第18話 勝つのは俺だ!

炎雷の嵐ダブルサイクロン!」


俺の突進に合わせて、レーネの魔法が飛んでくる。

4属性融合魔法カルテッドストームではなく炎雷の嵐ダブルサイクロンを使ったのは、俺の弱体化を見越しての事だろう。

確かに今の俺なら炎雷の嵐ダブルサイクロンでも十分ダメージは通る。


小賢しい女だ。


俺は横っ飛びにそれを躱し、だが止まる事無く駆ける。

狙うはネッドの首。

奴さえ仕留められれば、俺の勝ちだ。


「やらせん!」


テオードが素早くネッドの前に立ち塞がった。

俺の意図に気づいたのだろう。


「どけ!!爆裂魔法エクスプロージョン!」


俺は駆けながら唱えていた魔法をテオードに解き放つ。

以前ほどの能力がないため、無詠唱では無い上に威力も激減している。

だがそれでも人ひとり吹き飛ばすには十分だ。


魔法ががテオードを吹き飛ばした。

その爆炎をかき分けて、ネッドが俺に突っ込んでくる。


「グヴェル!」


わざわざ殺されに来てくれるとは。

有難い。


「ネッド!」


奴の魔法剣と俺の魔力を籠めた拳がぶつかりあう。

バチバチと激しい音を立て、閃光が飛び散った。


「おらぁ!」


力を籠める。

俺の拳がネッドの剣を弾き飛ばし、奴は大きく体制を崩す。

ネッドは態勢を崩されながらも、もう片方の剣を俺に振るう。

だが結果は同じだ。


「貰った!」


もう片方の剣も弾き飛ばした。

これで奴は丸腰だ。


死ね。


俺は、その拳をネッドの心臓目掛けて――


「やらせないっす!」


「むうん!」


あと一歩と言う所で、レイダーとパールの横やりが入ってしまう。

まったく、鬱陶しい奴らだ。


「ちっ」


パワーダウン前なら無視できた攻撃だが、今の状態で直撃を受けるのはまずい。

仕方なく俺は後方に下がる。


「喰らいなさい!爆裂魔法エクスプロージョン!」


隙間が空いた所にアーリンの魔法が飛んでくる。

俺はそれを飛んで躱し、レーネとの斜線に他の奴らが入る様に位置どった。


あいつの魔法を喰らうのが一番不味いからな。


チラリと視線をラミアルとイモータルに送る。

奴らは立ち上がってこそいるが、俺の一撃を受けてボロボロだ。

立っているだけでやっとの奴らなど、気にする必要は無いだろう。


俺は命砕きライフクラッシュで魔力を充足させる。

そしてそれを肉体に巡らせ、身体能力を強化した。


ラミアルがやっている物のパクリだ。

魔力で無理やり身体能力を上げるため、体への負担は大きいが、効果の程は悪くはない。


とにかくネッドを始末すれば俺の勝ちなのだ。

後の事など考えず、一気に押し切って見せる。


爆裂魔法エクスプロージョン!」


「喰らうか!!」


アーリンの魔法を躱し、再びネッドに突っ込んだ。


「やらせないっす!!」


「どけ!」


レイダーとパールの斬撃を弾き。

体当たりで吹き飛ばして更に突き進む。


ネッドが拾った剣を構える。

だが1本だけだ。

もう一本は遥か後方に転がっている。


「くそっ!!」


ネッドが苦し紛れに剣を振るうが――無駄だ。

俺はそれを容易く弾き、奴の胸目掛けて手刀を突き込んだ。


これで……ゲームエンドだ。


「ネッド!!」


「なに!?」


俺の手刀が深々と突き刺さる。

だがその相手はネッドではなく……テオードだった。

横から走り込んできていた奴がネッドを突き飛ばし、庇ったのだ。


「くっ!」


俺は奴の体から手を引き抜こうとする。

だが抜けない。


「何だと!?」


「逃がすか……よ」


テオードが胸元を貫かれているにもかかわらず、口元を歪ませて笑う。


「レーネは……妹は……俺が守る!四神連斬!!」


信じられないことに、奴はそのままの状態で奥義を繰り出してきた。

態勢や間合いが不完全であるため破壊力は落ちているが、それでもその威力は俺を吹き飛ばし、手痛いダメージを刻み込む。


「糞がぁ!!!」


大きく吹き飛ばされた俺は、痛みを堪え素早く立ち上がる。

レーネの魔法に対応する為だ。

だがその心配は必要なかった。


「おにいちゃん!」


レーネが倒れるテオードに駆け寄っていく。

兄など気にせず魔法をぶちかましていれば、俺を倒せたかもしれないというのに……


危ない所だったが、レーネが愚かで助かった。


俺はその幸運に、自らの勝利を確信する。

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