第33話 回復チャレンジ
「§Φ±§(先程のゴミと言い、こんなクズが俺の相手だとはな)」
俺を見たデーモンが口を開く。
どうやら言語を習得している様だ。
だが通常の言葉体系ではない。
俺には聞き取れるが、周りの奴らには理解できていないだろう。
ただ不快な音を発しているだけに聞こえている筈だ。
「・Å・(^_-)-☆(^^)/(やあ、よろしく。君、どんな死に方したい?)」
折角なので挨拶を返しておく。
どんな時でもコミュニケーションは大事だからな。
俺は相手にちゃんと伝わるよう、細工した言葉を話した。
「§ω◆Ψ(面白い冗談だ。笑かしてくれた礼に、バラバラにしてやろう)!」
此方はわざわざ優しく死に方のリクエストを聞いてやったと言うのに、気の短い奴だ。
しかしこの様子だと、此方の能力は確認できていない様だな。
もし見えていたなら、こんなでかい口は死んでも叩けなかったろう。
まあ俺の能力を見られて命乞いされても興ざめだから、別にいいけど。
あ、そうだ。
折角だから最初はいい勝負をして見せて、相手が調子に乗って来た所でその鼻っ柱をへし折ってやるとしよう。
みんな大好き。
ざまぁって奴だ。
「( *´艸`)・益・(+o+)(それは楽しみだ、口先だけじゃない事を祈るよ)」
けつを向けてお尻ぺんぺんして見せたら、何故か怒ったデーモンが突っ込んで来た。
カルシウム不足か?
奴が腕を真上から叩きつけてくる。
ひらりと躱すと、轟音を立てて地面が大きくひしゃげ飛ぶ。
パワーは悪くない。
だが俺に攻撃を当てるには、スピードが絶望的に足りなさすぎる。
俺はひらひらと身を翻し、軽やかにデーモンを翻弄する。
いい勝負を演出するなら何発か喰らってやろうかとも思ったが、態々痛い思いをする必要はないだろう。
こっちはパワーの無い振りをして戦えば良いだけだ。
スピード対パワーの構図を演出する為、俺は力を籠めずに奴を後ろ足で蹴り飛ばしたり、尻尾を叩きつける。
「ΨΦ¶Ω(貴様の非力な攻撃など効かん!)」
だろうな。
これで痛がっていたら、ネッド以下だ。
俺は目の前のデーモンを接待しながら、どうやって倒そうか考える。
ぺしゃんこにするのが一番インパクトがありそうだが、こいつパワーだけは中々の物だ。
そんな奴の体を粉々に粉砕するのは流石に骨が折れる。
此処は奴が宣言した八つ裂き辺りが無難だろうか。
暫く接戦を続ける。
もうそろそろいいかなと考えていると、突然奴が俺から間合いを離した。
俺はその立ち位置から狙いを察する。
奴の狙いは――
「Ψ〇ε±ε(ちょこちょこと煩わしい奴だ。これで始末してやる。避けたければ避けていいんだぞ、くくく)」
――ラミアルだ。
攻撃が当たらない事に業を煮やした奴は、俺が避けられない様彼、女を人質に取る形で攻撃するつもりらしい。
実に小物らしい素晴らしい手段だ。
花丸を上げよう。
奴の顎が驚く程大きく開く。
口の可動域は、思ったよりずっと大きい様みたいだ。
まあどうでもいい事ではあるが。
奴の口が赤く輝き、巨大な紅い光球が勢いよく此方に放たれる。
中々の威力のありそうな攻撃だ。
俺が避ければ、ラミアルは死んでしまうかもしれないな。
ちょっと避けて見るのも面白そうだったが、ちょっとした
俺は飛んできたその光球に対し大きく口を開けて――パクリと飲み込んだ。
「……」
誰もこの結果を予想できなかったのだろう。
余りのインパクトに、デーモンは元より、それまでやいのやいの騒いでた会場のやじ馬達の空気まで凍り付く。
やってから気づいたが、これって間接キスだよな?
インパクトがあると思ってやったが、他の手段で止めればよかったと激しく後悔する。
超気持ち悪い。
「(/ω\)・公・<(_ _)>(やれやれ、汚い物を食べさせないでおくれよ。これはお返しさ)」
「――っ!!」
俺は口に咥えた物を、デーモンに向かって放り投げた。
宙をくるくると舞い、それはどさりと音をたてて奴の足元に転がる。
「―――――――っ!?」
それが自身の右腕と気づいたデーモンが声にならない悲鳴を上げ、もう片方の手で傷口を押さえる。
いや、抑えようとして――更なる悲鳴を上げた。
左手も自身の体から離れ、地面に転がり落ちたからだ。
時間を止めて切り落としてやった。
相手は自分に何が起こったか分からず、さぞ驚いている事だろう。
見るとデーモンの腕の切断面がぐちゅぐちゅと蠢いている。
もう再生が始まっている様だ。
大した回復能力だと感心する。
「(((+_+))・-・(; ・`д・´)(凄い回復能力だね。折角だし、何本位まで回復するか試していいかい?)」
――回復限界チャレンジだ!
そう思ったが、デーモンが悲鳴を上げて飛び上がり、この場から逃げ出そうとする。
どうやら付き合ってはくれない様だ。
仕方ないのでデーモンの首を跳ね飛ばし、俺はさっさと試合を終わらせた。
つまらん。
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