二章
31話
「ゆーくんおはよ」
そんな声で目が覚める一日。
「何、縁」
「今日ね。水族館行きたい!」
「水族館? いいね。行こっか」
と布団から身を起こす。
いつものように、縁と二人で洗面所に向かい顔を洗う。
いつものような一日の始まり。
清々しい朝。
あの二人が居なければ。
「ねぇ、葵姉さん。今日はどこ行きますか?」
「今日? 仕事だよ」
柚子と葵姉さん。
あの事件で、柚子は葵姉に惚れ、俺そっちのけで姉に甘えた。
逆に俺はその程度でしか好きでは無かったらしい。
よかった?
よかったのか?
まぁ少し寂しい気持ちがあるが、俺には縁が居る。彼女さえいればそれで良い。
顔を洗い、服に着替え、朝飯を作る。
何かと、楽しいこの流れ。と言うのも縁と一緒だからだ。
「ゆーくん、朝ごはんまだ?」
「はいはい。今持っていきます。そのお二人さんは自分でご飯よそってくださいね」
ベットに寝転がっている二人に言う。
ん? 待てよ? これってハーレムじゃね?
と唐突な事実を知った。
こんな、女っけが無かった俺になんでこんなに女性が群がっているんだ!
何があった。
まず縁、この人は雇い主なので離れる事は基本的にできない。
柚子、この人は俺を奪いに来たらしいが、何故か今は姉にべったりだ。
姉、この環境を守るべくここに来た。
そして、俺。
この家にいる四人は何やらキャラが濃い。
特に姉。
まぁそんな事は関係ない。朝食を食べよう。
「はい。縁、焼き鮭。そしてお味噌汁」
「ありがと。だけど今日は魚か。骨がな」
残念そうな顔をする。
「仕方ないから、取ってあげるから食べて」
と彼女の機嫌をとる。
「え? 弟くんが食べさせてくれる?!」
何故か姉が反応する。
「貴方には言っておりません」
そう言って縁の隣に座った。
「はいあーん」
縁に骨を取った鮭を食べさせる。
縁は嬉しそうに、それを頬張る。
そんな姿を見て安心する。
気づけば、この家にいる人が全員食卓を囲んでいた。
これほど楽しい食事はあっただろうか?
皆、雑談に花を咲かせ、食事を運ぶ。
面白くない日常から一変した生活。
俺は楽しんでいた。
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