第65話 ドラゴン?
「伯父様!何かが!?」
不穏な気配を察知した私は、伯父に声をかけた。
その声に反応し、仲間達は足を止める。
「待ち伏せか……何者だ!?出てこい!!」
私達は
そしてラミアルが勝手に行ったという宣戦布告を確かめるべく、本拠へと向かっている最中だった。
正直こんな場所で待ち伏せがあるとは思えない。
だが、確かに気配を感じるのだ。
「やあ」
木々の影から、一匹の小さな魔獣がヒョコっと姿を現した。
真っ赤な毛並みに4つの鋭い目。
それは――
「グゥベェ!?貴方何故ここに!?」
思いもしなかった相手の登場に、思わず声が裏返ってしまう。
それ程にこの魔獣の登場は予想外だった。
「うん、実は君達の様子を見てたんだよ」
「様子……ですか?」
伯父は警戒しながら、腰に差してある槍を抜き放ちグウヴェへと向ける。
まるで彼が危険であるかの様な態度だ。
「いつから見ていたのですか?我々は貴方にまるで気づかなかったのですが?」
いつから見ていた。
その言葉に私もハッとなる。
彼はいつから私達の様子を見ていた?
そもそも何のために?
しかも、私達に気づかれないよう隠れて……
目の前の魔獣の行動には違和感しかない。
長い付き合いですっかり気を許してしまっていたが、よくよく考えれば彼は異界の存在。
それも、とんでもない力を持った強力な。
魔王であるラミアルが召喚した魔獣ではあるが、果たして本当にこの生き物を信頼していいのか?
そんな考えが頭をよぎる。
きっと叔父もそう考えたからこそ、武器を手に取ったのだろう。
「そんな事を聞いてどうするんだい?」
グゥベェは楽し気に口の端を歪めた。
その邪悪な笑みを見た時、私の中にある一つの考えが浮かび上がる。
目の前の魔獣の不可解な行動。
そして人間から聞いたラミアルの在り得ない――勝手な宣戦布告――行動。
二つの線が私の中で一本に繋がり、辿り着いた答え。
それは――
「あんたが、ラミアルを操ってたわけね」
「へぇ……」
グゥベェが驚いた様に目を細める。
その眼は楽し気で、それでいてとても冷たい物だった。
やはり間違いない、こいつがラミアルを……
「君は可笑しな事を言うね。僕は彼女の呼び出した魔獣なんだよ?彼女を操るなんて、出来るはずないじゃないか」
「そうね。普通なら、ね……」
可能性は一つだけある。
以前ラミアルは、大罪者と言われるアウラスの本を読んでいた事があった。
その時私は、いずれ彼女がドラゴンの召喚に挑むつもりだと考えていたのだが……
だが違う。
今ならわかる。
彼女があの本から得ようとしていた情報は、ドラゴン召喚のヒントではない。
召喚したドラゴンを御す方法だったのだ。
つまり目の前の魔獣は――
「まさか、貴方がドラゴンだったとはね」
200年前、ドラゴンは暴走して世界を滅ぼしかけている。
それはつまり、本気を出したドラゴンには召喚の制約が効かない事を意味していた。
「ははははははははは。アムレは優秀だねぇ。それだけに残念だよ」
グゥベェの声が低く変わる。
いや、声だけではない。
メキメキと音をたてて、私達の目の前でその姿は大きく変容していった。
「そんな、馬鹿な……」
紅いひび割れた肌に人型の
肘からは翼竜の爪の様な物が飛び出し、4っつの鋭い眼光を放つ化け物。
それは――
「グヴェル!?」
ラミアルの魔獣であるグゥベェがグヴェルだった。
私はその事実に戦慄する。
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