りはそうですね、まぁ6時か7時ぐらいには来れると思いますんで」
「助かりますわぁ神さん、これで私もパートに行けますわ」
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