21話

 俺が、ソファーから立ち上がったと同時に、ケータイが鳴った。

 どうやら電話らしい。誰に繋がるとも知らずに電話に出てみる。

「優くん? 久しぶりー!」

 懐かしい声。

「柚子か? お、久しぶりやな。でどうしたの?」

「それがね、貴方のバイト手伝おうと思って」

「は? ちょっと待って」

 目を丸くしている縁に訊いてみる。

「このバイトって手伝いとかってありなんですか?」

「ゆーくんが居れば私はなんでもいいよー」

「もしもし。いいらしい」

「それは良かった。じゃぁ明日、葵さんに聞いてそっちに行くねー」

「おう」

 女先輩の柚子が来るらしい。

 電話を切る。

「明日から柚子って子が手伝いに来るから」

「はいよー」

 そう言い残して俺は浴室に向かった。

 風呂洗い完了。

「ゆーくん、お風呂溜まったら一緒に入ろうねー!」

 ニコニコ笑顔で抱きついてくる縁。

 柚子先輩が来たらこの状況どう思うのかな。まぁ多分大丈夫だろう。

 そう甘く考えていた。

 次の日。

「柚子ちゃんが来ましたーってなんでそんなに冷たい目で見るのさ!」

「俺の姉ちゃんじゃないんだからさ。そんな登場いらない」

「葵姉もそうやって登場するの? やったね!」

「やったねじゃない!まぁ良いけど入って」

 と家の中に誘導するが完全に柚子の顔には悪巧みをしていると書いてある。

 大丈夫か。本当に。

 一応、俺の中では縁を除いて一番と言って良いほど信頼を置いている人間だ。おそらくは大丈夫だろう。

 しかし。

「縁ちゃんだー!」

 リビングに入った瞬間、縁に飛び付いた。

「大ファンなんです! よかったら握手してください!」

 と圧力をかける。

 だが縁も元子役、そんな圧には屈せず丁寧なファン対応をしていた。

「ゆーくん。この人が柚子さん?」

「そうだけど」

「やっぱり良い人そう!」

 まだ確定ではないんだ。

「へぇアンタゆーくんって呼ばれてるんだ。私もそうやって呼んでいい?」

「勝手にしてください」

 生返事をする。

「何その態度。でもそんな所が好き」

 ん?

「優くん、私と付き合って欲しいの」

 んんんんんんん??????

 人間関係が複雑になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る