19話

 縁の車椅子を押しながら歩く道は通常では使わない筋肉を使うためかとんでもなく疲れる。

 しかし、縁のためなら頑張れるようになってきた。

 なんでかわからないが、周りの目線が冷たいように感じる。

 そして、ある事を思い出す。

 これって、デートじゃね?

 でも、これは仕事。仕事。

 と言うか、前回のショッピングセンターのデートは仕事と割り切っていたが今回のデートは初回になる。それの行き先がスーパーってダサくないか?

 でもでも、これは仕事。

 でもでもでも、これは側からみればデートだって。

 一体どっちなんだ?

「ゆーくんとデートだぁ」

 と呟く縁。

 結論。デート。

 仕方ない。今回の料金は俺が払う事にしよう。

 うん。

 それに懐が寒くなるな。多分。

「デートって、一応、買い出しですけどね」

 と前提の目的を言っておく。

「えぇーでもショッピングモールと売ってるものが違うだけじゃん」

 それを言われたら元も子もない。

「たったしかに」

 でも、そのスーパーは、二階が服屋や雑貨屋などが入っているフロアだ。盛って言えばショッピングモールとさほど変わらない。

 だとすれば、まずは二階に行くか。

「あれ? ゆーくん二階には用はないはずだよ?」

「久しぶりに行ってみたくなってね。付き合ってくれる?」

「うん!」

 そして、二階行きのエレベーターに乗った。

 二階では、服や本、雑貨を見て回った。

 縁が欲しいと言っている服を買ったり、雑貨屋で不思議な物を見たりした。

 縁は、心底楽しそうに笑って、俺に接してくれた。

「ゆーくん見てこれ!」

 とペアになっているお茶碗を差し出してきた。

「可愛くない?」

 とても申し訳なさそうに首を傾げて言う縁の手からそれを受け取る。

 カップルが使いそうな物を手に取った事は、今までに無かったがこんな気持ちになるんだな。

 青色と桃色の茶碗は、チンアナゴが描かれており、二つの絵柄を組み合わせるとハートの形になる仕掛けがあった。

 ピンク色の茶碗には、デフォルメされた熱帯魚が描かれており、逆に青色の茶碗には深海魚が描かれていた。

「確かに可愛いな」

「二人で使お?」

 食い気味に、恐る恐る、それに恥ずかしそうに言った。

 顔が真っ赤な縁。俺と目線を合わせないようにそっぽを向いている。

「そうしようか」

 俺は笑顔で答える。

「バカ、渡した時に気づいてよ。恥ずかしい」

 いや、そんな事恥ずかしがるならもっと別の事を恥ずかしがれよ。

 苦笑する俺。

 そして、会計を済ませて一階に戻る。

 そうめんと必要な物を買い店を出た。

 なんと言うか。楽しかった。

 家に帰る頃には、もうすっかり暗くなっていた。

 二人とも手洗いうがいした後、縁をソファーに座らせた後、そうめんを茹がきにキッチンに移動した。

 縁は呑気にテレビを見ている。

 一方、俺はせっせこ麺を茹がくている。

 そうめんと言う物は意外に早く茹で上がる。

 あっという間に出来上がった。

 切ったネギをつゆの中に入れ、そうめんは、ガラス製のおおきな皿にいれ氷と一緒に盛り付けて終わり。

 とても簡単だ。

 食卓にそれらを乗せ、縁に声をかける。

「できたぞー!」

「はーい。連れてって」

 と返ってきた。

 縁を迎えにいき、食卓に座らせる。

 そして食事を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る